ボルボ最新ラインナップ4モデルを、現役ボルボオーナーがロングドライブで一気乗り

Takaaki MIURA

ボルボは、2030年までにBEV(「Battery Electric Vehicle」の略。ガソリン等を使わず電気だけで走る車)のみを生産、販売する「BEV専業メーカー」となることを目指している。そんな電動化の進むボルボの最新モデルに九州で一気乗りした。福岡を起点に、1泊2日で計4モデルを自由にロングドライブできるというスタイルの特別なステージが用意された。通常の試乗会では走れる時間・距離が限られるため、車のキャラクターを把握する程度に留まるが、今回は、長距離を走ることにより、「電動」の魅力や走行距離などもじっくり確認できる。

まずはボルボ初のBEV「C40リチャージ」を試す


やはり一番の注目は、ボルボ初のBEVとなる「C40リチャージ」だ。XC40の内燃機関搭載モデルとアーキテクチャーを共用するが、けっして妥協の産物などではない。そもそも、開発当初から電動化を前提に作られている。エクステリアはクーペライクなルーフラインが特徴的な、C40オリジナルの「クロスオーバー」デザイン。エンジン冷却のために空気を取り込む必要がないため、ボディ同色のグリルフレームでカバーされたフロントマスクが、BEVであることを主張している。

伊万里の旧い街並みにもマッチするボルボC40Recharge(リチャージ)。完全な電気自動車だが福岡から長崎往復を軽くこなす「足の長さ」は魅力だ。

室内に乗り込むと、まずブルーフェルト地のドアトリムやカーペットが目に飛び込む。ステアリングには合成素材が用いられ、ドアやインストルメントのパネルにはスウェーデンに実在する国立公園の地形図を正確に模したユニークなデザインが施されバックライトを備える。

C40リチャージのインテリアは、今回の試乗車に装着されていた肌触りのよい「スウェードテキスタイル」の他に、スウェットスーツのような感触の先端素材「マイクロテック」、ウール素材とポリエステル素材を混紡した「テイラードウールブレンド」のシート表皮が用意されている。一見本革巻に見えるハンドルも代替素材を使用するなど、まったくのレザーフリーとなっている。

実際に乗り込むとスカンジナビアンデザインらしいプレミアム感があり、クリーンで居心地の良い空間となっている。そして内外装デザインからすでに、イノベーティブなカスタマーをターゲットにしていることが伺える。



大きなガラスルーフによる解放感が際立つC40 リチャージのインテリア。ハイテク素材を奢ったシート表皮やリサイクル素材を用いたカーペットなども取り揃えられており、まったくのレザーフリーとなっている。

C40リチャージは、車の発進に関する儀式は何もない。つまりスタートボタンもなく、ドライバーズシートに座り、ギヤを入れれば即発進可。「電気自動車」ならではの新しさを感じる。一方、EV初心者にとっては、「電費」や「電欠」が不安要素となるが、C40リチャージは、モニターをEVレンジアシスタントのページにすると推定走行可能距離が大きく表示され、エコドライブのアドバイスまでくれるから安心感が高い。ちなみにインフォテイメントにはGoogleを搭載し、こちらもスマホ世代には使いやすい。このGoogleは目的地に到着した時点の電池残量予想に加え、目的地から帰着した際の電池残量予想や、走行ルートの途中にある急速充電器の情報なども随時検索してくれた。地図情報や予想到着時間の正確さは想像していたが、電気自動車のドライブで避けては通れない電池残量や充電場所の心配から解放されるのは大きなメリットだと感じた。

室内が静かなのでオーディオの良さがさらに引き立つ。harman/kardon®プレミアムサウンド・オーディオシステムはUltimateに標準装備となる。

走り始めると、滑らかな加速と静粛性の高さが印象的だ。試乗車は2モーターを備え最高出力408馬力を発するため、一気にアクセルを踏み込めば抜群の瞬発力を発揮するが、敢えてそこをアピールしないのもボルボらしい。というのも、アクセルペダルがちょっと重めで、ドライバーが意志をもってジワッと踏み込んだ分だけ穏やかに加速するようなチューニングになっているのだ。さらに言うと、ブレーキペダルの踏力もバランスされている。こういう細部に至るまで、ドライバーファーストの車作りがされているのがボルボの魅力である。

電動車に多く見られる、減速度の強さを段階的に変える機能は装備されないが、別段、不便を感じることもない。ワンペダルドライブの機能はあり、ワインディングなどシーンに応じて使うと便利だ。高速道路では、ACCをセットしてみたが、低速域からの加速がやや穏やかすぎるという点以外は、安心快適なドライブの心強い味方であった。そして、BEVになっても、ちゃんと”角のないやさしいボルボの乗り心地”が継承されているのも嬉しい。

随所に新鮮さを感じつつ、内燃機関搭載車から乗り換えた人が違和感を覚えない操作性、安心感ある走り味などへの配慮もさすがだ。

充電なしで1日たっぷり楽しめる


C40リチャージでまず立ち寄ったのは佐賀県の伊万里。やきものを見ながら街を散策するだけで心が豊かになる。今年は季節が早く、新緑の綺麗な自然の景色にも心が洗われた。そして、公共交通機関のない、街のかなり奥まったところまで窯元が続き、「クルマ旅」ならではの醍醐味を味わう。

さらに足を伸ばし、長崎の平戸大橋で”映え写真”を撮り、平戸島に上陸。しばらく海沿いを走った先にある千里ヶ浜鄭成功記念公園は、日本とは思えないような素敵な景色だった。まだまだ知らない土地がたくさんあるなー。

感慨に浸っている暇もなく、陽が傾き始めたので帰路に着く。今日のトータルの走行距離は約250Km。ホテル到着時の残りレンジは170Km、バッテリー残39%と表示されていた。途中、電費をセーブするモードを使ったりもしたので、かなり信頼のおける表示である。また、充電なしに1日たっぷり楽しんでこれだけ走れれば、日常はもちろん、レジャーにおいても充電のストレスなく使えるだろう。今回の試乗モデルは2モーター搭載車だったが、24年モデルは、パワーアップされたシングルモーター搭載モデルのみとなる。

「XC90PHEV」の魅力とは


1日目のもう1台の試乗車は、XC90PHEV。XC90は、XC90は、3列シートを持つボルボの最上級SUVモデルで、ボディサイズもそれなりに大きいので誰にでも勧められる訳ではない。にもかかわらず、2016年の日本デビュー以来堅調に販売台数を伸ばしロングヒットを続けている。しかも、PHEVモデルが32%と高比率となっている。そして、7年経過も古さを感じるどころかさらなる進化を実感できる。23年モデルはまず、バッテリー容量が11.6kwhから18.8kwhとなり、EVレンジでの走行距離も39kmから73kmへと大幅にアップした。また、エンジン、モーターの出力もかなり向上しており、結果、レスポンスの良い加速フィールや効率的な回生ブレーキで、大きさ重さを感じさせない走りスムースな走りを堪能できる。

また、Pure(EV)/Hybrid/Power/AWD/Off roadなどシチュエーションや路面状況に応じた様々なドライブモードに加え、ワンペダルドライブも加わり、モーターの力強さ、滑らかさと、ロングレンジのエンジンの安心感など美味しいところどりをしたPHEVならではの魅力がさらに増している。

ボルボXC90はロングセラーながら熟成が深まってきている。特にこのPHEVは走りの滑らかさやスムーズさといった点において大きな魅力がある。

Pure(EV)/Hybrid/Power/AWD/Off roadなどシチュエーションや路面状況に応じて様々なドライブモードがチョイスでき、バッテリーに充電しながら走るチャージモードも備えるなど、モーターの力強さ、滑らかさと、ロングレンジのエンジンの安心感など美味しいところどりをしたPHEVならではの魅力がさらに増している。

XC60Dオーナー視点での「XC60PHEV」


2日目は、まずXC60PHEVをドライブしつつ、大分県のラムネ温泉を目指した。ちなみに私はXC60Dのオーナーだ。通常、車検を取らずに乗り換えるが、この車はかなり気に入っていて、間もなく2回目の車検を迎えようとしている。エクステリアやインテリアはほぼ見慣れた景色で、「いつもと同じ」感覚で乗り込んだ。が、しかし、いざ走ってみると、PHEVにちょっぴり嫉妬してしまった。やはり電気で走る滑らかさや静粛性は、特にディーゼルと比較すると、ワンランク上の車格の車に乗っているかのような印象すらあったからだ。しかも、低い位置に搭載されたバッテリーのおかげで「低重心」の安定感、ハンドリングの良さという魅力も増している。リアルに欲しい…と思ってしまった。

大き過ぎないSUVが王道になりつつある中、このXC60はおしゃれなマルチユースの本命であることは間違いない。

阿蘇にほど近い久住高原付近をゆったりと走る。XC60はアイポイントが高過ぎないので、その気になってアクセルを踏み込んでも安定感があり楽しい。

大分県竹田市にあるラムネ温泉館の前で。大浴場には42℃の内湯としゅわしゅわと銀色の泡が体を包む32℃露店外湯がある。待合室の2階には長湯温泉と所縁のある画家や彫刻家の作品も展示されている。

焼き杉と鋼板の独特な雰囲気を放つ建物の中にあるラムネ温泉は、シュワシュワの泡がカラダを包み心地よい。ただし、32℃とぬるいので、十分温まるようたっぷり時間を取って訪れることをオススメする。

ボルボと言えばエステート。V60の乗り味は?


阿蘇の外輪を眺めつつ、湯布院へ。ウィークデーにも関わらず、原宿にでも来たかのような人出に驚いた。世界的に有名な温泉地であることを実感するとともに、久しぶりに見る光景に、再び旅の楽しさを味わえるようになった現実を嬉しく思った。せっかくだから、ここでも温泉入りたかったなー。

湯布院から一路福岡空港へ。最後に乗ったのは、V60。3台のXCシリーズ試乗後のエステートは、SUVに対してより乗用車ライクな繊細な乗り味が好印象だった。いまやメーカーを問わずSUVの人気が高いが、かつてから『ワゴンといえばボルボ』という高い人気と信頼性があったのをあらためて思い出した。48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされるモデルだったが、PHEVやBEVと比べてもネガティブ要素はまったくなし。時世柄、とかく「電動」の領域に目が行きがちだが、パワートレーンの改善により、ドライバビリティのみならず燃費向上も図るなど、エンジン技術の進化にも手を緩めていないことが実感できた。

1泊2日の弾丸ツアー、4県を跨いでのドライブはハードだが楽しかった。今度は、ボルボも観光も温泉も、もっとじっくり味わう旅がしてみたい。

ワイドに見せるデザインで踏ん張りのきいたフォルムが美しいV60。1850mmという全幅は都市部でも使いやすい大きさである。

オレフォス®社の職人が手作業で仕上げたスウェーデン産クリスタルを使用したシフトノブが美しい。2023モデルよりGoogleが搭載されて操作性が格段の向上した。

パーフォレーテッド・ファインナッパレザーを使用したシート。フロントシートにはベンチレーション機能とリラクゼーション機能が内蔵されており、長距離ドライブでの疲労軽減の一助となっている。



試乗車種
ボルボC40 Recharge Ultimate Twin Motor
ボルボXC90 Recharge Ultimate T8 AWD Plug-in hybrid
ボルボXC60 Recharge Ultimate T6 AWD Plug-in hybrid
ボルボV60 Ultimate B4


文:佐藤久実 写真:三浦孝明
Words: Kumi SATO Photography: Takaaki MIURA

文:佐藤久実

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事