ジャガー EタイプとFタイプをスペイン・バルセロナで乗る

Photography : Mark Dixon

ジャガーEタイプは半世紀以上前に発表され、45年ほど前に生産を終えた。その後、後継車と呼ぶに相応しい車はあったのだろうか? オクタンはそれを見つけるヒントを求めてバルセロナに向け走った。

早朝。バルセロナから数時間の静かなモーターウエイを高速で流している。周囲の木々の緑がカタルーニャの強い春の日差しを受けて既に色褪せ、霧は遠く離れたアラゴンの北、ピレネー山脈の険しい岩山から次第に晴れつつあった。周辺の景観と、この1963年型ジャガーEタイプ3.8クーペが醸し出す雰囲気、その両方が穏やかに美しい。高速でマイレージをのばし続けるパフォーマンスは素晴らしく、これが車齢50歳以上のクルマだとは信じ難い。

1961年、
Eタイプの発表のために、英国コベントリーからジュネーヴ・ショーの会場へと陸路、新型車を走らせているテストドライバーのノーマン・デュイスとボブ・ベリーの颯爽たる姿と、まだ当時多くのメーカーが行っていた一般公道での高速テストを思い起こさせる。今日では望むべくもない。英国内ではここのように高速道路が空いていることなど、もはやあり得ない。8時10分過ぎ。Eタイプともう1台を除いて、車影は一切見えない。他の1台とは最新型のFタイプクーペだ。



Eタイプはとてもフレンドリーに見える。まずは力強いストレートシックスの咆哮を主音とした和音と、それとは相反する種々の雑音。3000rpmでまだまだ余裕のあるパワーはちょっとクリープさせる間も跳ね回りたくてうずうずし、その後スロットルの解放で一気に飛び出す。乗り心地はしなやかで軽快の一言に尽きる。進歩的なダブルコイルスプリング式後輪独立懸架は、旧式なリーフスプリング式のリジッドアクスルとは次元の異なる優れた感触だ。ステアリングは、レスポンスを必要とするときはシャープでありながら直進性も確固たるものだ。

細いAピラーと直立したウインド
スクリーンがもたらす、遮るものがほとんどない視界はボンネットのバルジの前方に広がり、さらには航空機の計器を思わせるスミスのメーター類とアルミニウムパネル張りのセンターコンソールが心を揺さぶる。現時点での数少ない欠点と思えるものは、見た目は良いがちょっとシャビーな感じの"小振り" のバケットシートと、各ギアを確実に引っ張るには熟練のダブルクラッチを要求するトランスミッションだ。ただし、この個体はオリジナルのモス製ではなく4.2モデル用のフルシンクロ・ギアボックスに交換されている。これはEタイプのキャラクターなのであって、そうでなくてはこの半世紀のクルマの進歩は意味のないものになってしまう。

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA Words : Glen Waddington 

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