「私の好みではない? そんなことはありません」生粋のフェラーリ愛好家、松田芳穂氏が語るローマとSF90ストラダーレ

Gensho HAGA

日本随一の自動車愛好家でコレクターとして知られる松田芳穂氏。『オクタン日本版』編集長の堀江史朗はときどきそのフェラーリコレクションに触れさせていただき、お話を伺っている。「一応の最終回」はローマとSF90ストラダーレという新しいモデルとなった。



松田芳穂氏とのお付き合いの始まり


『オクタン日本版』Vol.26にて取材をさせていただいたことが、生粋のフェラリスタである松田芳穂氏と『オクタン日本版』のお付き合いの始まりである。現在お持ちのコレクションはフェラーリの新しいモデルがデビューする毎にラインナップが少しずつ変化をしていく。ほぼすべてのニューモデルがコーンズモータースから真っ先に納車されるというお立場なだけに、今はなかなかじっくりと乗り込む時間がもてないといったところでもある。オクタン日本版スタッフで編集させていただいた松田氏の自叙伝ともいえる上装本『疾走』。それを読まれたほとんどの方が「松田コレクションの名前は聞いているし、ミュージアムにも行ったことがある。ただし今まで乗ってこられた台数がここまでだとは本当に驚いた」という言葉を口にされる。

日本だけでなく欧米でのイベントに積極的に参加され、最新型車はもちろんクラシックカー界においても日本を代表するコレクターとして世界に名を轟かせておられた。ただ、ある時期から安全性を重視してクラシックからは少し距離を置き、現在は常に最新モデルをガレージに並べられている状況である。

基本的にフェラーリのV12エンジンが大好きだとおっしゃる松田氏。ここ2年ほどで取材をさせていただいたフェラーリはどれもユニークだ。はじめはかつて所有していた車を買い戻したF512Mスペチアーレ、550マラネロ。この時は御殿場にて関谷正徳さんとお話をさせていただいた。

軽井沢に足を伸ばしたときは特別なモデルを2台で東京から出発した。1台は599GTO 。GTOとはGran Turismo Omologataの略でありレース専用車599XXを公道仕様としたモデル。そしてもう1台はF12 TdF 。このTdF(ツール・ド・フランス)の面白さについては松田氏の友人でモータースポーツを愛する小林康雄氏も「走り込んでいったときのバランスはどのフェラーリよりも優れる」と絶賛。

F12ベルリネッタ70thと一緒にラ フェラーリ アペルタに乗せていただいたときはさすがに腰が引けた。松田氏が「ではこれは君が乗って」とサラリと口にされた言葉に、今まで感じたことのない緊張感を覚えることになったから。

これらの公道取材のほかにも富士スピードウェイで数十分も走り続ける松田氏とSP1の取材に出掛けたこともある。この時もスペチアーレモデルのオーナーでしか表現できないような直接的な感想には度肝を抜かれたものである。

フェラーリ ローマとSF90ストラダーレ


そして今回の取材はローマとSF90ストラダーレ。ちなみにこのシリーズは今号をもって“一応”最終回である。ただし松田氏から、次やまたその次にガレージに運び込まれるフェラーリが存在することをおしえていただいたので、あくまでも「一応の最終回」とさせていただく。

ローマは松田さんの好みなのか?

さてそのローマである。長く松田氏の自動車の楽しみ方についてお話を伺ってきた立場としては、正直なところGTカーにも映るこのローマは「松田さんの好みではないのでは?」と考えてしまった。ブラックのエクステリアにバーガンディに近いロッソのインテリアはある意味ゴージャス。リアシートも装備されていて、しかも右ハンドル仕様だ。スポーツカーやレーシングカーを指向する松田氏はなぜこのローマを選んだのだろう。

Ferrari Roma
前後フェンダーのふくらみ、テールの 4本出しマフラー、フロントボンネットのセンターバルジなど、250SWB のオマージュらしく映るポイントがいくつも見受けられる。右ハンドルでもペダル位置のオフセットなどに違和感はない。



「私の好みではない? そんなことはありません」

「私は250SWBを2台もっていましたが、このローマを真横から眺めたフォルムは250SWBとそっくりです。そして走らせれば紛うことなきフェラーリですから」
「右ハンドルはめずらしいということも量産モデルしか知らない方の考えです。以前からフェラーリ社は特別に注文をすれば右ハンドル仕様でも作ってくれました」

僕自身もローマはフェラーリジャパンの広報車を借りてだいぶ長く走らせたことがある。たしかにルックス的にはラグジュアリィクーペのように見えなくはないが、街中だけでなく高速でワインディングで走り込んでいくと、これはまったくスポーツカーだと思い知らされた。松田氏がこのローマを選んだ理由に、お孫さんにもフェラーリの魅力を身近に感じて欲しいというポイントがまったくゼロではないと思うものの、やはり真のフェラリスタは視点が違うことを考えさせられた。

アセットフィオラノ仕様のSF90ストラダーレ

もう1台はSF90ストラダーレ。もちろんカーボンファイバー製のリアスポイラーやインテリア、そしてアルミ製ダンパー、チタン製スプリングなどがパッケージされたアセットフィオラノ仕様である。この車は量産のフェラーリとしてはフェラーリ初のPHEV(プラグインハイブリッド車として登場したモデル。新開発の4リッター V型8気筒ツインターボエンジンは780psを発揮。これにリア1基、フロント2基の電気モーターを組み合わせた、いわゆるe-4WDとなる新世代フェラーリである。

Ferrari SF 90 Stradale
SF90を量販車と呼ぶことにやや抵抗があるが、カタログモデルのハイブリッドプロダクトとしての完成度は高い。エンジン搭載位置の低さなど、296GTBなど新モデルへ引き継がれる部分も多くなっていくだろう。



松田氏にとって黄色、つまりGIALLO MODENA(ジャッロ モデナ)は最も愛するボディカラーのひとつだ。このSF90のフロントにはシルバーのアクセントが施され、シャープなデザインがより引き立っている。

「フロントカウルまでのデザインは美しいですね。大き過ぎず実にスポーツカーらしいところは大いに気に入っています」

「大きな排気音だけが欲しいわけではない。スタートは無音でも回転を上げていったときにエンジンサウンドが変化する。これがこれからのスポーツカーではないかな」

以前にも東京六本木から御殿場往復でSF90を試したことがある。もちろん公道でフルパワーを味わうことは不可能だが、早朝でも近隣に迷惑を掛けない静かさは安心感に繋がるし、サーキットを自走で往復できる便利さはジェントルマンドライバーには打ってつけである。

この2台の新世代フェラーリは、すでにあらゆるスイッチにタッチ式が採用されている。伝統と歴史をしっかりと見定めたうえで、進化する跳ね馬を受け入れる松田芳穂氏。前回に続き撮影場所に選んだ明治神宮絵画館は、小学校時代によく訪れた場所であることを聞いた。

撮影時にはフェラーリF40の刺繍が施されたネクタイをしてお付き合いいただいた松田芳穂氏。自動車を愛する快活な会話の中にも豪快さやいたずらっぽさを感じさせる言葉があり、周囲を和やかな雰囲気にしてくださる紳士だ。

「この建物はお金が掛かっているね」

良いものを見続けてきた紳士から学ぶべきことは、まだ多い。


文:オクタン日本版編集部 写真:芳賀元昌 
Words:Octane Japan Photography:Gensho HAGA

オクタン日本版編集部

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