70年以上の時を経て蘇ったポルシェ 356 No.1│3Dスキャナーを用いて実車を測定

Porsche AG

当時、手間暇を惜しむことなく丁寧に作り上げられた至高の一台、ポルシェ 356 No.1。1948年に板金工のフリードリッヒ・ウェーバーはこの “No.1” に2ヵ月以上の時間をかけて作り上げた。そして、2018年にポルシェが70周年を迎えたことを記念し、ポルシェはショーカーの356 No.1を作った。

当時と同じ姿に戻すことはできないが、当時と同じ素材を用い、同じ技術でレストアを進めていけば、相当のレベルに仕上げることができるのではないか。そう考えたポルシェの専門家たちは1948年製ロードスターのディテールまで忠実に再現するため、3Dスキャナーを用いてポルシェミュージアムに展示されていた356を測定することからはじめた。コンピューターが表示した結果を見て、1948年当時の設計図にロードスターの測定値と重ね合わせてみると、かなりのずれが確認できたそうだ。原物の写真や、当時の作業日誌を確認する資料スタッフと相談しながら、少しずつオリジナルのフォルムに近付けていった。これが想像以上に難しかったのだ。そして最後には、コンピューター制御のマシニングセンタで硬質発泡スチロールを加工すると、いよいよ1948年製ロードスターの原寸大フォルムが完成した。



しかし、1948年製 356の実物と並べてみると、何かが違う。オリジナルのボディはリアに向かってほそくなっていくのだが、トランクは室内と一体化し、リアバンパーまで伸びていた。

製造された時と同じように手工具でアルミニウムの板金を曲げ、打ち出し、成形し、70年の時を経て356 No.1は生まれ変わった。塗装までまったく同じだというのだから、その再現度が高いのも納得だ。しかも、出来る限り同じ色に仕上げるために、ダッシュボードの下に何層も塗り重ねられたオリジナルの塗装サンプルを抽出し、徹底的に分析も重ねた。ダッシュボードのステアリングコラムの左右には、オリジナルと同じメーターパネルがあり、カーペットのノット数まで70年前のものと同じに揃えているというのだ。



ここまで忠実に再現していながら、唯一真似できなかった点は、走行することだった。フロントアクスル、ステアリング、ステアリングホイールは原物と同様、VWビートルのものを備えているが、ボンネットの下にはエンジンはなく、リアアクスルにはただのパイプが取り付けられている。

こうして8か月の時間をかけて完成したポルシェ 356 No.1のショーカー。当時の面影をそのまま残したこの一台は、ポルシェの歴史を物語るだけでなくアイコン的な存在でもある。このロードスターのドライビングダイナミクスを重視した設計、軽量ボディ、どれもポルシェのスポーツカーへと繋がっていくルーツがあるのだ。

オクタン日本版編集部

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