新たな伝説がここに。マクラーレン最新作「W1」がアンベール

McLaren

マクラーレンから新たな伝説が誕生した。その名はW1。過去にF1、そしてP1といずれもスーパーカー界に大きな足跡を残した名車を生んできたマクラーレンの最新作である。



Wは世界=ワールドのイニシャルだ。1はもちろんナンバー1。つまりは世界王者。W1がデビューした10月6日もまた、世界王者に由来する。実はちょうど50年前のこの日、マクラーレンがF1シーンにおいて記念すべき初王者に輝いた。しかもドライバーズ(エマーソン・フィッティバルディ)とコンストラクターズ(M23)のWタイトル獲得であった。

翻ってこの50年で何度も世界王者となったチーム・マクラーレン。今年のチャンピオンシップも最前列で戦っているわけだが、そのプレゼンスをもういちど世界に知らしめ、さらにはスーパーカーブランドとしても世界一を勝ち取るという、W1は意思表示に違いない。

正式発表を前にしてMTCでは世界のごく限られたメディアだけを招き、スニークプレビューが開催された。電子デバイスを全てエントランスに預け、厳重警戒のなか行われたプレビュー、はたしてW1は見た目にも、そしてもちろん中身も“世界一”にふさわしい内容であった。



アンベールされた瞬間は「意外にシンプル」だと思った。フロントマスクは常識的だし、リアフェンダーあたりのデザインはP1によく似ていたからだ。しかもかなりのキャビンフォーワードで、オレンジ色と黒の配色ということもあってか、どこからどう見ても“マクラーレン”にしか見えなかったからだ。

マクラーレンは“人の目を引くためのデザイン”を良しとしないブランドである。だから、そんな第一印象は決して悪いものではなかったけれど、一方で、内心ではすごく驚かされることも期待していたから、少し肩透かしを食らった気分だった。



ところが、じっくり眺めているうちに、その途方もない空力モンスターぶりにだんだんと開いた口が塞がらなくなってゆく。特に黒く塗られた部分は凝りに凝っていて、みれば見るほどに引きつけられた。なかでも印象的だったのがドア周りとリアセクションだ。ドアのデザインはまるでF1マシン。W1ではこれまでのデヘドラル式ではなくアンヘドラル式、要するにガルウィングタイプのドアが採用されたが、それを上げてみると、断面は3枚のパネルから構成され、まるでF1ノーズのよう。リアエンドに至っては巨大なリアディフューザーとアクティヴウィングが「これ以上近寄るなよ」と警告を発しているかのようだ。



このディフューザーを収めるスペースを稼ぐためにパワートレーンを3°傾けた。またリアウィングは後方に300mmも伸びる可変ロングテールである。





レースモードを使えば最低地上高がグンと下がって、強力なダウンフォースを生み出す。高速コーナリング中には最大で前650kg、後350kg、合計1トンものダウンフォースを稼ぐという。



注目のパワートレーンは、新開発V8ツインターボエンジン(レブリミットは9200rpm)に電気モーター+バッテリーを加えたハイブリッドシステムとし、システム総合でなんと1275psを謳う。車重はP1とほぼ変わらず1399kgだから、パワーウェイトレシオは驚異の1.1kg/ps!ちなみに最大トルクも破格で1340Nmというから恐ろしい。



恐ろしいついでに言っておくと、このハイスペックな駆動力全てを新開発の8速DCT(バックは電気式)とEデフを通じて、リア二輪にデリバリーする。マクラーレンはRWDをあくまでも貫いた。これは早く乗ってみたいものだ!

空力と軽量、パワートレーン以外にも語るべきことはまだまだ多い。何しろスピードテールよりも素早く時速300kmに達し、サーキットではセナを圧倒するマシンなのだ。カーボンモノコックはもちろん、シャシーやサスペンション、そして制御システムなど全てを新設計とした。サスペンションシステムなどはF1マシンのようで、インボードタイプとしてマクラーレン初のプッシュロッド式だ。アーム類のデザインも3Dプリントを駆使し最適化を図っている。書けば書くほどに熱くなり、乗りたくなってくるスーパーカーなど久しぶりで、それもまたマクラーレンのアルティメットであるがゆえ、だろう。

P1がデビューしたとき、そのライバルはラ フェラーリとポルシェ918スパイダーのハイブリッド新世代であった。果たして今回はどうか?まずはフェラーリの新型モデルにも注目したい。


文:西川 淳 写真:マクラーレン
Words: Jun NISHIKAWA Photography: McLaren

西川 淳

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