新車時価格の2倍以上で落札!超レアな「トミーカイラのGT-R」がオークションに登場

Bonhams

オークションは需要と供給を反映する場所であり、「時価」が定まる場所である。そして、周囲がいくら“高い”とか“安い”とか評しても、オークション落札価格がその時々における“適正値”なのだ。

過去の相場を知る人間にとってみたら昨今、日本の絶版スポーツカーの値上がりは異常に感じる。だが、それも需要と供給の“結果”であって、たとえ値上がりを見越した投機需要だとしても、それだけ人気がある、ということ。

去る8月18日、モントレー・ウィークにクエイルロッジ(モントレー近郊の高級ゴルフ場)にて併催されたボナムズのオークションに1996年式日産スカイラインGT-R(R33型)が出品された。スカイラインGT-Rというだけでも値上がりが激しいのに、“トミーカイラがチューニングを手掛けた16台のコンプリートカーのうちの1台”というレアさも手伝って、注目されていた。



トミーカイラが手掛けたスカイラインGT-Rには“松竹梅”が用意されていた。「ルックR」(588万円)、「ベーシック」(638万円)、そしてコンプリートカーの「フルスペックR」(758万円)だった。ルックRはフルスペックRのエアロパーツを装着し、機関系や足回りはノーマルのまま。ベーシックはエクステリアこそノーマルのままだったが、機関系や足回りをフルスペックRに仕上げたものだった。

フルスペックRにはトミーカイラのオリジナル・エアロパーツが装着されるほか、エンジンにはオリジナル・タービン、ECU、マフラー、マルチカップスーパーインタークーラーなどを装着し、最高出力は400馬力以上が謳われていた。





インテリアは300km/hスケールメーター&カーボンメーターパネル、トミーカイラ刺繍入りのレカロシート、クイックシフトの5速MTにはオリジナルのシフトノブも奢られていた。特筆すべきはリアサスペンションで、サーキット走行と公道走行を両立させるために「ダブルスプリングシステム」を採用し、275/35タイヤと9.5JJ×18インチホイールとともにセッティングが煮詰められていた。







オプションのブレーキシステム、カーボンコンポジット・ラジエーター等を組み入れればほとんどグループAマシン、と評されていたマシンである。とはいえ、日本では“そこまで”高くは流通していなかった。2017年頃、トミーカイラのスカイラインGT-RフルスペックRの中古車を見かけたことがあるが、500万円弱で取引されていたほど。

この8年、スカイラインGT-Rだけではなく、日本の絶版スポーツカーの価格は目も当てられないほどの勢いで取引価格が上昇してきた。それこそ、もはや新車時価格をも上回る勢いで取引され始めているものも珍しくない。かくいうトミーカイラ・スカイラインGT-RフルスペックRの予想落札価格は7万5000ドル~10万ドルだったが、なんと13万4400ドルで落札された。

現在の為替レートだと約1980万円である。



オークション会場は司会進行役、開催地、参加者などによって“盛り上がり方”が変わる。そして、モントレー・ウィークは世界から車好きが集うだけでなく、クラシックカーレースやコンクールデレガンス参加者は富裕層が多い。お祭り気分の雰囲気のなか、軽快な口調で入札を促す司会進行役のマイクパフォーマンスに高揚し、入札が活発だったのだろう。

新車時の2倍以上という落札価格に合理的説明はしようがない。ただ、それだけ「欲しい」と思ったオークション参加者が居た、という事実があるのみ。と同時に、このような評価をされる場所に辿り着いたトミーカイラ・スカイラインGT-RフルスペックRは、新しいオーナーの元で大切に維持され、幸せな余生を送れることだろう。



日本ではメーカー、もしくは“ワークス”のコンプリートカーなら評価されるケースもある。しかし、チューナーによるコンプリートカーがここまで評価される土壌はない、と言っていいだろう。その点、トミーカイラは先陣を切ったカタチになった。

今後は日本の名物チューナーによるコンプリートカーも、海外からの引き合いが強まるかもしれない。

文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司(自動車王国)

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