いずれも傑作揃い!コンクールコンディションのジャガーEタイプ4台|最初の精鋭たち【中編】

Amy Shore

この記事は、【現存するジャガーEタイプの中でも特に重要な4台が集う|最初の精鋭たち(前編)】の続きです。



シャシーナンバー850005


世界屈指の重要なEタイプがこの850005だ。プロジェクトZPの 1台で、ファクトリーからトミー・ソップウィズが率いるレーシングチーム、エキュイップ・エンデバーに供給された。

ECD400は、グレアム・ヒルによってEタイプ初優勝を遂げた。

ダークブルーの塗色に、赤いレザーのインテリア、シルバーのレース用ワイヤーホイールを履くロードスターで、フロントエアインテークの白い縁取りが目印である。ソップウィズは登録ナンバーに400を好み、これも「ECD400」のナンバーを付ける。1961年 4月15日にオルトンパークで開催されたBARCのスプリング・ミーティングにぎりぎりで間に合い、完全なレース仕様に整える機会がほとんどなかったにもかかわらず、グレアム・ヒルのドライブでいきなり優勝を飾った。

2位はイネス・アイルランドのアストンマーティンDB4GT、3位はクームスのEタイプを駆ったロイ・サルバドーリ、4位はジャック・シアーズのフェラーリ250SWB。つまりEタイプは、目標としていたライバルを初出走で倒したのである。続く5月のスパGPでは、マイク・パークスのドライブで2位フィニッシュ。地元のヒーローであるウィリー・メレスのフェラーリ250 GTSWBには1周遅れだった。シーズン末の7月にはスネッタートンでも優勝して、ECD 400は、Eタイプ最初の3勝のうち2勝を挙げたのである。

シーズン終了後に売却されたあとも、ECD400は様々なクラブミーティングに出走した。やがて惨めな状態になっていたところを、ジェガーのスペシャリスト、ロバート・ダニーによって救い出され、ピンク・フロイドのマネージャーだった故スティーヴ・オルークがマッチングナンバーの状態にレストアした(ただし、ボンネットだけは交換が必要だった)。今回は、ジャガーのスペシャリストであるマイケル・バラードが会場に持ってきた。名高いステアリングを握って相当の距離を走行しているバラードは、こう語った。

「ECD 400のセットアップは抜群ですよ。走りの印象はほとんどロードカーです。とはいえ、たしかに特別な感触があります。それほどシャープで正確なのです。踏めば本領を発揮しますよ。オーナーのポール・ヴェスティー卿は、これを甘やかさずに、持ち出して使うことを望んでいます。そのほうが車にとってはいいですからね」

シャシーナンバー850025


モデルの名を高めた1台から、陰で支えた“スリーパー”に話を移そう。ダークグリーンのボディにブラックのアルミニウム製ハードトップという控えめな姿の850025は、最も重要なEタイプの中でも、おそらくほとんどの人が聞いたことのない1台である。

新車から今に至るまでヘインズ家が所有する4133 RW。

1961年 6月9日に、Eタイプのデザイナーでチーフエンジニアリング・ディレクターのウィリアム“ビル”ヘインズに個人用として供給され、「4133RW」のナンバーを付けた。そして、2台存在したジャガーの実験車両となって、ノーマン・デュイスによるタイヤやハードトップの高速テストに使われた。続いて、アルミニウム製のボンネットとドア、トランクリッドに交換され、3.8リッターの軽量なアロイエンジンとZF製 5段ギアボックスを搭載して、最初の“ライトウエイト”ジャガーとなった。

さらに、拡大された4.2リッターエンジンと4.2リッター仕様のトリムを装着。Eタイプが改良を重ねながら後期バージョンへと進化する過程で、数多くの高速テストをこなした。その後、1968年にビル・ヘインズの息子のジョナサンが買い取った。さっそくプレスコット・ヒルクライムに出走すると、その日の最速タイムをたたき出している。現在もほぼオリジナルの状態だ。オリジナルといっても、ワークス時代にほとんどすべてのコンポーネントが交換されたり開発仕様に置き換えられたりしているのだが。

現在、4133RWの面倒を見ているのは、ジョナサンの息子のウィリアムである。ウィルも優秀なエンジニアで、「正直、この車は少しくたびれているので、慎重にレストアして、すべて締め直し、本来の状態に戻す計画です」と話す。つまり、一家族が所有してきたワークスの実験用Eタイプである。コレクターなら、のどから手が出るほどほしい1台だろう。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下恵

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事