世界で唯一、イカリをオプションとして販売された車とは!?

octane UK

テムズ川沿いのバーで列に並ばずに済む方法は? それは簡単だ。アンフィカーで乗り付ければ良いのだ。興味津々の酔っぱらい達が不思議な車を見に外へ出て行った隙に、仲間たちでバーを独占しよう! あぁ、でも実際には、そのくらいしかこの車を正当化できる理由がない。

アンフィカーの粗探しは簡単だ。まず陸の上では途方に暮れるほどで("all at sea")、しかも水の上では能力がおよばない("out of depth")。

アンフィカーの生みの親はドイツのエンジニア、ハンズ・トリッペルで、水陸両用車での様々な実験を経て、第二次世界大戦では1万4000台も製造されたフォルクスワーゲンのシュビムワーゲンを手がけた。

アンフィカー770は、BMWのオーナーグループであるクヴァント・グループが1961年に発売した。リアエンジン、鉄のボディ、そして後部の底に2枚のプロペラを備え、水陸両用車界の「ビートル的存在」になる事を期待されていた。そして拡大への期待を込めて、1959年にジュネーブにおいてプロトタイプが「ユーロカー」として発表された。エンジンはトライアンフ・ヘラルド1147cc4ポット、トランスミッションにはポルシェの要素が入り、そしてブレーキとサスペンションの大半はメルセデス製だった。

アメリカ人が大量に購買すると予想され、売上見込も2万台と非常に楽観視されていたが、実際のところアンフィカーは陸上では時速70マイル、水上では71/2ノットというパフォーマンスの低さ。ステアリン世界で唯一、イカリをオプションとして販売された車の市場が上昇傾向しているこれはボートか、それとも自動車かグは水陸共に感度が悪く、乗降用のラダーもなく、全体的にコーナリングはグダグダだった。あるアメリカの雑誌によると「アンフィカーを数マイル乗った感想は、冒険的としかいえない。ステアリングは精度にかけ、ブレーキペダルはヘラクレス並みの力が必要だった。乗り心地は、不安定なゆらゆらした感じだった」とある。陸上でさえ、これだ…。

売上台数は少なかったが、アンフィカーはいくつかの冒険のキッカケにもなった。1965年、2人の英国陸軍兵士と脱出マジシャンがドーバーからカリスへ海峡を7時間半掛けて2台のアンフィカーで渡った。サンディエゴからカタリナ島、そしてモロッコからスペインなどの冒険もあったが、1人のドイツ人の場合は、残念ながら栓の締め忘れにより、車が川の底へ沈んでしまった。
 
1968年にクヴァント・グループがついにアンフィカーを断念した時点では、3~4000台製造されていた。発売以来、利益を一度も生み出したことがないアンフィカーだが、今日まで民間で最も成功した水陸両用車ではある。

現在は、航海可能な状態にあるのは1000台以下と言われている。海上で使われたものの多くは錆びてしまったからだ。流通第数があまりにも少ないため、市場価値はまだあるということだろう。一時、相場価格は「立泳ぎ」状態であったが、今はちょっとずつ浮上しているようだ。
 

オクタン日本版編集部

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