ランボルギーニ社が自らレストアした第一号車「ランボルギーニ・ミウラSV」の完成度

1971年ランボルギーニ・ミウラSV



ポロストリコは、自動車メーカーだから保管されている新車時の仕様書に基づき、オリジナルに忠実なレストアを行う。もちろん、新車時に使われていた素材へのこだわりも相当なものだ。とはいえ、ポロストリコですべてのレストア作業が完結するわけではない。「いずれインテリアやメカニカル面のレストアは自社で行うつもりですが、塗装作業を自社で行うつもりはありません」とマッフェオは語る。

ポロストリコはランボルギーニ社のレストア部門ではあるが、たとえるならオーケストラの指揮者のような立場だ。各分野の外部スペシャリストへの発注を公にしている。恥じることでもないし、高品質で効率的なレストアを行っている証でもある。なお、シャシーナンバー4846のレストアに要した期間はわずか8カ月(4カ月は内外装色の正確な割り出し、塗料の用意などに費やされた)。

すでにポロストリコには350GT、カウンタック、LMがレストアの予約が入っているが、もう8カ月で作業を終えることはないだろうと二人は語った。ミウラは例外で、アメリアアイランド出展に間に合わせるため、残業に次ぐ残業だったという。思えばシャシーナンバー4846は新車時も、約半世紀後のレストアにおいても、締め切りに迫られる運命にあったようだ。

小規模なメーカーだったからできた
ポロストリコを率いるエンリコ・マッフェオがランボルギーニ社に入社したのは、18年前のことだった。当時、ランボルギーニ社の社員数は200名足らず、年間生産は220台程度であった。小規模メーカーだから、社員全員の顔を覚えていた。少しでも分からないことがあると誰に聞けばいいかも分かった。

「レストアについて疑問が出てくると誰に聞けばいいのか、すぐに思い浮かびます。もう職場を離れた人間でも、ボローニャ近郊に住んでいるケースが多いので、家まで足を運ぶこともありますよ」とマッフェオは語っている。

ポロストリコは大きく分けて4部門から構成されている。資料・記録部門、スペアパーツ部門、サーティフィケーション(認証)&レストア部門、そしてごくまれに取引されるランボルギーニ・ミュージアム用の車両売買部門である。資料・記録部門には約9割の新車時(350GTからディアブロまで)の生産管理票が保管されている。そのほか生産されたすべての仕様書、約2万枚の設計図、全車のカタログ、オーナーズマニュアル、整備マニュアルなども保管されている。最近、ダラーラ博士が1965年にフェルッチオ・ランボルギーニに宛てた手書きメモも収められた。"ランボルギーニがレース参戦で受ける恩恵"と題された内容だったが、ランボルギーニが聞く耳を持たなかったのはご承知の通りだ。

スペアパーツ部門には全モデルの7割強、1500万ユーロ相当が保管されているという。ただ、どれだけがレストアに必要なものなのかは今も精査中だ。そして、オリジナルパーツの在庫が残り2個になると、保存するルールを導入した。なお、ランボルギーニ車のパーツは年々、更新されており、2015年だけでも58個の新パーツが投入されている。そう、現行モデルといえども、いずれはポロストリコのお世話になる時代がやってくるというわけだ。

またサーティフィケーション(認証)においては、全ランボルギーニ車の新車時の仕様書、テクニカルデータの提供、オーナーのあらゆる要望に応える。また、取材から数カ月以内にはフェラーリがクラシケで提供しているような、オリジナリティの鑑定も行うという。

「完成した車両をオーナーに見せたとき、アメリアアイランドでミウラSVをご覧になる皆さんの表情を見て、我々の努力と苦労は報われました。そして、あるミニチュアモデルメーカーから、「レストアされたシャシーナンバー4846をミニチュアモデルのテンプレート(金型のベース)として使いたい」と言われたときは、嬉しかったですね。50年後にミニチュアモデルをレストアしていたら困りますけど」とマッフェオは笑う。

1971年ランボルギーニ・ミウラSV
エンジン形式:V型12気筒、DOHCウェバー40IDLトリプルチョークキャブレター×4基、ミドシップ・マウント
最高出力:385bhp/7700rpm 最大トルク:39.6kgm/5500rpm
トランスミッション:5段MT、後輪駆動 ステアリング:ラック・ピニオン
サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、
テレスコピックダンパー、アンチロールバー
ブレーキ:4輪ディスク 車両重量:1298kg

性能:最高速度289.7km/h、0-60mph(96km/h)6秒

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA(carkingdom) Words:Massimo Delbo

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