マセラティ110周年をコンコルソデレガンツァ・ヴィラデステで祝う

Shinichi EKKO, BMW AG

ペブルビーチと並んで世界で最も権威あるといわれる自動車コンクールデレガンス、コンコルソデレガンツァ・ヴィラデステが、2024年5月24~25日にイタリアはコモ湖畔にて開催された。



今年は土曜日(土曜日は限られた関係者やメディアのみが参加できる)の参加者投票による特別賞典“コッパ・ドーロ”にマクラーレンF1が選出された。これまでラルフ・ローレン氏のブガッティ57SCアトランティーククーペといったクラシックの頂点ともいうべきモデルが選ばれていたことを考えると、今回のいわばヤングタイマーの選出は驚きを持って受け止められた。ちなみにベストオブショーは優雅なスタイリングの1932年アルファロメオ8C2300フィゴーニが選ばれた。

さて、今回はマセラティ創立110周年を記念してThe best of Italian grace and paceというテーマで6台の希少な車両がヴィラデステに集結した。

1955年A6GCS/53スパイダーフルアは現在のマセラティがそのスタイリングDNAを継承するA6GCS/53ベルリネッタピニンファリーナと基本的に同一のシャシーとドライブトレインを持つ。52台作られたA6GCS/53の中の1台であり、3台作られたフルアスパイダーのうち、現存する2台の“かたわれ”という希少なモデルだ。この力強いラインで彩られた優雅なプロポーションに、訪れたマセラティのデザイントップであるクラウス・ブッセが見入っていたのも印象的であった。

1956年A6G/54はザガート製の特徴的な“ダブルバブル”ルーフを持つ。ザガートボディ採用モデルはシリーズの中でも特にスポーティなスペシャルモデルとされており、20台が生産された。この車両は最後期のもので、オーナーはミッレミリアに出場すべくデリバリーを急がせたのだが、レース中にアクシデントで大破するという悲劇的ヒストリーを持つ。

1959年3500GTヴィニヤーレスパイダー・プロトタイプはプロダクションモデルとはかなり異なったフロントエンドのデザインを持つ。トライデントエンブレムや、バンパー、ウィンカー廻りの処理などにより、シャープなイメージを持つ。スタイリングはプロダクションモデルと同様にミケロッティが担当した。

1966年5000GTは34台のみが多くのコーチビルダーの競作によって誕生した希少なモデルであるが、この車両は3台が作られたフルア製ボディを持つ。グラースV8から流用されたボッシュ製ヘッドライトが特徴的である。パールメタリックの深みのあるボディカラーや美しいスエード製インテリアが映える5000GT最後期モデルである。

1970年ギブリスパイダーは125台のうち68台目に製造された車両で、生産当時のコンフィギュレーションに忠実にレストアされている。

1971年クアトロポルテAM121も希少である。初代クアトロポルテの後継としてフルアがマセラティに提案したもので、インディのセミモノコックボディをベースにホイールベースを22cmストレッチしている。しかし結果的にマセラティはベルトーネによるシトロエンSMベースのプロジェクトを選択した(これもシトロエンの経営破綻により極少数が生産されたのみで終っている)ことで、このフルア案は2台のみが製作された。

これら、まさにコンクール・コンディションの車両の中からクラスウィナーにセレクトされたのは1956年A6G/54ザガート、そして次点が1959年3500GTヴィニヤーレスパイダー・プロトタイプであった。生産時期も異なる中からのセレクトはなかなか難しいもので、意見も分かれたようであるが、皆さんはどう考えられるであろうか。

日曜のヴィラエルバで開催されたパブリックディも大賑わいで、チケットは事前にソールドアウト。1万2000人以上が訪れた。次回は2025年5月23~25日の開催となる。


文:越湖信一 写真:越湖信一、BMW AG
Words:Shinichi EKKO Photography:Shinichi EKKO, BMW AG

越湖信一

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