東京、南青山で「アストンマーティンに暮らす」ということ

No.001 MINAMI AOYAMA

時代を超越した美しさを提供してきたアストンマーティンのデザインコード。近年、その卓越したセンスは「パートナーシップス」という形でヘリコプターからドライビングシミュレーターまで、より幅広い活動へと進化している。

2022年11月28日。アストンマーティンは新たなパートナーシップスとして高級不動産の企画開発会社「VIBROA」とアジア初となる超高級邸宅の共同企画を発表した。選ばれた場所は東京、南青山。過去・現在・未来が交錯する日本有数のこの地に、さてどんなアストンマーティンが誕生するのか。



ライフスタイル分野におけるコラボレーション


アストンマーティンには「パートナーシップス」という名称をもつブランドのコラボレーション部門が存在する。いわゆるライセンシング事業とは異なり、企画やデザイン段階からパートナーシップを結ぶ企業と協業する、というもの。衣類や腕時計、玩具といった、昔ながらのコラボレーションもラインナップしながら、今まで自動車メーカーとのコラボレーションをあまり耳にしなかった分野にまで進出している。

例えば、エアバス社とのヘリコプター「ACH130アストンマーティン・エディション」、ブラフ・シューペリア社とのバイク「AMB 001」、カーヴ・レーシング・シミュレーター社とのレーシング・シミュレーター「AMR-C01」など、その幅広さには驚かされる。それらはアストンマーティン・オーナー向けに、ライフスタイル全般において同社のデザイン言語により深く共鳴してもらいたい、という姿勢の表明である。

アストンマーティンのデザイン部門には、カーデザイナーだけが在籍しているわけではない。車以外の“乗り物”を手掛けるトランスポーテーションデザイナー、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、服飾デザイナー、そして建築デザイナーなども在籍している。デザインはすべて“インハウス”で手掛ける体制、覚悟、こだわりを感じさせてくれる話である。と同時に、それほどアストンマーティンがデザインを重要視している、ということでもあろう。

「アストンマーティンがデザインで関われないパートナーシップスは、コラボレーションとして成立しません。ロゴの供与だけなら“ビジネスディール”と呼ぶべきでしょうし、そもそもそのようなコラボレーションはしていません」と語ったのは、同社のパートナーシップス部門を率いる、カハル・ラフナン氏だ。パートナーシップスにおいて、高級スポーツカーメーカーとして蓄積してきた技術やノウハウを生かしながら、他分野のデザイナーたちのコラボレーションによる新たな学びや発見があるという。そして、パートナーシップスを通じて得られた新しい知見が、アストンマーティンのこれからの車作りに生かされる、という循環を目指している。

アストンマーティンでパートナーシップス部門を率いるカハル・ラフナン氏。

「私はパートナーシップス部門の責任者ですが、マレク・ライヒマンの下、カーデザイナーの仕事もしています。長年、車のデザインばかりしていると、カーデザインという“殻”に閉じこもってしまいがちです。その点、パートナーシップスではアイディアのぶつかり合いがある一方で、人はもちろん、素材や文化といった面でも新しい出会いと発見があって、とても良い刺激に恵まれています」と続けた。

アストンマーティンが手掛けた「住居」


そんなパートナーシップスにおいて、ほかの自動車メーカーに先駆けてアストンマーティンが取り組んだのが「住居」である。自動車メーカーが住居を手掛けることに違和感を覚えるかもしれないが、在籍している建築デザイナーは世界各地のアストンマーティン・ディーラーの店舗デザインを手掛けている。店舗デザインと住居では目的や用途は異なるものの、それはパートナーとなる地元の建築デザイナーとコラボレーションすることで、良い意味での“折り合い”をつけている。

2019年に発表されたのはアメリカ・フロリダ州マイアミにG&G社が手掛けるコンドミニアム建設で、その名も「アストンマーティン・レジデンシズ」。66階建て、全391戸のコンドミニアムはマイアミ南部では最も背が高い。“シグネチャーコレクション”と呼ばれる7戸のペントハウスには特別仕様のDB11もしくはDBXが含まれ、“ライン01”と名付けられた3階建てのペントハウス購入者には、ヴァルカン(世界限定24台)が含まれることでも話題を呼んだ。

アストンマーティンによる住まいのプロデュースは、マイアミを皮切りに続々と誕生している。ニューヨークではコンドミニアム“130 WILLIAM”内に2フロア(5戸)に「アストンマーティン・ホームズ」を手掛けた。インテリアやバルコニーはアストンマーティンが監修し、アストンマーティン・パートナーシップスの一員であるイタリアの家具メーカー「フォルムイタリア」がラインナップする“アストンマーティン・コレクション”をセレクトしている。また、各戸に130 WILLIAMの設計者の名前を冠した、“サー・デイヴィッド・アジェイ・スペシャルエディション”と呼ばれるアストンマーティンDBXの特別仕様車が付いてくる。


近年、アストンマーティンはユーザーのライフスタイルの中枢へのアプローチ強化のために、ヘリコプターやオートバイ、腕時計などのプロフェッショナルブランドと協業した活動に余念がない。そのひとつが空間。ニューヨーク、マイアミに続きながらも、居住を前提とした邸宅としては世界で初の試みとなる。

アメリカではもう1軒、ニューヨーク・マンハッタンから車で1時間半ほどの場所に位置する、ラインベックという町にアストンマーティンが手掛ける「シルヴァンロック」という邸宅の建設が始まった。敷地面積55エーカー(約6万7600坪:東京ドーム4.8個分)という広大な敷地に温かみのあるテクスチャー、大胆なフォルム、卓越したプライバシーを備えたラグジュアリーな邸宅に仕上がる見込みだ。

文:古賀貴司(自動車王国)

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