モータースポーツに欠かせない「ゴロワーズ」ロゴの生みの親、マルセル・ジャクノ

Tomonari SAKURAI

4輪でも2輪でも、レーシングカーカラーと言われて最初に頭に浮かぶのはたばこのメーカーだろう。今ではスポーツドリンクが強いイメージになっている。たばこのスポンサーがなくなって久しいが、たばこのブランドマークが強烈なアイコンだった時代があったのだ。マルボロなんて4輪でも2輪でもタイトルを獲得するチームの象徴でもあり、シンプルな赤と白のロゴは80年代のファッションにも溶けこんでいた。個人的には強烈な紫のシルクカットが好みだ。

さて、ここフランスのたばこメーカーといえば、ジタンが真っ先に思い浮かぶだろう。そしてもうひとつゴロワーズがある。ゴロワーズはジタンと同様にブルーを基調にしており、ガリア人の兜のロゴが特徴だ。特に80年代にヤマハのスポンサーになりそれを駆るフランス人クリスチャン・サロンが活躍。ゴロワーズカラーといえばクリスチャン・サロンというイメージにまでなった。

ジャクノが描いたデザイン画。

ゴロワーズたばこのパッケージ。両切りの時代。

兜が現代のものに。これはフランス海軍の官給品のゴロワーズたばこのパッケージだ。

今回はそのゴロワーズのスポンサーをしたレース歴などの話ではない。このゴロワーズのロゴについてのお話し。ゴロワーズのガリア人の兜のロゴは、1936年にグラフィックデザイナーのマルセル・ジャクノにより創られたもの。このマルセル・ジャクノの展示が行われているので、今回はそれを是非紹介したい。

ジャクノが手掛けたポスターの数々。当時は各色でするリトグラフでの印刷で仕上がりに魅力がある。

マルセル・ジャクノはグラフィックデザイナーでも成功したがそれよりも書体、フォントのデザイナーとして有名なのだ。当時は活版印刷が一般的でそのフォントを数々生み出した。ちなみに活版印刷のフォントのことをフランスではなぜかポリスと呼ぶ。彼の作品で有名なのはパリのシャイヨー国立劇場(Théâtre national populaire)のロゴもそのひとつだ。1920年代では多くの映画のポスターを手掛けている。彼の創った書体を見るとパリやフランスを感じるのもそのせいだろう。

文字をデザイン中のジャクノ。

ジャクノが手掛けたポスターの数々。当時は各色でするリトグラフでの印刷で仕上がりに魅力がある。

この展示”MARCEL JACNO, TYPO-GRAPHISTE”(活字作家マルセル・ジャクノ)は僕が通うアトリエのあるヨーロッパ最大の印刷のアトリエと博物館(atelier-Musée de l’Imprimerie)で10月27日~2023年9月24日まで開催されている。マルセル・ジャクノの実際に使っていたデスクや、原画、当時のポスター、そして活字などが揃った貴重な展示となっている。僕の好みから言えばここにクリスチャン・サロンのYZR500が展示されていれば完璧だったんだけどね。



印刷のアトリエと博物館 : https://a-mi.fr/


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

Tomonari SAKURAI

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事