初代オーナーはロッド・スチュワート|ヒストリーに付加価値が加わったフェラーリF50の落札価格は?

Collecting Cars

オンライン・オークションサイト、Collectingcars.comに出品されている1997年式フェラーリF50が自動車ニュースを賑わせている。走行距離は1万998マイルで26年間の走行距離と考えれば少ないが、この手の車として話題になるほど少ないわけではない。F50は349台限定という点では希少な1台ではあるが、「255台目」と言われても特筆すべき点ではない。ボディカラーはイエロー、ブラック、レッド、シルバー2色が設定されていたが、この車両はいわゆる“カタログ色”に過ぎない。



にもかかわらず、この車が注目されたのは、初代オーナーがイギリスのロック・ミュージシャン、ロッド・スチュワートだったから。ロッド・スチュワートといえば長年、スバル・レガシィのテレビCMに出ていたが、保有していた車はスーパーカーだった…

たった、それだけでも“ヒストリー”として付加価値になるのだから、クラシックカー・オークションの世界は面白い。



F50はいわゆるスペチアーレと呼ばれる限定車で、フェラーリ創立50周年を祝ったものだった。288GTO、F40とターボモデルが続いていたが、F50は1990年のF1マシン由来の自然吸気12気筒エンジンを搭載していた。F1マシンと市販車を橋渡しする究極の“クロスオーバー”を謳っていたのが面白い。



F1マシンのような構造をしており、カーボンファイバー製パッセンジャーセルにフロントサスペンションを直接マウントし、前方に伸びるチューブラーサブフレームにラジエーターや補器類が配された。そして、エンジンはカーボン製パッセンジャーセルのリアにこれまた直接マウントし、トランスミッションとリアサスペンションが配された。当時のF1マシンさながらの作りで、公道を走れるF1マシンと呼ぶにふさわしかった。





当該のF50は1996年にマラネッロで組み立てられ、同年、イギリスのマラネッロ・コンセッショナリーズという会社が輸入した。ちょっと面白いのは、1997年7月に初めてロッド・スチュワートの名義に登録された、ということ。この手の限定車は発表と同時に売り切れが当たり前で、すぐにオーナーの手に渡ると思っていたが…、ロッド・スチュワートは文字通り世界を駆け巡るミュージシャンゆえに、なかなか書類のやりとりができずに登録できなかったのだろうか?

2002年には中東ドバイへ渡り、2007年に再度、イギリスに舞い戻ってきたこの個体。2002年にはイギリスのフェラーリ・ディーラーにて整備された履歴があるが、その時の走行距離はわずか3397マイルに過ぎなかった。ロッド・スチュワートが5年間に走った距離なのだろう。2014年にはフェラーリ・クラシケを取得している。フェラーリ・クラシケ取得前、この車両はなんとグレーに塗装され、内装の本革もオリジナルから変更されていたという。なお、ドバイへは船便ではなく、航空便で渡っていることから相当、裕福な方が購入し自分好みにカスタマイズしたのだろう。イギリスに戻った際、オリジナルのレッド(ロッソコルサ)とオリジナルの内装色に戻された。





現オーナーは2年半所有し、今回のオークション出品へと至った。ちなみに今までのオーナー数、なんと6名もいらっしゃるそうだ。「ワンオーナー」が売り文句の日本の中古車業界からはちょっと驚きのオーナー数かもしれないが、約4年に1度、所有者が変わってきた。まるでオリンピックのような存在だ…



11月13日がオークションの入札期限で、36件の入札があり294万500ポンドで落札された。日本円に換算するとなんと約5億5500万円!「ロッド・スチュワート号」であった、というプレミアムか!? と思ったが、米ドル換算にすると約360万ドル。今年8月、走行距離7000マイルのF50が424万ドルで落札されていることを鑑みると、現在の相場から逸脱したものではなかった。

逸脱しているのは…、世界通貨に対する日本円の価値の低下だった。


文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司(自動車王国)

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