750馬力のモンスター級 スーパースポーツカーを維持するためにかかる費用は?

 Photography:Matthew Howell


 
いわゆるラニングコストもOne-77オーナーにとっては悩みの種といえる。高速道路をおとなしく走っている場合を除けば、燃費が3.6km/リッターを越えることはまずないだろう。燃料タンクの容量は21ガロン(約95リッター)だが、それでも給油はこまめに行わなければならないはず。それでいて実用性も決して高くなく、ラゲッジルームはないも同然。幅が335mmもあるPゼロ・コルサは温度が低い状態が苦手で、しかもボディの全幅が広いから地方の曲がりくねった道はなるべく避けたほうが無難だ。それと低い位置にマウントされたリアディフューザーにも特別な注意が必要。なにしろ、ひとたびダメージを負わせると、パーツ全体を交換しなければいけないからだ。
 
そうはいっても、最高出力:750bhp、最高速度:220mph、車両価格:140万ポンドのモンスターを走らせるのだから、このくらいの負担は当然だろう。それでもOne-77をこよなく愛するオーナーたちは思う存分ドライブを楽しんでいるようだ。「ヨーロッパ各地をOne-77で旅しているお客様が何人もいらっしゃいます」アストンマーティン・ワークスでコマーシャルディレクターを務めるポール・スパイアーズはそう語る。「間もなく5万kmを迎える車両もあります。また、多くの距離を走る車両ほど調子はよくなる傾向が見られます。きっとOne-77には日ごろからの運動が必要なのでしょう」


 
アストンマーティン・ワークスが誰よりも深くOne-77について理解していることは間違いない。「30台以上のOne-77が世界中から集まってきて、ここでメンテナンスを受けています。また、私たちのスタッフが各地に飛んで出張サービスを行うこともあります」 "ワークス" にモータースポーツ畑の出身者が多いことも、One-77のオーナーたちが定期的にサーキットを訪れて走行するひとつのきっかけになっているようだ。

「サーキットで走らせても非常に楽しい車です。あるオーナーはポールリカールを文字どおり1日中走っていらっしゃいました。あのときは本当に大変な量のガソリンを給油されていましたね」とスパイアーズ。

多くのスーパースポーツカーが過給エンジンやハイブリッド・システムを採用するなか、One-77はパワフルで高回転を得意とする自然吸気エンジンの魅力を余すことなく体験できるモデルとして長く語り継がれることだろう。現在、アストンが開発している次世代のハイパーカーは、One-77とは別種の生き物となると見られる。それが、One-77よりも速く、スポーツドライビングにはある種のチャレンジが求められるモデルであることは間違いない。それでも、One-77のようにエキサイティングなスーパースポーツカーが今後、二度と現れないこともまた、火を見るよりも明らかなように思う。

編集翻訳:大谷 達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Peter Tomalin

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