フランスのサロン・ド・ショコラで見つけた、超精密な「食べられるブガッティ」

Tomonari SAKURAI

今年もやってきました。サロン・ド・ショコラ。昨年はまだコロナ禍ということもあり、かなり寂しいサロンだった。今年は「帰ってきた!」というくらいに賑わっています。ただ、まだフランス国内からの出店がほとんどで、日本からはただ1軒のみ。申し込みの時期がまだ日本はコロナ禍真っ最中だったため、日本入国の制限や、併せてウクライナの戦争も先が見えない状況から出店を見合わせたところもきっと多かったのだろう。また昨年は、コロナの感染予防措置として試食も禁止されていたこともあったが、今回はそれも解禁。子ども向けの教室や、ワークショップやコンクールなども以前のようだ。すっかり賑やかさを取り戻した感がある。

日本からただ1店、参加したのは静岡からのQuatre épice(キャトルエピス)。オーナーの藁科氏に話しを聞くと、10年ほど前に気持ちを明るくしたいとパリを訪れたときに、たまたまサロン・ド・ショコラを訪れた。そこではチョコをただ買う、食べるというのではなく、チョコを“楽しんでいる”ことに心が晴れたことから、いつかは参加したいと思っていたそうだ。

地元静岡ではお茶が有名だが、以前はミカンの産地としても有名だった。コタツで団欒という習慣が消えて久しい現在、ミカンの需要は極端に減ってミカン栽培をやめてしまう農家も多く、そこは今オリーブが栽培されているという。また、以前はたくさんあった和菓子屋さんもだんだん減ってきている。そこで、おいしかった最中(もなか)とオリーブ、そしてチョコレートのコラボレーションでここパリに帰ってきた。今度は周りの人の心を明るくする側として。地元の町おこしも含め、何かお祭りのようなワクワクするオーラを放つ藁科さんのブースは、とても印象的だった。

会場に唯一揚がった日の丸。

チョコレートは人を楽しくする。ブースも訪れる人を明るくするようなデザイン。

日本代表!藁科雅喜氏。昔元気をくれたサロン・ド・ショコラに今度は元気を与えにやって来た。

日本のブースが寂しい中、目立ったのはアラブのお菓子。スムール(クスクス粒)に蜂蜜たっぷりが基本で何十種類もあるお菓子だ。アラブ系フランス人も多いパリ。ラマダン(断食)の時期には街のあちこちでアラブのお菓子が売られているが、昨今フランスのパテイスリー風にオシャレになったお店が増えてきた。そんなこともありこのサロン・ド・ショコラにも出店が増えてきているようだ。

アラブのお菓子もおいしさだけでなくエレガントを備えはじめた。最近パリでもオシャレなお店をよく見かけるようになった。

こちらもアラブのお菓子。蜂蜜をしっかりと蓄えたこのお菓子もたまらなくおいしい。

さて、そんな会場を歩いていると、今までになかったチョコが登場していた。ブガッティType35のチョコだ。マスター ショコラティエであり、彫刻家でもあるジャン=リュック デクルゾー氏の手によるもので。このサロン・ド・ショコラで毎回作品を披露している。ちなみに昨年はナポレオンの像だ。今回のブガッティは彼の趣味からだ。3/4サイズのブガッティをできるだけ忠実に細部まで凝った作りをしている。380kgのチョコを使って400時間を費やした力作だ。昨年のナポレオンは120時間ということを考えると、車の趣味は相当なものだと感じられる。

精巧なブガッティがチョコで!

ワイヤーまで再現されているだけあって、おもちゃっぽさのない精密なモデルとも言えるほどの出来映え。

コクピットもこの出来。もちろん全部食べられる。

前回のパリサロンの様変わりや昨年のサロン・ド・ショコラなど、こういったイベントを訪れると、その変容ぶりに驚いていたが、今年のサロン・ド・ショコラは日本勢がいないのはたしかに寂しいものの、全体では元気を取り戻し以前のような賑わいになってきているのでホッとした。いままで気がつかなかったおいしいチョコにも出会えて、「サロン・ド・ショコラが戻ってきたぞ!」という熱い思いになった。いや、この熱さは天候も関係しているようだ。ここのところパリの気温が非常に高くこの日も23度。もうサマータイムが終わる時期なのに…


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

Tomonari SAKURAI

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