知る人ぞ知る「ヴィーズマン」がブランクを経て復活!妥協は一切ナシの2シーターオープン

Wiesmann

ヴィーズマンは1988年、マーティン・ヴィーズマン、フリートヘルム・ヴィーズマン兄弟が設立した、ドイツの新興自動車メーカーだ。もとも家業として自動車ディーラーを営んでいたヴィーズマン一家、いつしか自分たちの車を作りたい、という夢を抱いていたのが息子兄弟であった。

そんなヴィーズマン兄弟が、チューニングカーの祭典として有名な「エッセン・モーターショー」にてひらめきがあったそうだ。エッセン・モーターショーで展示されていた車両は、作ろうとしている車の“意図”は理解しつつも仕上がりがイマイチだったり、中途半端に古い技術を用いていたり、とチグハグな雰囲気を感じ取ったのだという。

ヴィーズマン兄弟は、品質を第一に掲げ“1960年代の車両デザインに今の技術”をコンセプトにすることを1985年に思いついた。そして、自前ではどうしても製作できないエンジンをBMWに頼ることにした。もちろん、BMWがすんなりOKするわけもなく、きっと面白いエピソードがあるに違いない。いずれにせよ、ヴィーズマン兄弟はBMWの技術部門の責任者を口説き落とすことに成功した。M3のエンジンまで調達できたのは…、凄い話だ。

パワフルなエンジンはBMWから供給を受け、ヴィーマンのロゴには「ヤモリ」が採用された。路面に走りつくような走り、をイメージしてのこと。アウディが4輪駆動システム「クワトロ」のイメージロゴに採用するよりも前の話かもしれない。ちなみにヴィーズマンの工場の屋根部分にはヤモリのオブジェが文字通り、乗っかっている。

筆者が調べたところによると、1993年から2011年までに1400台のヴィーズマン車が生産され、差別化を求める富裕層にはウケた。「年間1200台は販売できるポテンシャルがあるが、とりあえず年産250台体制に引き上げたい」とヴィーズマン兄弟は鼻息を荒くしていた。しかし、2014年に経営破綻…。生産拡大に向けた新工場建設のための借入や投資が引き金となったのだろう。

しばしのブランクを経て、2020年には現オーナー兼CEO、ロイーン・ベリーがヴィーズマン社を購入した。新体制のもと去る3月8日、先日発表された「プロジェクト・サンダーボール」からインスピレーションを得た、3つのユニークな限定版デザインコンセプトを公開した。

そもそも「プロジェクト・サンダーボール」はクラシックな2シーター、後輪駆動、軽量のカーボンファイバー構造が特徴である。エンスージアストが求めるパフォーマンス、レスポンス、エンゲージメントを提供することを約束する。



2つの電気モーターをリアミッドに搭載し、総出力500kW(680hp)、最大トルク1,100Nm、0-62mph(0-100km/h)加速2.9秒を目標としている。モーターを駆動するのは800ボルト/92kWhの最新鋭のリチウムイオンバッテリーパックで、最大300kW(DC)の超高速充電に対応する、という。ちなみにヴィーズマンが目指している航続距離は500km(WLTP)と内燃式エンジンを搭載したスポーツカー並み。

studiokurbosとのパートナーシップのもと、ロイーン・ベリーCEOがクリエイティブなプロセスを主導し、グローバルデザインスタジオとのコラボレーションによって実現したもの。そして、新型車に無限に対応できるオーダーメイドの可能性を示すことを目的としている。

限定デザインコンセプトは、最先端の電動パワートレインと時代を超えたデザイン、そして熟練のクラフトマンシップが一体となった、ヴィーズマンの新しい方向性を象徴している。最高級の素材と時代を超えたデザインを融合させ、比類ないディテールの豪華なキャビンを誇る。



肌ざわりの良い滑らかで温かみのあるレザーは、完璧に仕上げられたカーボンファイバー、ハンドシェイプのウッドパネル、プレミアムメタル仕上げとともに、パワフルで贅沢な体験を作り出す。インテリアとエクステリアの間にシームレスな感触があり、ブランドを象徴する目立つグリルや「クラムシェル」と呼ばれるボンネットの開閉に至るまで、細部に至るまで妥協は一切ない、という。



ヴォ―ズマン車のオーナーになれば、家族の一員としてブランドに迎え入れられ、極めて高級で、極めて稀な所有体験を味わえる。オーナーは工場に招待され、設計と製造プロセスのすべての段階を通じて、自分の車が目の前で芸術的に作られることを見守ることができる体制が整えられている。

もはや工業製品ではない、というのがヴィーズマンの売り文句。

初年度生産分はすでに完売しており、2024年には納車が開始される予定だ。価格は30万ユーロからで、今までよりもさらに高級セグメントを狙っている。なお、次の生産ロットに興味がある人は、ヴィーズマンのオフィシャルサイトでウェイティングリストに登録することが推奨されている。



なお、新生ヴィーズマンのEV用パワートレインは、ドイツの新興スポーツEVメーカー、ローディング・オートモービル社(2008年創業)からの調達だそう。ニューカマ―が続々と登場するEV、面白い時代の幕開けに我々は直面している!

文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司(自動車王国)

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