ランボルギーニ社が自らレストアした第一号車「ランボルギーニ・ミウラSV」の完成度

1971年ランボルギーニ・ミウラSV



シャシーナンバー4846がサンターガタのポロストリコに到着したとき、一部のパーツは取り外された状態だったうえに、ボディはオリジナルとはまったく異なる真っ赤な塗色であった。しかもジュネーヴショーに間に合わせるための突貫工事ぶりが随所に見られた。ブレーキランプ回りのフレームはクローム処理が指定されていたが、ショーに間に合わせるために忘れてしまったのか黒のままだ。また、サイドスカートはSVのものが間に合わずSのものを装着し、イグニションキーがステアリングコラムにではなく、相変わらずセンタートンネル部分に配されているといった具合だ。いずれも仕様書やモーターショーの資料写真など、メーカー直結のポロストリコでしか確認できない記録が厳密な新車時の姿に戻すレストアには欠かせない。ポロストリコが重視するのは綺麗にするレストアではなく、新車時の姿に戻すことだ。

「モーターショーで披露された車両には、本来のSVとは異なるユニークさがたくさんあります。SVのパーツがモーターショーまでに間に合わなかったという点もさることながら、いかにも展示車両らしく写真映えが重視され、クロームやポリッシュ仕上げが通常のSVよりも多めになっています」とはピッコの弁だ。確かに4846のシフトゲートにはクローム処理が、カムシャフトカバーには研磨が施され、プラグコードは目立つように赤いものが採用されていた。シャシーのレストアはポロストリコのパートナーであるマルケジ(当時のシャシー外注先)が担当し、単に見映えをよくするのではなく、設計通りの数値が出ているか、劣化部分がないかを確認した。シャシーを再塗装する際も、新車時のちょっとくすんだ黒に塗装している。

シャシーナンバー4846のオリジナルボディカラーの正式名称は「ヴェルデ・メタリッツァート」だ。再塗装にあたっては、新車時と同じニトロセルロース系の塗料を用いた。塗装ブースでの焼き付けは必要としないが、なんと24層もの塗装なのだそうだ。つまりは時間と手間がかかる。その分、塗装面は横角度から見ると艶やかながら軽ろやかで、縦角度から見ると深みがあるものに仕上がっている。見る角度や光の強さによって、塗装面は様々な表情を浮かべる。もちろん、ボディパネル表面の凹凸や取り付けなどの正確さが大切になる。

「完璧を期すために、ポロストリコでレストアする車両には必ず3Dスキャンを利用しています。これによりボディの寸法、フィッティングが新車時本来の姿であるか否かを確認できます。それと同時に、レストアするたびに新しい情報やノウハウが蓄積されていくんです」とピッコは語る。シャシーナンバー4846ではリアフェンダー回り、エンジンフード部分などに異常値が出ていた。これは以前のレストア作業で、パネルを削り過ぎたことが原因だった。

「ボンネットの数値も、ほかのミウラと比べると傾斜が緩かったのです。当初、軽い衝突でもしたのかと思いましたが、塗装を剥いでみると、これはこの車両だけのユニークさであることが分かりました」と続けた。これは普通のミウラ用ボンネットに大型エアインテークをワンオフで取り付けた結果であることが判明した。モーターショー出展車ならではのポイントであり、これがシャシーナンバー4846のオリジナルの姿なのであった。つまりボンネットをほかのSVと同じように"修正"することはオリジナルの姿に反するため、ボンネットはそのままの状態でレストアされた。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA(carkingdom) Words:Massimo Delbo

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事