トロッコ列車で観に行く、ラ フェスタ ミッレミリア 2023

Tomonari SAKURAI

東京湾側から養老渓谷方面を繋ぐ小湊鐵道。単線で駅舎は木造の無人駅も多い。1両のみの運行もある。五井、上総中野駅を繋ぐ路線だ。房総の、のどかな田園風景と渓谷へ繋がる木々の中を走る。

この小湊鐵道では主に週末や休日に2往復運行されるトロッコ列車がある。一見蒸気機関車に見える先頭車と、天井が一部ガラス張りの客車や壁のない開放的な客車が連結されている。これからの紅葉のシーズンや春の桜のシーズンは予約もいっぱいの人気の車両だ。これに乗って房総の奥深く出かけてみた。あいにくの雨で乗客はまばら。普段走っている車両のうち近く引退するキハ200系を、引退する前にカメラに収めようという鉄道ファンが多いようだ。

実際に走り出すと木の椅子はゴツゴツするし揺れるしうるさいし決して乗り心地のいいものではない。それが逆に風情があって楽しくなる。先頭の車両は実際にこの路線で活躍していたDB4型を再現しながら、動力はクリーンディーゼルを使った新型なのだ。そのため見た目は機関車だが音はしっかりディーゼル。それも現代の環境に合わせたクリーンディーゼルである。

当時この路線で活躍したDB4型を再現したディーゼル機関車が客車を引く。客車の2両は壁がなく開放感のあるトロッコ列車らしいもの。

五井を出発していよいよ田んぼが広がると沿線の住民が踏切や自宅の窓から手を振ってくれる。沿線全域で歓迎しているのが微笑ましい。単線なので途中で上り列車とすれ違うために駅で10分ほどの停車となると、乗客は一斉に駅に飛び出て撮影タイム。駅舎も懐かしい木造だ。雨が逆に艶やかな風景を演出している。

単線なので駅ですれ違う。

そんなことを繰り返して養老渓谷手前の月崎に到着。養老渓谷手前で土砂崩れがあり現在月崎から先はバスでの移動となる。

その月崎に降りると、見覚えのあるロゴが。ラ フェスタ ミッレミリアである。こんな所も走ったのか!と見てみると、この月崎駅がチェックポイントのひとつとなっていたのだ。それも到着時間を見るとなんと、もうまもなく。運のいいことにトロッコ列車を楽しんだ後にラ フェスタ ミッレミリアに遭遇したのだった。

土砂崩れで終点まで走れない小湊鐵道は月崎駅でバスに振替輸送される。偶然にも、そこでこの見慣れたロゴに出会ったのだ。

土砂降りの中水しぶきを上げてやってきた先頭を走る1926年ブガッティT35。その後ろはブガッティT35B。(写真:松下大介)

それにしてもラ フェスタ ミッレミリアの開催期間は雨が多い。オープントップでこの中を走るのはなかなかつらいところがあるだろう。雨もあり沿道の観戦者は少なく家の中から覗いてるといった感じ。それでもそこに到着したドライバー達は皆笑顔で手を振っている。雨で水たまりができた未舗装のドロドロの駐車スペースでチェックを受けてすぐにコースに戻って行く。次のチェックポイントに向けてエグゾーストノートを響かせながら駆け抜けていくのだ。

ミッレミリアの歴史で外せない1台、スタンゲリーニ1100。土砂降りの中でもこの笑顔。

オープンカーは雨は辛そう。メーター周りに雨が侵入しないようにカバーがされている。

篠塚建次郎が駆る1949年ヒーレーシルバーストーン。(写真:松下大介)

チェックポイントで通過の証明のスタンプを押してもらう。車両はOSCA MT4。

帰りはトロッコではなく引退間近のキハ200系で戻った。思わぬ車達との出会いもありなんとも充実したトロッコ列車の旅。ノスタルジックな昭和の旅が味わえる小湊鐵道。春先の桜と水田に水を張った鏡のような風景の中を今度はぜひ体験してみたいと思うのだった。

表面も大分くたびれているキハ200系。それがまた良い味を出している。残念ながらこの車両は近々引退する。


写真・文:櫻井朋成 Words and Photography: Tomonari SAKURAI

櫻井朋成

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