「本物」の低価格版ポルシェ911として誕生したモデルとは?

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初期の911は、先行モデルの356よりはるかに高額になってしまったため、ポルシェは1965年に低価格モデルとして4気筒の912を発売した。その912の代わりに"本物" の低価格版911として1967年に登場したのが911Tだ。"T"は「Touring」(ツーリング)の頭文字である。
 
コストカットのため、シリンダーヘッドはアルミとスチールによるバイラル構造ではなく鋳鉄製に。ウェバー製キャブレターは小型のもので、低い圧縮比もあって2.0ℓエンジンの出力は110bhpに下がった。アンチロールバーは省略、ブレーキもベンチレーテッド式ではなくソリッドディスクだった。内装のトリムも簡素なもので、カーペットはフェルト状。当初はホイールもスチール製が標準だった。
 
「911Tはエンジンの仕様も低く、以前はちょっと"ヤワ"なイメージでした。でも日常使いには最高です。トルクが太く、しかも扱いやすい」とアンディー・プリルは語る。
 
1969年には2.2リッター125bhpのエンジン(燃料噴射ではなくキャブ)とベンチレーテッド・ブレーキを得て、911Tの格は一気に上がった。だが、それが"T"のピークだった。1972年になると、911Sが190bhpとなったのに対し、911Tの出力は130bhp止まりだったのである。
 
ただし、アメリカ向けの911Tだけは、1972年に燃料噴射式となった。このモデルは911T/Eとも呼ばれる。このため、ほかの地域仕様より出力が大きく、140bhpだった。
 
キャブレター仕様のエンジンのほうが、燃料噴射式のものより音がいい。それだけでも911Tの購入を検討する十分な理由になる。その上、人気の高い"S"に比べて安い。プリルはこうアドバイスしている。「カラーによっても違います。ベージュやダークブラウンは、シルバーやブルーほど人気がありません。価格は3万5000ポンドくらいからで、特別な車になると、最近7万ポンドを超えたものもあります」

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation:Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Philip Raby and Robert Coucher

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