奇抜なデザインをもつ、中間車種になるべく生まれた1台

PEUGEOT CITROEN JAPON

アミのつづりはAMIで、これはフランス語で「友だち」を意味する。「神」になぞらえたDSに続いて、ウィットのあるネーミングが、シトロエンらしい。ただAMIもDSと同じように、もともとはコードネームに由来しており、AMであった。Aは2CVのコードネームで、その派生モデルであることを表し、MはMilieuの頭文字で、「中間」を意味する。

アミは、2CVとDSの中間車種になるべく生まれてきた。2CVとDSの格差がありすぎて、シトロエンはその間を埋めることが急務になっていたのだった。
 
ただ急務なわりには、アミはDS 発売から6年もたった1961 年に市場に投入された。シトロエンにふさわしい先進的な設計にしようとして手間取ったのもその一因であり、紆余曲折ののちアミは2CVの機関を流用する形で市販化された。エンジンは空冷フラットツインで、ただし排気量が602ccまで拡大され、当時2CV AZが425ccで12psだったのを22psまで強化し、最高速も80km/hから105km/ へと向上していた。装備類も一人前の自動車らしく充実し、快適になっていた。


 
アミで目をひくのはそのスタイリングである。まずルーフ後端のクリフカットデザインが印象的だ。これには追加の中間車種ならではの事情があり、コストを抑えるためにホイールベースと全長をほぼ2CVと同じままで、新しく流行し始めた3ボックスセダンの形状をとろうとしたことが要因である。短い全長でトランクリッドの開口部を確保するためには、リアウィンドウを逆反りにしてリアデッキの長さを稼ぐ必要があったのだ。ただしクリフカットは、当時アメリカで流行の兆しがあった。アミをデザインしたのは、DSに続いてフラミニオ・ベルトーニであり、彼はこの頃アメリカの動向を注視していたのだ。
 
デザインで次に気になるのは、フロントマスクである。これもアメリカ流といえるが、ただしアメリカ流のなかでもかなりあくが強い流派だというしかない。ちなみに角型ランプは、フランスのシビエ製で、当時まだめずらしく、先進的だった。
 
ベルトーニのこのデザインは、デザイナー評論においてほめ言葉の逆の意味でつかわれる「バロック」と言われることがある。随所に光る良さがあるいっぽう、たしかにアミは奇をてらったデザインといえる。ただ2CVとDSの間に割って入るのであれば、奇策のないデザインでは埋もれてしまったに違いない。

文:武田 隆 Words:Takashi TAKEDA

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事