イタリアのイベントであるため、トゥーリング製ボディを纏ったイタリアンカーに光が当たるのは当然である。しかし、北イタリアを代表する優雅なリゾート地であるヴィラデステに相応しい優雅なメイクとして、ロールスロイスの存在感も侮れない。過去には美しいシルバーゴーストもヴィラデステの権威というべき、コッパ・ドーロ賞を獲得している。
一昨年にスウェプテイルと称す久方ぶりに登場したロールスロイス・コーチビルドモデル(ワンオフモデル)がここヴィラデステにおいてアンヴェイルされ、話題を呼んだことも記憶に新しい。トップレンジのファントム・クーペをベースとして製作されたスウェプテイルはその14億円を超えるという自動車史上最高のプライスタグが付いたことでも話題を呼んだ。ここで、今年のヴィラデステに登場した2台のロールスロイスをご紹介。
1914年40/50HPシルバーゴーストはパリのコーチビルダーであるケルナーの手によるオープンボディを纏ったモデル。まさにこのヴィラデステにうってつけのストーリーを持っていたのだった。ポルトガルにデリバリーされたこのシルバーゴーストは、現在のオーナー マギー・ダグラスが入手したときには何ともいえないシューティングブレークスタイルのボディと合体されていたそうだ。
彼の長きにわたる献身的なリサーチの結果、偶然にもそのオリジナルボディを発見する。何と、このシルバーゴーストの初代オーナーが所有していたもう一台のシルバーゴーストのシャシーにそのボディは載せ替えられていたのだった。ダグラスのおかげで85年間離ればなれとなっていたボディとシャシーが再会したのであった。この素晴らしいストーリーで観客達を楽しませてくれ、“トロフェオ・ロールスロイス”を今年のヴィラデステで獲得した。
そして、ヴィラデステの美しい敷地内の中央にあたる、いわばお立ち台とも言える特等席に鎮座していたのは"ロールスロイス レイス イーグルエイト”であった。前述の40/50HPシルバーゴーストが誕生した5年後の1916年のこと、ロールスロイス製20.3リッターV12”イーグルエイト”エンジンが搭載された双発機によって、ジョン・アルコック大尉とアーサー・ブラウン中尉は世界初の太平洋横断飛行を成し遂げた。その100周年を記念して製作されたのが当モデルだ。
50台の限定製作が予定されている“ビスポークモデル”であり、ボディカラーは夜間飛行をイメージとしたがんメタリックとグレーのツートーンだ。両色はブラス製のモールにより区切られ、重厚なアクセントが付けられているのも特徴だ。また、フロントのパンテオン・グリルも記録達成100周年のオマージュとして、イーグルエイトエンジンのカウリングさながらブラックアウトアウトされている。
「過酷な条件の中で成し遂げた偉大なる冒険に敬意を払うと共に、そこにあるロマンを顧客の皆様と共有しようというコンセプトからこのモデルは生まれました。2年の歳月をかけ、20人あまりのビスポーク部門のデザイナー達によって開発されたのが、このレイス イーグルエイトです。ビスポークはロースロイスというブランドの中でたいへん重要な意味を持ちます。そもそも全体の85~90%にあたる個体が顧客の趣向により何らかのカスタマイズが行われています。究極のカスタマイズであるスウェイプテイルはとても大きな反響を呼びましたし、これからも大きく取り組んでいくことになります」ビスポーク部門のジェネラル・マネージャーであるジョン・ベックリーはそう語る。
「なんと言ってもこのルーフライナーには注目して頂きたい。まさに二人の冒険家が見た星空を再現してあるのです。そしてインテリアのウッドパネルは彼らが見た地上の光が描かれているのです」と彼は締めくくった。
さらに、このヴィラデステと被る日程で5月26日はモナコGPも開催された。そして今年は5月16日から19日までモデナにて、モーターヴァレーフェスタなるニューカマーイベントも誕生した。来年に向けて綿密な計画の元、イタリアの自動車三昧を楽しんで頂きたい。
Words: Shinichi Ekko 文:越湖信一
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