去る9月26日から29日にかけて第28回目となる「モナコ・ヨット・ショー」が開催された。モナコで開催されるF1グランプリのスタート地点としてお馴染みのエルキュール港には、新艇、中古艇問わず約120艇が並び新たなオーナーを待ち構えていた。英語で用いられる「ヨット」は我々が思い浮かべてしまう小型の帆船ではなく、「遊行船」の総称だ。出展者はヨットの受注や販売を狙うメーカーやブローカー、ヨット部品メーカー、マリン・グッズ・メーカー、そしてヨットのチャーター会社など総勢500社以上。
エルキュール港には小さなヨットでも全長20m以上のクラスが並んでおり、だんだんと見ている側の感覚が狂ってくる。30mクラスは"当たり前"、50mクラスで"まぁまぁ"、80mクラスでようやく"感心する"という恐ろしいマジックにかかってしまう。下世話な話ではあるが、一般的な相場として30mクラスが1000万ユーロ〜、50mクラスが3000万ユーロ〜、80mクラスが1億ユーロ〜、といった具合だ。
もちろんメーカー、年式、ヨットの内外装のグレードや手がけたデザイナーなどによっても価格は変わってくる。先日、日本を横断した台風を避けるために京都府・宮津港に緊急寄港した、ロシア人大富豪が所有する全長119mのヨットは、フィリップ・スタルクがデザインを手がけたもので3億ユーロは下らない。ちょっとしたトリビアだが、全長100m以上のヨットは世界に52艇しか存在しないそうだ・・・。
展示されているヨット、実はエルキュール港だけにとどまらない。いわゆるVIP顧客にはテンダーボートがエルキュール港に迎えにきて、沖合に停泊しているヨットまで連れて行ってくれるのだ。その数、100艇はくだらないだろう。なお、来場者はヨット・ブローカーやヨット・オーナーの資産管理会社の人間が多かった。ヨット・オーナーもちらほら見かけはしたが、大富豪ともなると資産管理会社に任せるケースが多いようだ。
「船で得られる喜びは買った瞬間と手放した瞬間」とまことしやかに語られているが、維持するのは相当大変なことらしい。またまた下世話な話だが、ざっくりと維持費を聞いてみた。すると50mクラスのヨットの場合、年間の整備費が100万ユーロ、乗組員の給与が150万ユーロ、停泊料が35万ユーロ、保険が25万ユーロ、そのほか燃料代がかかるそうだ。
ちなみに"満タン"は35万ユーロほどらしい。オーナーが利用しない期間は、チャーター会社 に"貸出"することで少しは稼げるようだが・・・、維持費をカバーできるレベルではないそうだ。もっとも、維持費に目くじらを立てるような人間は、そもそもこのクラスのヨットを所有しないのだろう。会計処理の面で考えてみれば、ヨット自体は償却資産となるし、維持費も経費計上できる。ただ、それだけの"稼ぎ"がないとできないことで、いずれにせよ凄い話だ。
この手の展示会につきものなのが、夜な夜な繰り広げられるパーティだろう。パーティは展示中のエルキュール港に停泊中のヨット、近隣のホテル、沖合に停泊中のヨット、とロケーションは様々。シャンパンやワインこそふんだんに振る舞われるが、筆者は空腹が満たされることがないフィンガーフードに"終わったら何を食べよう?"とばかり考えていたことを告白する。なお、積極的に話しかけてくる人ほどヨット・ブローカーで、こちらから話しかけないと語らない、静かに飲んでいる人ほどヨット・オーナーだった。ふと"沈黙は金"という格言を思い出した瞬間でもあった。
Text&Photo:古賀貴司(自動車王国)
ホテル・ド・パリのバルコニーから撮影した、エルキュール港にはギッシリとヨットが並ぶ。港の周りは歩けるが端から端までは約30分かかる。というわけで"渡し船"が運航されている。また、沖合に停泊している"迎え"も混在しており、思いのほか港内も混雑している。
内外装、いかようにでも仕上げられるのは言うまでもあるまい。最上階部分にはジャグジーも完備している。もっと大型のヨットもなれば、ヘリポートがついているものまである。なお、港によってはヨットが大きすぎることもある。その場合、小型のテンダーで港へ上陸する。
ヨットショーの会場には車の展示も行われていた。なかでも筆者の興味を惹いたのは、ブラバスのクラシックカー部門がフルレストアを施した、M・ベンツ300SL。そのほかベントレー・ミュルザンヌをクーペにしたチューナーや、ランボルギーニのラットモービルなどもあった。
M・ベンツとのコラボレーションによって生まれた、シルバーマリン社のアロー460グラントゥリズモ。全長17mのテンダーボートだが、その値段は270万ユーロ。ウィンドウラインは、Sクラスクーペを彷彿とさせるラインが描かれている。なお、エンジンはヤンマー製。
まるで漁船軍団の見間違えるほど、数多くのヨットがモナコ沖合に停泊していた。テンダーボートがエルキュール港まで迎えにして、お目当てのヨットまで運んでくれる。沖合でテンダーボートをヨットに後ろ付けして安定させるのは、波の流れもあるのでかなり難しい。
ヨット関連部品メーカーやマリングッズメーカーの出展は興味深かった。大型ヨットで遊ぶアイテムとして、小型潜水艦が展示されていたのには、ただただ笑ってしまった。また、船の動きに合わせてベッドが動く仕組みを持つ、船酔い防止ベッドには感心した。
夜な夜な、エルキュール港に設けられたブースだったり、近隣ホテルだったり、停泊中のヨットではパーティが催される。フレンドリーに話かけてくる人ほど、ヨット・ブローカー多い。守秘義務があるようで、固有名詞ほど出てこないが、色んな話を教えてくれる。
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