「Citroënist Rendez-vous OWNERS’ FESTIVAL – 2023」初秋の飛騨高山に500台以上の新旧シトロエンが大集合

Masaya ABE

ステランティスジャパンが主催する初のシトロエンのオーナーズイベント「Citroënist Rendez-vous」(シトロエニストランデブー)が9月17日に岐阜県の飛騨高山で開催された。北は山形県から南は高知県(西は山口県)まで、全国から500台以上の新旧シトロエンとシトロエニストたちが集った盛大なイベントの模様をお伝えしよう。



インポーターが主催する初めてのオーナーズイベント




「Citroënist Rendez-vous OWNERS’ FESTIVAL – 2023」(以下シトロエニストランデブー)と銘打たれたこのイベントの主催は、インポーターであるステランティスジャパンである。シトロエンのインポーターがオーナーズイベントを開くなんて、つくづく時代は変わったな、というのが30年以上シトロエンに乗り続けている筆者の率直な感想だ。

1980年代以降、シトロエンのインポーターは西武自動車+マツダから新西武自動車へ、そしてメーカー直系のシトロエンジャポン、プジョー・シトロエン・ジャポン、グループPSAジャパン、ステランティスジャパンへと移り変わってきた。

シトロエンという個性的なブランドの輸入が途絶えなかったということについてはありがたいと思う一方で、シトロエンオーナーとインポーターの関係は、以前はそれほど良好とは言えなかった。特に、複雑なメカニズムを持ったハイドロニューマチックのシトロエン、DSはもちろん、西武自動車時代に輸入されたGS、CX、BX、XMなどのオーナーにとって、シトロエン・ジャポン以降に再編された販売網での対応はメンテナンスに限らず少々冷たいものに映ったはずだ。

2019年9月に東京・赤坂アークヒルズで開催された100周年記念の「CITROËN CENTENARY GATHERING」(写真:編集部)

そんな関係に変化が見えてきたのは5年ほど前くらいからだろうか。2019年に開催されたシトロエン100周年を祝うイベント「CITROËN CENTENARY GATHERING」(シトロエン センテナリー ギャザリング)の時には、もはや古いシトロエンのオーナーを大切にしていきたいというインポーターの姿勢が鮮明だった。

もちろん、グローバルでの競争が激化する中で各メーカーがブランドアイデンティティを明確化し、特にそのアイデンティティを「歴史的資産」に求める傾向が強くなっているのはシトロエンに限らない。歴史的資産を背負った過去の車、そのオーナーたちとの良好な関係性を築くことがマーケティング上も正義となったわけだ。そして見逃せないのは、その正義の錦の御旗をうまく利用することのできる「カーガイ」がグループPSAジャパンやステランティスジャパンの内部に紛れ込んでいた(?)ことだろう。

飛騨高山を選んだ理由




初めてのシトロエニストランデブーの会場として選ばれたのはJR高山駅から車で15分ほどの高山市位山(くらいやま)交流広場。冬はモンデウス飛騨位山スノーパークというスキー場であり、グリーンシーズンはドックランやラジコンサーキットのある道の駅として営業を行っている場所だ。



大規模リゾートではなく地元のスキー場なので、ゲレンデと横長の大きな駐車場の距離がとても近い。500台を超えるシトロエンを悠々収容できる上にイベント会場も目の前、さらにセンターハウスにはスキー場らしくトイレや食事スペースも用意されており、車のイベントに非常に適している。

イベントの冒頭ではステランティスジャパンの社長である打越氏が「5年と言わず10年、20年続くイベントにしたい」と挨拶し、会場から大きなどよめきと共に拍手が送られた。

ステランティスジャパンによれば、飛騨高山を選んだのは首都圏だけでなく東海や関西のシトロエニストにも足を運んで欲しいということが理由だそうだ。その甲斐あって、抽選で選ばれた513台の参加車両は東北8台、関東160台、東海189台、甲信越20台、北陸28台、関西96台、中国9台、四国3台と幅広いエリアからやって来た。3連休の真ん中ということで渋滞の懸念はあったものの、イベントの前後の休日を利用してシトロエンとのグランドツーリングを楽しんでほしいとステランティスジャパンは考えていたようだ。



確かに飛騨高山周辺には有名観光地が目白押しだ。世界遺産の白川郷はもちろん、日本一の露天風呂の里である奥飛騨温泉郷、北アルプスの反対側には上高地や白骨温泉、乗鞍もある。関東からは遠いと思う人も多いだろうが、松本からの国道158号線の安房トンネルが開通したことでかなりアクセスは良くなっている。松本ICから高山市内までなら1時間半ちょっとだ。

最大勢力は若いオーナーたちに支持されたベルランゴ


写真:編集部

会場の中心にはCITROENの広告が入った1920年代のエッフェル塔のモニュメントが飾られ、その周囲にエグザンティア、BX、CX、GS、SM、DS(ID)、アミ、2CV、ベルランゴ、C5 X、C3、C4 カクタス、C6、と各時代を代表するシトロエンが展示された(本当はXMも並ぶはずだったが声を掛けた方がキャンセルとなってしまったそうだ)。

あちらこちら部品を追加しているうちに見た目はほぼDSとなってしまった1967年ID19に乗る和歌山県の西村さん。子供の頃に映画で見た憧れの車を現実に運転できる幸せを噛み締めている。

司会の中山さん(左)に愛車CXシリーズ2を解説する日本シトロエンクラブの永野さん(右)。

まるで4年前に赤坂アークヒルズで行われたセンテナリー・ギャザリングの会場が再現されたかのようだったが、その時と同じ車は日本シトロエンクラブの広報を務めている永野さんのCXだけだ。



一桁ナンバーも貴重な1963年の2CVは愛知県の本多さんが持ち込んだ。ちなみに本多さんは残念ながら今年度の開催が見送られたフレンチ・ブルー・ミーティング(FBM)の代わりに10月15日に開催される「アロンフランセ車山」の中心メンバーでもある。



上記の表はステランティスジャパンが集計した参加車両一覧を編集部が多少加工したものだが、各時代で区分けされた駐車場で圧倒的な勢力を誇ったのはベルランゴだ。参加台数は96台、デリバリーされたばかりのロングも合わせるとなんと112台!



カングー、ピカソと乗り継いだ愛知県の水野さん一家。今回は話題作りのためにフリマ出店を決めたのだとか。

フリマの車両の多くもベルランゴだった。オーナーの平均年齢は若く、子供やペットなど家族と一緒にイベントを楽しんでいる人が多いように見受けられた。







エアクロスやプルリエルも含めた新旧C3も88台、含めるべきか少し迷ったがDS3も含めるとこちらも100台を超える。限定車だったにも関わらず24台が参加したC4カクタス、最近のシトロエンの中ではすでに伝説的存在となっている感もあるC6の姿も目立った。

レジェンドモデルに乗る熱心なシトロエニストも参加








絶対数は少ないものの見るものを引きつけていたのは、やはりDS、SM、2CVといった「レジェンド」やCX、GS、VISA、BXといった70〜80年代のモデルたちだ。それらのオーナーはFBMを始めたとしたイベントでよく見かける方も多く、このシトロエニストランデブーが古くからの熱心なシトロエン乗りたち、つまり何かとうるさい連中(失礼!)にも受け入れられたことに筆者も胸を撫で下ろした次第である。

ワンオーナーの1993年ZXクラブで参加した東京都の平井さん。固くなく柔すぎない乗り味が気に入って11万キロを走破した。

一方で少し寂しかったのはZXとC2は2台、クサラ、クサラピカソは1台ずつとコンパクト〜ミドルのヤングタイマーたちが少なかったことだろうか。ハイドロではないシトロエンにも十分魅力はあると思うのだが。

ステージの合間も参加者に退屈する時間はなかった




メインステージでは1時間おきにシトロエンに関する○×クイズ大会、ビンゴ大会、大抽選会などが行われた。クイズは第一問が「シトロエンは、フランス生まれのブランドである」というぬるい(?)ものだったので、やはりシトロエン初心者が多いベルランゴ乗りなどを意識したものかと思いきや、後半はシトロエン歴33年の筆者でもわからない難問も織り込まれていた。ビンゴ大会で配布されたシートも、なんと数字ではなくシトロエンの歴代の車が印刷されているという凝りようだ。



ステージの合間も参加者に退屈する時間はなかったようだ。会場内に設けられたオフィシャルグッズショップやキッチンカー、フリーマーケットなどを巡る人たちが数多く見受けられた。特にオフィシャルショップではミニカーやロゴ入りのアパレル商品が飛ぶように売れ、レジには長蛇の列ができていた。こんなにシトロエンのオフィシャルグッズが売れるイベントがこれまであっただろうか。車イベントのフリマコーナーといえば、いつも得体の知れないパーツや古ぼけたミニカーや年季の入った古雑誌(でもその中に宝物がある、こともある)ばかりを追いかけていた筆者は心洗われる思いがした。

多くの人で賑わったシトロエンオフィシャルショップ。

その他にも小さな子供たち用の遊具やゲレンデの一部を囲ったドッグランなども賑わいを見せていたが、会場内で開かれていた最新のシトロエン各車の試乗会も大盛況だった。特にC5 Xは古くからのシトロエン、特にハイドロニューマチック乗りたちがこぞって申し込んでいた。

老いも若きも、マニアも初心者も




朝の9時半から14時過ぎまで、老いも若きも、マニアも初心者も、ステージに上手に引きつける見事な仕掛けと運営ぶりはお世辞抜きに見事だと感じた。そんな今回のイベントの進行を務めたのは日本におけるシトロエンのブランドマネージャーである中山氏だ。そう、ここだけの話、彼こそ冒頭で触れた「ステランティスジャパンに紛れ込んだカーガイ」の一人だ。数年前からオーナーズイベントを構想していることはそれとなく聞いていた。古いシトロエン乗りたちのイベントに彼の顔を見かけて驚いたこともあった。

シトロエンブランドマネージャーの中山氏自らマイクを持って当日のイベントを進行した。

そんなカーガイが作成したシトロエン○×クイズ全問題&解答を今回、特別に入手することに成功した。シトロエニストの皆様におかれましては、次回への傾向と対策として、ぜひご活用いただければ幸いです。

馬弓良輔

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