真冬の1300kmをクリーンに走る旅に出た|Audi Q4 e-tron

Yosuke NARUSE

アウディは、2021年8月に電動化戦略「Vorsprung 2030」を発表している。ドイツ語で「先進」を意味するVorsprungを掲げる戦略によると、2026年以降に全世界で発表するアウディのニューモデルは全てが電気駆動システムを搭載し、2033年を最終期限として内燃エンジンの生産を段階的に廃止する大胆な計画だ。

そんなアウディの最新コンパクトSUVの電気自動車「Audi Q4 e-tron」を連れ立って、ロングドライブを敢行した。



有機感と未来感が融合したインテリア Audi Q4 e-tronに乗り込む


Audi Q4 e-tronはアウディのラインナップにおいてはもっともリーズナブルに狙える電気自動車で、人気のコンパクトSUVボディを纏っている。またAudi Q4 e-tronには「Q4 e-tron Sportback」と呼ばれる4ドアクーペスタイルSUVもラインナップ。両車、最大の違いはBピラー後方のデザイン、そしてルーフレールの有無だ。Audi Q4 e-tronはルーフレールを装備しているので、ルーフラックやルーフキャリアを装着することができる。つまり、よりアクティブに使い倒す人向けのコンパクトSUVで、Audi Q4 e-tron Sportbackはよりデザインコンシャスなオーディエンス向けなのであろう。どっしりとした運転席のドアを開けてシートに乗り込むと、アウディらしい有機感と未来感が融合したインテリアに出迎えられる。フロントシートには、ペットボトルを再生した素材の「パルスクロス/アーティフィシャルレザー」が採用されている。また、車両を構成するパーツにもリサイクル素材が効果的に用いられており、様々なアプローチでサステイナビリティを追求するアウディの取り組みが体現されている。オーナーは自ら謳うことなく、環境保護の姿勢を示すことができる、というわけだ。

最近、国内旅行が楽しい、と思うのは筆者だけだろうか? 山を越え、谷を越え、2時間も走れば東京とは違う風景が広がる。そこにはご当地のグルメがあり、ご当地の流行りの店があり、ご当地の歴史が様々ある。それらを知る、ということはとてもクリエイティブな行為だと思えてならない。東京を出発して、まず辿り着いたのは上毛三山の一つ、榛名山の麓にある榛名湖だ。ここは群馬県高崎市にある榛名山の火山活動によって生まれた、標高1,100メートルにある湖。2月の気温はまだまだ低く、到着時の湖面は凍結していた。だが、陽がのぼるにつれ徐々に気温が高まり、温かい日差しが心地良い。そして、湖面がゆっくり溶けていくのだが、そのときに発する音がまた面白かった。凍結した湖面の面積は当然、相当広く、一部にヒビが入ると湖全体の氷と水にまるで電子音のような音が共振し、やがて岸辺の氷が“バリバリ”と割れる。湖面が薄く凍結する場所ならどこでも出くわす現象だろうが、この音は今も昔も変わっていないと思うと、ちょっとロマンを感じる。

この時期、早朝の榛名湖は湖面が凍結。陽がのぼるにつれ凍った湖面にヒビが入り、電子音のような共振音が響き渡る。古代から変わらない音であることに歴史のロマンを感じる。

アウディ ウルトラ チャージャーを利用して 向かったのは冬の日本海


今回が筆者にとって初めての電気自動車ロングドライブだ。Audi Q4 e-tronをお借りして向かったのは冬の日本海。ただ同じ道を往復してもつまらないので、往路は群馬県を抜ける東側から、復路は岐阜県を抜ける西側のルートを選んだ。実はそこにはもうひとつ重要な理由があって、それは昨年10月から全国のアウディディーラーで展開され始めている、「アウディ ウルトラ チャージャー(Audi Ultra Charger:52拠点、52基)」のサービスの利便性を体感するためでもあった。150kW級出力のCHAdeMO規格急速充電器は、約8分で100km走行分の充電、約29分で充電残量20%から80%まで充電できる(※実際の充電環境や使用状況により充電時間は変動します)。これら急速充電設備を備えたアウディの各地のディーラーを繋げば、より快適なEVの旅になるはずという目論見だ。

全国のアウディディーラーに展開される「アウディ ウルトラ チャージャー」は150kW級出力のCHAdeMO規格急速充電器で、約8分で100km走行分、約29分で充電残量20%から80%まで充電できる(※実際の充電環境や使用状況により充電時間は変動)

なお、アウディは「プレミアム チャージング アライアンス(PCA)」に参画しており、ポルシェジャパンが展開する「ポルシェ ターボチャージャー」、フォルクスワーゲン ジャパンが展開する急速充電器と合わせ、ドイツ輸入車3ブランド総合計約210拠点、222基の急速充電器の利用が段階的に利用可能になるようだ。スマートフォンの専用アプリより、アウディe-tron店、及びポルシェ・フォルクスワーゲンが展開する急速充電ネットワークの急速充電器をすばやく検索でき、特定の認証カード無しにPCA専用充電器の利用と、支払いを簡単に済ませることができる。そして、嬉しいことに充電サービスは24時間365日利用できるそうだ。



アウディは「プレミアム チャージング アライアンス(PCA)」に参画しており、ポルシェとフォルクスワーゲンディーラーが展開する急速充電器と合わせ、合計約210拠点、222基の利用が可能。専用アプリをインストールすれば、3ブランドの正規販売店に設置された充電器、全国のPCA専用急速充電器をすばやく検索でき、特定の認証カード無しにPCA専用充電器の利用と、支払える。充電サービスは24時間365日利用できるので安心だ。

吸い付くような安定感 意外なほどに疲労感が少ないことに驚く


榛名山から「渋川松田線」と呼ばれる国道33号線を走ると、伊香保温泉へと抜ける。そして、進路を長野県長野市に向けた。Audi Q4 e-tronはWLTCモードでの航続距離576km(2023年モデルより594km)を誇る、総容量82kWhのバッテリーを前後アクスル間の床下、電気モーターはリアアクスルに搭載する後輪駆動になっている。大容量の駆動用バッテリーを、床下に搭載することにより、どんな場面でも路面に吸い付くような走りを実現させている。加えて、無駄な動きや振動がないことは結果的に疲労軽減にもつながるようで、長距離を運転しても疲労感が少ないことに驚かされた。そして、無駄な動きや振動がないから、どんなに長距離を運転しても疲労感が少ない。

Audi Q4 e-tronはWLTCモードでの航続距離576km(2023年モデルより594km)を誇る、総容量82kWhのバッテリーを前後アクスル間の床下、電気モーターはリアアクスルに搭載する後輪駆動となっている。

特徴的な8角形のステアリングホイールは、ドライバーの手にしっくり収まり操舵しやすい。ドライブモードは「Efficiency」「Comfort」「Auto」「Dynamic」「Individual」の5種類。

日本最古の仏像といわれる一光三尊阿弥陀如来を御本尊とし、創建以来約1400年の歴史を持つのは長野県の善光寺だ。宗派に関係なく誰でも分け隔てなく受け入れる寺として、国内外から多くの参拝者が訪れている。誰が言ったのか定かではないが「遠くとも一度は詣れ善光寺」と語り継がれている。なお、善行寺はミシュランガイド(レストランガイドではなく旅のほう)で2つ星を獲得しており、本堂正面から外陣に入ると最初に目にとまる「びんずる(賓頭廬)尊者」は3つ星に選ばれている。

善光寺には39の宿坊があり、それぞれに御堂があり、住職が在籍。精進料理をはじめ、趣向をこらした宿坊料理が楽しめる。昔から変わらない街並みも似合う、Audi Q4 e-tron。

長野県善光寺から白馬へ 清廉な風景を静かに進む快感にはじめて出会う


1998年、冬季長野オリンピックが開催された白馬は現在、幾度目かのリゾート/別荘ブームに沸いている。東京から300㎞程度とそう遠くない場所に位置しながら、上質な雪が楽しめるとあって昨今、外国人観光客の注目を集めている。白馬は冷涼な気候と豊かな自然とが相まって“日本のスイス”といったところか。来訪者や定住者の増加に伴い、お洒落な雰囲気の飲食店の数も増えている。

長野県北安曇郡白馬村は東京から270㎞とそう遠くない場所に位置しながら、上質な雪が楽しめる。緑豊かな夏もハイキングの場所として人気。自然豊かな白馬村には、Audi Q4 e-tronのような環境車両が似合う。

「長野県」と聞くと日本の中腹に位置しているイメージだが、白馬から日本海までの距離は想像以上に近い。白馬から新潟県糸魚川市までの距離は50㎞もない。ひとたび日本海側に出ると、もうちょっと欲張って走ってみたくなるのが人間の性である。それだけAudi Q4 e-tronとの一体感が心地良い、ということでもある。「富山」と聞くと水産や医薬品を思い浮かべるだろうが、実はアルミサッシ(国内シェアNo.1)や青銅でも有名である。また、全国にある寺の梵鐘はほとんどが富山第二の都市、高岡市で製造されているというからその規模がうかがえる。また、高岡市は山町筋、金屋町、吉久の一部が伝統的建造物群保存地区に指定されている。こうして歴史的建造物を切り口に各地の歴史を探ると知的好奇心を満たしてくれる。なお、前田家といえば加賀百万石だが、東京・目黒区にある前田利為侯爵駒場邸跡、現在の「駒場公園」でもスケールの大きさを垣間見ることができる。

富山新港に架かる日本海側最大の2層構造の斜張橋。上層は自動車、オートバイなどの専用道。下にはガラスで覆われた全天候型の自転車歩行者道が。

富山県高岡市は青銅で有名な街でもあり、全国にある寺の梵鐘はほとんどがここで製造される。また、同市の山町筋、金屋町、吉久の一部は「伝統的建造物群保存地区」に指定。

飛騨高山 日本を代表するワインディングがあまりにも楽しい


せっかくのロングドライブゆえに、来た道を戻るのでは面白くない。そこで東海北陸道を通り飛騨・高山を抜け、アウディ多治見で充電することにした。このルートはまさに日本を代表する山岳地帯、大小の曲がりくねった道路が山を這う。そんな中Audi Q4 e-tronはバッテリーという重量物を積んでいるにもかかわらず、慣性力による悪影響を感じさせない。「電気自動車」であること云々より、足回りのセッティングに心底、脱帽する。

今回の旅路の相棒、Audi Q4 e-tron 40のスペックは最高出力204ps、最大トルク310Nmだが、体感する加速力、走りはそれ以上。登坂車線でも常に電気モーターの最大トルクを活用できる走りは、力強い。

雪が残る飛騨・高山を高速道路から見下ろす。

進路はここから東へとった。目指したのは中部電力の御前崎風力発電所。再生エネルギーの将来が注目されているが、この目で風力発電所を見てみたかったというのがその理由だ。御前崎風力発電所は2010年から運用を開始している。11基の風力発電が出力2.2万kWを誇り、想定年間発電量は約6,200万kWh、一般家庭約1万7,200世帯の年間使用電力量に相当するのだという。世界から見た時の日本の「再生エネルギー」利用の進捗具合に興味が湧き調べてみた。経済産業省の“日本のエネルギー 2021 年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」”によると、意外と健闘しているがわかる。日本の再生エネルギー電力比率は2019 年度で18%(2021年には20%)ではあるものの、再エネ発電設備容量は世界第6位で、太陽光年間発電設備導入量は2021年度で世界第4位なのだそう。昨今の脱温室効果ガスの流れを受け、今後も日本における再生エネルギーの活用が増えるのは間違いない。と同時に、今まで以上に高効率な再生エネルギー技術の登場も期待される。

中部電力の御前崎風力発電所は2010年から運用を開始。日本の再エネ電力比率は2021年度約20%(出典:資源エネルギー庁)、再エネ発電設備容量は2021年度世界第6位(出典:EIA)で、太陽光年間発電設備導入量2021年度世界第4位(出典:EIA)とされている。

EVの可能性を体感した、Audi Q4 e-tronで走った1300km


御前崎から焼津を経由し、念のためにアウディ静岡東にて再度Audi Q4e-tronを充電して帰京した。総走行距離は1300km近くだった。アウディディーラーのみならず、ポルシェやフォルクスワーゲンのディーラーでも充電できるPCAは頼もしい。走りは端的に言えばピカイチで、重量配分の難しい内燃機関をもつこれまでの自動車とは、その根本である構造に圧倒的優位性を感じた。また、これまで電気自動車の課題とされてきた「一充電距離」や「充電時間」がどんどん進化を遂げていることを感じさせてくれ、日常使用でも期待に応えられることを実感した。充電インフラはさらに拡充されるだろうし、電気モーターやバッテリーもさらなる進化を遂げることに疑いの余地はない。スマートフォンが急速な進化を遂げたように、電気自動車も“当たり前”な存在となることは間違いないだろう。そして、既存の自動車メーカーはもちろん、新興自動車メーカーによる電気自動車の投入が加速するのは既定路線だろう。そのような背景において、120年以上にわたり、先進技術とエモーショナルなデザインが評価されてきたアウディのアドバンテージが、Audi Q4 e-tronで見せつけられた。

Audi Q4 e-tronと過ごした1300㎞、これまで電気自動車の課題とされてきた「一充電距離」や「充電時間」がどんどん進化を遂げていることを感じさせてくれ、日常使用でも期待に応えられることを実感した。

古賀貴司(自動車王国)

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