上質なスタンダード・シングル・スポーツを味わう|Royal Enfield Hunter 350

モダンすぎず、しかしクラシックでもない。「Hunter350」はポップで爽やかなグラフィックを採用したことで、街中に佇んでいても絵になる(Images: Royal Enfield Tokyo Showroom)

ロイヤルエンフィールドは、新型車「Hunter350(ハンター・サンゴーマル)」の国内での販売を開始した。空冷単気筒エンジンを抱くその車両は、スタイルにおいてもパフォーマンスにおいてもバイクの王道を行く、まさにスタンダードバイクである。正々堂々と、ど真ん中に直球を投げるその勇気は、ロイヤルエンフィールドの自信の表れだ。ここでは、その車両を紹介する。



ロイヤルエンフィールドはいま、日本での輸入車販売台数第5位に急浮上するほど、躍進している。それを支えるのは、Jプラットフォームと呼ぶ、排気量349cc空冷単気筒エンジンと共通フレームを採用するモデルだ。新型車「Hunter350」は、そのJプラットフォームの最新モデルである。

その特徴は、日本では普通自動二輪免許(通称:中型免許)で乗ることができる、排気量349cc空冷単気筒エンジンだ。空冷単気筒というエンジン形式は、シンプルなエンジン構造で、古くからバイクに搭載されてきた。また走行風でエンジンを冷却するための美しい冷却フィンや、トットットッという排気音とそれに連動する駆け足のような加速感が特徴。効率を追求した現代のバイクが忘れてしまったオールドスクールな魅力は、いまも多くのバイクファンの心を掴んでいる。

エンジンは排気量349ccの空冷単気筒。ロングストロークと呼ばれる、ピストン径に対してストローク量が大きい構造で、それによって粘り強い出力特性が得られる。

しかしJプラットフォームが採用する空冷単気筒エンジンは2020年に発表された新しいエンジンだ。したがって空冷であることやフューエルインジェクションの装着、そして厳しい排気ガス規制に対応することを前提として開発されており、規制に対応しながら生き長らえてきた設計の古い空冷エンジンとは、そもそもの出自が違っている。そしてそのエンジンは、Jプラットフォームの兄弟モデルである「Meteor350」に初めて搭載され、その後「Classic350」やこの「Hunter350」に採用されている。

空冷単気筒エンジンは、単なるノスタルジックではない。「Hunter350」が、それを証明している。トットットッという排気音とそれに連動する駆け足のような加速感という単気筒らしさを持ち、ノンビリ走る楽しさもしっかりと造り込んでいる。しかし驚くべきは、高回転までエンジンを回してキビキビと走ったときだ。

低回転域からトルクのあるエンジンは、エンジン回転を高めなくても、街中でキビキビ走る。そして高速道路で120km/h巡航も可能だ。

トットットッという排気音はエンジン回転の上昇とともに爆発間隔が狭くなり、ビート感へと変わる。バランサーを内蔵したことで振動が少なく、その排気音やリアタイヤが路面を蹴って前に進んでいく感覚がライダーにクリアに伝わり、それはじつに瑞々しい。

また前後17インチホイールや、スポーティなライディングポジションも、その瑞々しい走りを演出する。17インチホイールはスポーツモデルのほとんどが採用するホイールサイズで、軽快なハンドリングが特徴。なおかつ「Hunter350」は、「Classic350」や「Meteor350」に比べ、ホイール周りで約10kgの計量化も実現していて、軽快さをさらに強調。バーハンドルだがやや低い位置にセットしたハンドルや、やや腰高なシートも、スポーツ心をくすぐる。

前後17インチホイールを採用。モダンなデザインのキャストホイールだが、この足回りの変更で大幅な軽量化が実現している。

リアサスペンションは2本式。前後ブレーキには、デュアルチャンネルのABSも標準装備している。タイヤはCEAT(シアット)をはじめとするインド大手メーカー製のチューブレスタイヤを採用。

前後17インチホイールを装着したことで、コンパクトな車体と、スポーティなハンドリングを手に入れている。

低目のハンドルと合わせると、やや腰高なスポーティなライディングポジションを造り上げるシート。シートに掛かる圧力を測定し、最適な形状やフォームを採用。シート高790mm。

シンプルな形状の燃料タンク。容量は13リットルだ。ニーグリップ部分のフィット感も良い。シンプル、ポップ、クラシックなイメージの5色のボディカラーをラインナップ。

街中や峠道を走ると、やはりその車体の軽さ、そして単気筒エンジン搭載マシン特有のスリムな車体が生み出す、軽快感が際立つ。その軽快感を感じながら、トットットッとノンビリ走るもよし、エンジンのビートを感じながら駆け抜けるもよし。なによりも軽量コンパクトな車体は、自宅からバイクを出す心のハードルも下げ、思い立てばすぐに出かけられる。その気軽さこそ「Hunter350」の最大の武器なのだ。

同じエンジン/同じフレームを採用するロイヤルエンフィールドの兄弟モデルに比べても、車体はひとまわり小さく、そして軽量に仕上がっている。

ロイヤルエンフィールドは1901年にイギリスで生まれたバイクブランドだ。その後、1950年代にインドの子会社が稼働。1960年代後半には英国での操業は停止するものの、インドでは生産が継続されていた。そして1994年にインド・トラック大手のアイシャー・モーターズがロイヤルエンフィールドを傘下に収め、その体制が現在も続いている。したがってロイヤルエンフィールドは、122年にわたって同一ブランドのバイクを作り続けている歴史あるブランドというわけだ。現在はインドと英国に開発センターを置き、日本で稼働する日本ブランド工場よりも新しく、DX化が進んだ工場で、日本人コンサルタントによる厳しい品質管理のもと、車輌製造が行われている。その生産能力は年間120万台に到達し、そのキャパシティをさらに広げる予定だといだという。

「Hunter350」は発表から約8ヶ月ですでに、全世界で10万台を販売。排気量250cc〜750ccまでの中型モーターサイクルセグメントのグローバルリーダーであるロイヤルエンフィールドにとって、重要な役割を担う存在だ。

あらゆるキャリア/体型のライダーがライディングを楽しむことができるように、すべてがシンプルに設計され、各部が造り込まれている。

針式のスピード計の中央にデジタルディスプレイを配置。燃料などさまざまな情報を表示する。左レバー下にUSBソケットも標準装備する。

しかしロイヤルエンフィールドは、気負うことなく、スタンダードらしい、バイクらしいバイクを造り込んできた。それはロイヤルエンフィールドの自信の表れでもある。「Hunter350」に乗れば、その自信をしっかりと感じることができるだろう。


文:河野正士  写真/協力:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
https://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/index.html
Words: Tadashi KONO Images: Royal Enfield Tokyo Showroom

文:河野正士

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