「ORI Heritage Center」Aston Martin 110周年の記念すべき年にデビュー

OSATO Research Institute

オクタン日本版では今まで岐阜県揖斐郡にある大里研究所の様々な活動を取り上げてきた。それはLe Mans 24 時間レースに挑むAston Martin Racingにおける実証研究であったり、歴史を大切にする英国でのConcours of Eleganceのサポートであったり、またシニア層に生きがいを提案するORI Wine Projectだったり。そういった脈々と続く大里研究所の活動の、ある意味集大成とも言えるのがORI Heritage Centerである。

歴史と伝統を引き継ぐ場所として、Aston Martin 110周年にすべてが整った。



ストーリーが繋がっていく


大里研究所(ORI)は予防医学による医療費削減を目指しFPP(パパイヤ発酵食品)の研究を30年続けてきた。これまでに、自然免疫を高め、抗腫瘍効果や慢性炎症を抑えるなどの効果を証明する論文を発表してきた。近年は家族の経済的精神的ストレスの高いテーマ、すなわち認知症予防に力を注いでいる。

臨床研究では、酸化ストレス・抗酸化機能・運動症状・認知機能・脳の血流低下・疲労・不眠等の改善効果が明らかとなっている。また英国Aston Martin社がLe Mans 24時間耐久レースに復帰した2005年からAstonMartin Racing(AMR)のオフィシャルパートナーを務め、レーシングドライバーでの実証研究も行った。

最近は社会の課題として、高齢者の運転免許証返納の義務化の是非が話題になっている。公共交通機関が限られている地方では、運転が出来なくなる結果として外出の機会が減り、気持ち的にも若さを保てなくなるなど問題は深刻である。

AMRのオフィシャルパートナーとして過酷な耐久レースで得られたドライバーの身体的な負荷軽減に関する研究と、FPPの認知機能を改善する効果により、シニアの運転技能維持に貢献できるのではないかと考え、現在ORIは日本と英国のクラシックカーラリーのオフィシャルパートナーとしても活動している。

もう一つの取り組みに「ORI Wine Project」がある。定年を迎えリタイアしたシニアの方々が生きがいをもてる農業。そんな夢のあるプロジェクトこそが認知症の予防につながると考え、10年前、300坪の農地にピノ・ノワールとシャルドネを植え付け、無農薬すなわちBioによる栽培を開始。まずは「夢をもつこと」と、年間10本のワイン作りを目指して始めたが、今ではぶどう畑が一万坪にまで広がっている。数年後には年間数年後には年間1,000本のワインにまで届きそうなのだが、ここで新たな問題が。出来上がったワインをどこに保管したらいいのだろうか。

ORI HeritageCenterの玄関口にはワイン作りに欠かせない木樽が並べられている。敷地は広くクラシックカーイベント等も開催できるほどだ。

新たに創造したORI Heritage Centerは、当初ワインの熟成・保管のためを考えプランがスタートしたが、Heritageというタイトルゆえ、caveとともに、伝統・遺産・継承を柱とした次世代に繋ぐ場所としてその目的は広がった。

ORI理事長、林幸泰氏の妻である淑子氏は、ウィーン国立音楽大学に日本人最年少で入学。音楽の都で学んだ声楽家の経験を活かし、若手音楽家が飛び立つことのできる発信の場としてORI Heritage Centerの活用を考えた。また、林氏は英国で長い歴史をもつブランド AstonMartinの過去から現在への時に触れることが出来る美術館のような芸術と文化の空間を創りあげた。

戦後のAstonMartinコーナーには、同社の歴代工場を代表する3台の車を展示。2002 DB7 Volante by BloxhamFactory、2007 Vanquish S by Newport Pagnell、 2023 DBS Volante Classic by Gaydon。これらは新車時からずっと所有してきた思い出深い名車である。また戦前車のコーナーには 1923 Cloverleaf on Bamford MartinEra、1933 Le Mans on BertelliEra、1937 15/98 Tourer on Southerland Eraと、その時代を代表する車が登場する。

戦前車に合わせ、シャンデリアや家具などは100~150年前のアンティークをイギリスとフランスから準備。1909年製Erard(フランス製)のグランドピアノが古き良き時代のAston Martinの前で110年前の音色を奏でてくれる。そんな時、最初のオーナーが感じた「時空」を、車とともに少しだけ味わえるかもしれない。

家具や照明、ピアノにいたるまで約100~150年前の本物のアンティークで統一され建物とBestHarmony。

1909年フランス製のグランドピアノErard。

ORI Heritage Centerは2023年6月8日に竣工式を行った。今年は建物の熟成期間であり、訪問者はまだ少ないが、それでも車や音楽といった文化に造詣がある方に訪問していただき嬉しい限りである。

最初の訪問客はJaguar Land Rover Classic、VIP Client ManagerであるDr. Matthew Bennett。現在英国で作業が進行している1970 Chassis No.4 Velar(Range Rover prototype)のレストレーションが終わり次第、いち早くORI Heritage Centerでその勇姿を見たいと話していた。

英国Jaguar LandRover社のDr.Matthew Bennettは、ここに歴史あるRange Roverのプロトタイプが飾られることを楽しみにしている。

初めてのサロンコンサートは、バンドネオン・バイオリン・ピアノのトリオ「えばてん」を招いて淑子氏が企画。3人は、麻布高校時代の同級生であり、現在22歳。音楽以外にも才能に溢れる若者たちは、タンゴとジャズを演奏。客席には元日産自動車専務執行役員であり、世界的カーデザイナー中村史郎氏が快く駆けつけてくれた。しかもアンコールにはBig surprise!アマチュアジャズ奏者でもある中村史郎氏自身がウッドベースでセッションに参加。即興にも関わらず息のあった「枯葉」の演奏を、我々だけでなく未来ある若い演奏家に向けてもプレゼントしてくれた。その姿は、とにかくかっこよかった。

初めて開いたサロンコンサートは「えばてん」を招いた。国際的カーデザイナー中村史郎氏もウッドベースでセッション。

2023年最後の訪問者は、Octane UK Chief EditorのJames Elliot氏。彼にとっては初めての日本訪問であり、Tour d'Elegance Japanにも参加。林氏の長女Dr. Makiが、こちらも初めてco-pilotを務めた。ラリーイベント終了後は、オクタン日本版の堀江史朗編集長とともにORI Heritage Centerに。

大里研究所理事長の林幸泰(左)とオクタン日本版編集長の堀江史朗(中)、Octane UK Chief EditorのJames Elliot(右)

James氏はイギリス人であり、クラッシックカーの聖地とも言える英国にて仕事柄、多くの車やガレージなどを見てきているエキスパート。そんな彼から「Aston Martin 110周年の記念すべき年に、車を文化や芸術と融合させたORI Heritage Centerは実に素晴らしい」と、なんとも嬉しい言葉をいただいた。これにて2023年の最高の締めくくりとなった。

大里研究所
www.ori-japan.com
Tel:0585-34-3830


文・写真:大里研究所 Words and Photography:OSATO Research Institute

オクタン日本版編集部

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