美味なる涼を求めて新型プジョー308で信州へドライブ。PHEVの実力や如何に?

Motoki WATASE

普段使いと、たまの遠出をもっともバランス良く使い分けられる車はなんだろうか。電動車両が普及したことで、パワートレインの選択肢は格段に増えたが、システムによって得意・不得意が存在することも、ユーザーに認知されるようになってきたと思う。

近距離移動が得意で、長距離ドライブが苦手なのは、やはり電気自動車(EV)だ(700km超の航続距離を誇るEVも登場しているが、巨大なバッテリーを搭載する車両はそれなりのお値段となる)。対極的な扱いを受けているのがガソリンやディーゼルなどの内燃機関車で、こちらはどちらが得意ということもないのだが、EVと比較すれば得意と言えなくもない。

かつては両者の中間的存在だったハイブリッド車(HV)だが、EVの普及とともに、やや内燃機関車よりと認識されることが増えてきた。代わって中立派の代表格となったのがプラグインハイブリッド車(PHEV)だ。内燃機関を備えつつ、EVより小型のバッテリーを搭載する。HVとの違いを荒っぽく説明すると、走行用バッテリーに外部から給電することができることがポイントだ。

片道10km程度の通勤・通学や買い物であれば、自宅で毎晩充電すればガソリンを使わずに済む。旅行やレジャーなど遠出をするときは、バッテリーの電気がなくなっても、ハイブリッドとして使用できる。近距離でも少なからずエンジンを動かしていたHVに比べれば、日常の使い勝手と経済性に優れる存在だ。

今年の夏は長かった。酷暑がダラダラと続いていた9月の下旬、東京都心の灼熱地獄に比べれば遙かに爽快な山梨・長野へ、夏の終わりにしか味わえない味覚を求め、PHEVで出かけてみた。昨年4月に登場した新型プジョー308は、ガソリンとディーゼル、そしてPHEVの3種類のパワートレインを設定している。

近年のプジョーのデザインは猛々しい。まずは咆哮しているかのような主張の激しい大型グリル。インテリアはメカニカルなパネルや小径ステアリングなど全体的に洗練されているのだが、ハッとするようなインパクトがある。アイドル的なルックスだった時代も良かったが、個人的には近年のこの流れもとても好ましく感じている。





満充電のスタートだったにも関わらず、東京都内であちこち立ち寄っていたらバッテリーを消費してしまい、中央自動車道で調布ICに差し掛かったあたりで、既に308はHVとなった。センターコンソールにあるセレクターで「エレクトリック」「ハイブリッド」「スポーツ」の3つのモードを切り換えられるのだが、2択になってしまった。ハイブリッドモードでは回生による蓄電量はほとんど増えない。スポーツモードにすると貯金が多少できるのだが、明らかに燃費が悪化していることが手に取るようにわかるため、基本的にハイブリッドで走行する。

都内から約1時間半。須玉ICを降りて、水の美しさで知られる北杜市白州町へと向かう。国道20号をしばらく走り、かつて甲州街道の宿場町だった台ヶ原宿の街並みにあるのが、信玄餅で知られる「台ヶ原金精軒」だ。

もともと台ヶ原宿の旅籠(旅館)だった金精軒は、甲府市太田町にある金精軒本店からのれん分けするかたちで、明治35年(1902年)に創業。尾白川の名水と豊かな自然を活かした伝統的な製法で、お菓子作りが行われている。信玄餅やきんつばなど手作りのお菓子が提供されている。

台ヶ原金精軒
山梨県北杜市白州町台ヶ原2211
https://kinseiken.co.jp


台ヶ原宿には酒蔵やカフェなど、伝統的な宿場町の街並みが残されている。

なかでも有名なのが、夏の間に店舗でしか食べられない幻のお菓子「水信玄餅」。毎年6~9月の週末しか販売されない商品で、消費期限はわずか30分。わずかな寒天で名水を限界まで含ませているため、すぐに加水分解してしまうのだ。

この幻の銘菓の存在を知ったのが8年前。ようやく口にすることができた。まずきな粉をかけて、次に黒蜜をかけるのだが、その瞬間から加水分解が始まってしまう。片手にカメラを持ちながら黒蜜をかけて、シャッターを押したら即、口に。

夏季限定商品の「水信玄餅」(540円。白州の名水つき)。韮崎店と「富士吉田金精軒 富士茶庵」でも販売。

味わいは想像していたよりも「水」だった。本当に水を食べているような不思議な感覚なのだ。弾力性は思っていたよりも少なく、スプーンの先はあまり抵抗を受けることなく入っていく。清涼感がすばらしく、確かにこれは夏にピッタリの味わいだ。

記事が公開されるときには販売終了している商品を紹介して申しわけないのだが、かわりに「生信玄餅」が販売されている。信玄餅よりちょっとふっくらとした、つきたてのモチのような食感。こちらは消費期限が3日なので、おみやげとしてもピッタリだ。

ここからは一般道を通って、長野方面を目指す。1.6Lの直4ターボエンジンは、ワインディングでも十分なパワーを発揮する。平坦路や上り坂はハイブリッドモードで、下り坂はより回生を稼ぐためにスポーツモードに切り替えて走行していると、若干だが「貯金」もできるようになった(わずか4km分だけれども!)。

全幅が1850mmという、このクラスにしてはかなりワイドなボディだが、運転していてそれほど大柄な印象は受けない。車庫入れなどでは取り回しが厳しいケースもあったが、慣れの問題といえるレベルだ。むしろ、床下にバッテリーを積んでいるにもかかわらず、余力十分のラゲージサイズなど、スペース効率の部分での恩恵が大きいと感じた。



「ハイブリッド」モードではメーターの基調色がブルー、「スポーツ」モードはグリーンとなる。

下道を走って2時間半。長野県の北東に位置する小布施町に到着した。江戸時代後期に多くの豪農・豪商が生まれ経済的に発展した小布施は、現在も歴史的な建物が数多く残っている。近年では観光地として人気を集めており、近隣にはリンゴやブドウなどのフルーツ農園やワイナリーなどが存在する。

なかでも小布施を代表する特産品として知られるのが栗だ。小布施中心部には栗菓子を扱う店が数多く存在する。9月~10月がまさに旬の時期で、栗を使った料理やお菓子を目当てに訪れる人も多い。

中心部にある「小布施堂」の本店へ。趣のある暖簾をくぐると、ずらりと栗菓子が並ぶさまは圧巻のひとこと。ようかんに生落雁、最中やどらやきなどの和菓子だけでなく、モンブランやケーキ、アイスクリームといった洋菓子も揃っている。

今回は清涼感が目的なので、まずは「新栗くりかん」を食べてみた。プルンとした味わいの水ようかんなのだが、栗あんが使用されていて、どっしりとした濃厚な風味が味わえる。こちらは10月下旬ごろまで販売しているという。

小布施堂 本店
長野県上高井郡小布施町808
https://obusedo.com


「新栗くりかん」は1個486円、3個入で1642円。店舗のほか、通販でも購入可能。

帰路を含めて308を800kmほど運転したが、トータルの燃費は22.8km/L。満充電からスタートしたこと、ほとんど渋滞の影響を受けなかったことを加味しても、上々の数値だったと思う。シートはホールド性が高く、疲労感が少なかったのが印象的だった。

もっとも重要視していた乗り心地だが、ちゃんと「猫足」を感じられる仕上がりになっているのが嬉しい。特にピッチングが適度に抑えられていて、細かい段差のいなし方が上手い。これもサイズアップの効果か、高速道路では安定感があって好印象だった。





改めて普段使いと遠出のバランサーとして、PHEVはやはり秀逸であることが再認識できたツーリングだった。一家に1台という家庭はもちろん、複数台所有の家庭でも十分にメインカーにない得る存在だと思う。


文・写真:渡瀬基樹 Words and Photography: Motoki WATASE

渡瀬基樹

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