興味深いヒストリ―を持っていた一台!英国製スポーツカー初の四輪独立懸架モデル ACエース

Photography:Jordana Schramm


 
街を抜けると道路は無人地帯に伸びる片側2車線となり、ウィルヘルムはフレイザー・ナッシュを加速させる。私はACのギアを一段落とし、トリプル・ソレックスのバタフライを一杯に開ける。128bhpを発揮する1971cc OHV ストレートシックスは特にパワフルではないが、回転が上がり4500rpmに達すると性格が変わる。繊細なツインエグゾーストパイプからのガリガリという排気音は“音楽的旋律”に変化し、そしてパワーは急速にスムーズに立ち上がる。
 
軽量なACのフィールは実に素晴らしい。裏道に入ると、ウォーム&ペグ式のステアリングは素晴らしくシャープな印象を感じさえ、その感覚が細身のステアリングからドライバーに伝わってくる。堅固なサスペンションは完璧な無人地帯の道でうねりに浸り、美しいボラーニ製ワイヤーホイールに履いた細いミシェラン5.50 R16が適度なスライドを楽しませてくれる。これがウィルヘルムの日常の通勤手段だとは私には信じ難い。



なんとか彼に遅れずついていくことができた。エースは快調でエンジン音が大きい。個人的にはこれが1950年代の英国の最もエレガントなスポーツカーの一台だということがポイントだ。エースの本領は、腕力というよりバランスだ。


ステアリングは正確、パワーは十分、シャシーは慎み深く挙動は予測が可能で、路面を流れるように走る。見た目より実ははるかに早い速度域でもリラックスで快適である。ドラムブレーキもほどよく温まり、コーナリングはさらに高速で入れるようになった。ひとしきり走った後、車を交換するために路肩に停めた時はひどく気分が高揚していた。1959年のル・マンでエースがクラス優勝、総合7位に入ったことは驚くには当たらない。エースは現在もスポーツドライビングを楽しむエンスージアスト達によってさらに勝利を重ねている。


ル・マン参戦のために設計されたフレイザー・ナッシュ・"ル・マン・クーペ"のヒストリーは?<次回へ続く>

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers )  Transcreation:Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers ) Words:Robert Coucher Photography:Jordana Schramm 取材協力:A.ランゲ&ゾーネ(www.alange-soehne.com )

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