人生を豊かにする予防戦略。それは美しいクラシックカーを大切に思う気持ちのようだ

Osato Institute

心をくすぐる魅惑の音色を奏でるV12エンジン。現行のアストンマーティンV12エンジンは、1999年にアストンマーティン・ラゴンダの歴史として初めてDB7 Vantageに搭載された。このエンジンは、レース界で有名なCosworthによるものである。そして、DB7シリーズはアストンマーティン歴代最高のデリバリーを記録し、アストンマーティン社は飛躍的な革新を遂げ、その礎を築き上げたのである。2003年、Gaydonに新工場建設によりBloxham工場は閉鎖され、DB7シリーズの終わりとともにDB9へ託された。

DB7の有終の美を飾るため、Bloxham工場最後のVantageVolanteのラインオフに訪れたのが、本誌でも度々登場している大里研究所(ORI)の林ファミリーだ。それから20年の歳月が流れ、Gaydon工場にて生産されているアストンマーティンV12エンジンの最高峰モデルDBSも、その終わりを迎えようとしている。

アストンマーティンDB7ヴォランテは、その最終工程において製造された車だ。内外装や幌のカラーリングも特別に注文したものであり、それを家族で視察することで職工との絆が深まったという。

このV12気筒エンジンはアストンマーティン製であり美しいサウンドを奏でてくれる。



COVID-19によりGaydon工場の訪問は叶わなかったが、構想から2年の歳月を経て、アストンマーティンDBS Volante Classicが完成し日本の道を走ることができた。V12エンジンの一つの時代を築き上げたアストンマーティンに敬意と感謝を捧げ、今月8日に完成したORI Heritage Centerでは、戦前車とともにその歴史を肌で感じることができる。

英国 Gaydon工場にて生産されているアストンマーティンV12エンジンの最高峰モデルDBS。ついに製造が中止されることとなるが女性的なDB7のカラーリングをベースに、男性的なDBSのために林理事長の奥様がカラーをアレンジされている。

UKゲイドン工場での最終チェック状況。ヴォランテならではのシートバックをウッドにするこだわり。

さて、オクタン読者ならば、Immun’Âge®(イミュナージュ)の名を目にした方もいるのではないだろうか。アストンマーティンレーシング(AMR)のオフィシャルパートナーとしても知られるこの日本生まれのブランド。耐久レースなど脳と身体を酷使するレーシングドライバーやチームの健康管理に活用されている。 Immun’Âge®はORIにより開発され、パパイヤを独自の技術により発酵させた自然な甘みが特徴的な食品。臨床研究の場ではFPP(Fermented Papaya Preparation、パパイヤ発酵食品)と呼ばれている。そこに、新たなニュースが飛び込んできた。

今年4月に論文として発表された臨床研究では、FPPによりパーキンソン病患者の抗酸化能、酸化ストレス、運動症状や認知機能の改善効果が明らかとなったのだ。食品であるFPPによるパーキンソン病に伴う症状の改善は、患者にとって朗報となる知見であろう。この最新の研究成果は、ニューズウィーク日本版(2023年5月31日付)にも取り上げられており、根本的な治療薬のない疾患への予防や進行抑制に対する注目度がいかに高いかがうかがえる。

ドライバーやトップアスリート以上に、脳へのエネルギー供給や、酸化ストレスのダメージから素早い回復を必要とするのが、認知症患者もしくはその予備軍となる人たちだ。脳は、身体の中でも特に酸化ストレスに対して脆弱な組織であり、ダメージを受けた神経細胞を新しい細胞に取り替えることができない。そして、酸化ストレスは、アルツハイマー病やパーキンソン病の発症や進行の原因の一つと言われる。また、身体は、年齢を重ねると酸化ストレスを打ち消す抗酸化能が低下することが知られている。だからこそ、抗酸化能を維持し酸化ストレスを抑えることは、脳の老化すなわち神経変性疾患の予防戦略になり得るのだ。

三大認知症と言われるアルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・レビー小体型認知症は、認知症全体の約8割を占めているそうだ。FPPは、アルツハイマー病患者の酸化ストレスの改善と、血管の柔軟性と拡張に働きかける一酸化窒素の産生を増加すると報告されている。また、脳の血流低下により認知症のハ
イリスクグループとして知られる電磁波過敏症患者では、血流と認知機能が改善したことから治療法として特許を取得している。これらの成果は、FPPによる早期介入が酸化ストレスに起因する脳の老化を予防するツールとして役立つと考えられる。

そして、この FPPの力が最大限発揮される場の一つが、実は、脳や身体が長時間のストレスにさらされる耐久レースなのである。高速スピードでマシンを駆るレーシングドライバーは、常に気を抜けない緊張下が続く中でベストな判断を下さねばならず、脳では大量のエネルギーが消費され、エネルギー源となる糖が不足し車でいうガス欠のような状態になる。また、レース中のレーシングドライバーは、身体をサビつかせる活性酸素による細胞へのダメージを蓄積させる酸化ストレスも増える。つまり、いかに効率よく脳にエネルギーを供給し、酸化ストレスのダメージから素早く回復するかがレースを制するカギなのだ。

FPPは、糖を主成分とするため素早く脳へエネルギーを届けることができるだけでなく、細胞のエネルギー源となるATPの産生を促進することが臨床研究で認められ、特許を取得し、インフォームドスポーツの認定も受けている。そのため、脳や身体を酷使し、最高のパフォーマンスを求められるAMRクルーの体調管理に活用されているのも納得である。

脳の老化防止や認知機能の維持は、年齢を重ねても車の運転を楽しみたいドライバーにとって喫緊の課題であり願いでもある。

クラシックカーが現代においても美しく走ることができるのは、やはりオーナーによる常日頃のメンテナンス(予防)を欠かさないからである。オーナーが手入れを怠らず大切に続けているからからこそ、時を経ても色褪せない姿を魅せてくれる。人も同じように、時を重ねても“動ける”状態であるためにはメンテナンスが必要ということだろう。

どんな最新の車もいつかはクラシックカーになる。誰もが老化は避けることはできないが、年月を重ねても輝きを保つカギが「予防」なのである。自身のライフスタイルに合った車と出会い楽しみ続けるためには、その人その人の歩むスピードに合ったサポートが大切だ。

加齢に伴い低下する脳へのエネルギー供給や代謝を高めることは、認知症予防の観点でく自由にドライブするツールとして、FPPはユニークな戦略と言える。今後も、FPPの更なる活用や研究の進展を期待したい。


文・写真:大里研究所 Words and Photography:Osato Institute

文・写真:大里研究所

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