1977年ランチア・ストラトスHF
最初に「音」が届いた。機械音というより、まるで獣の咆哮のような音がイタリアののどかな風景の中に響き渡った、そして1977年モンテカルロ・ラリーを制したランチア・ストラトスHFが姿を現した。あれから40年たった今でも、その圧倒的な存在感は少しも失われていない。現代の目から見ても、ウェッジシェイプのボディは未来的だ。
ストラトスは速度を落としながら近づいてきた。緑/白/赤のいわゆるアリタリア・カラーに包まれたベルトーネによるスタイリングは実に威風堂々としており、ほとんど傲慢と言ってもいいほどのプライドを主張している。目の前に停まるかと思った瞬間、フェラーリ・ディーノ用V6エンジンの咆哮を上げて、ストラトスは私たちを見下したように走り去った。それはまるで気難しいサラブレッドが撫でようとした手を振り払って走り去るかかのように見えた。
リアスポイラーと巨大な丸いテールライト、いかにも70年代風のルーバーが付いたリアウィンドウを呆然と見送っていると、私たちの横に立つサンドロ・ムナーリは微笑んでいることに気づいた。おそらく彼は1977年1月22日から28日の出来事を思い出していたのではないだろうか。その後姿は、フレンチ・アルプスでかつてライバルたちが追いかけ、そして追いつけなかったそのものなのである。
「このストラトスは特別だ」と長身のイタリア人は口を開いた。
「今も時々この車に乗る機会はあるが、これは単なる車ではない。素晴らしい記憶を呼び戻す魔法のようなものだ」
1977年モンテカルロ・ラリーでのサンドロ・ムナーリとランチア・ストラトスは真に無敵だった。40年を経た今、私たちは本当の伝説というものを目の当たりにした。
オクタン日本版vol.18「魅惑のイタリア車」 特集一覧はこちら
amazon:http://amzn.asia/azQRoyJ
Fujisan:http://www.fujisan.co.jp/product/1281695173/next/
2024.09.09
スーパーカー世代にはたまらない!ペブルビーチに集った「ウェッジシェイプ ...
今年のモントレーカーウィークで最も印象的だった出来事は、スーパーカーブーマーの世代がその昔の若い頃フツウに憧れていた同世代のモデルが至る所で脚光を浴びていたことだった。具体的には70年代以降、80年代 ...
2024.09.02
フランスのクラシックカー雑誌『Gazoline』が主催するミーティング ...
フランスにも多くのカー雑誌がある。クラシックカーを中心に扱う雑誌の一つに『Gazoline』(ガソリン)がある。フランスに移住する前、まだフランスと行き来していた20年以上前に、この『Gazoline ...
2024.08.30
連載:アナログ時代のクルマたち|Vol.34 ペガソZ102 クプラ
ペガソというスペインの自動車ブランドを知るにあたっては、多少なりともスペインの歴史を知る必要があるだろう。第2次世界大戦開戦の直前までスペインは内戦状態にあった。結果は反乱軍の勝利となり、権威主義政権 ...
2024.08.16
連載:アナログ時代のクルマたち|Vol.33 ポルシェ906
日本のレース史における創世期において、もっとも大きな影響を与えた車がポルシェであることに異論はないと思う。第2回日本グランプリにおいて、スカイラインGTと死闘を演じたマシンがポルシェ904。このマシン ...
2024.08.11
「あやうく本当の姿を見逃すところだった」|ジェントルマンのためのスーパ ...
大胆にもマセラティは、ミドマウントエンジンカーのヒーローたちが待ち構えるマーケットに、洗練されたボーラを投入した。テスターのリチャード・ヘーゼルタインは、マセラティ・ボーラを“宝石のような ...
2024.08.09
20年以上もの間、日本に「新車」状態で存在していた !? 波乱万丈なイ ...
以前、octane.jpでとり上げたことがあるイズデラ・インペラター108iは、1984年から1993年にかけて30台しか生産されなかった車両である。そんな車がアメリカ・カリフォルニア州を代表する車の ...
2024.08.30
ひと枠10万円で憧れのスーパーカー、ランボルギーニ・ミウラやカウンタッ ...
アート作品を共同保有する日本初(※1)のプラットフォームビジネスを始めた「AND ART」(サービス名 AND ART)が、会社名を「AND OWNERS」(同 & ONWERS)へ変更すると同時に、 ...