「メルセデスAMG」として生まれた期待の新型SL、そのドライビングフィールは?

Takaaki MIURA

新型SLは“メルセデス・ベンツ”ブランドではなく、“メルセデスAMG”として誕生した。その意図はパフォーマンスの向上。SLの領域(パワー、車格、価格帯)でライバルと戦うにはさらなる性能が求められるからだ。スーパーカーまではいらないが、それなりのパワーは欲しいというマーケットに応える考え。もちろん、その多くがスーパーカーを所有した経験に基づくことだろう。

という背景からメルセデスAMGチームが開発したことで、新型は彼ら基準でつくられた。ボディ剛性、足まわりのセッティング、車両重量すべてがその範囲内となる。よって、フロントサスペンションはなんと5リンク式。これにはちょっと驚いた。走りへのこだわりと同時に相当お金がかかっているはずだ。

ボディシェルもそう。アルミニウム、マグネシウム、カーボン、スチールの複合素材からなるそれはまったくの新設計。高いボディ剛性がオープンボディとは思えない走りを見せる。実際にワインディングを長い時間走ったが、ステアリング操作に追従するボディは堅牢で一体感が強い。屋根がないのを忘れてしまうほどの剛性感だ。さらに驚いたのは閉めてからの走り。まるでロールバーが入ったようなカッチリした動きはまんまレーシングカー。走りはより鋭くなり、絶対的なスピードが上がるほどだ。



言い忘れたが、新型は2名掛けのリアシートがある。ポルシェ911と同じく子供もしくは近距離用だ。が、これはあると便利。911同様鞄やコート置き場としてのメリットは大きい。ただ、これによりオープン時に風の巻き込みが生じるのは否めない。それ用のカバーがあるというが、いちいちはめるのは面倒。となると、そこが唯一のネガティブポイントかもしれない。



ちなみに、トップに採用される幌だが、その言葉の響とはまったく異なる。閉めて天井を見上げるとそれはしっかりした屋根。気密性と剛性の高さは一目瞭然だ。その意味でメタルトップからの変更は軽量化もそうだが、見た目の雰囲気に寄与するところが大きい。開閉時間は約15秒。時速60キロ以下であれば走行中も稼働可能だ。操作はセンターコンソールのスイッチを押し、その後モニター上のイメージ画像をなぞるように指をスライドさせる。



では、パワートレインに話を移そう。試乗したSL43は2リッター直4ターボ+マイルドハイブリッド(BSG搭載)となる。最高出力は381ps。ただ本国のサイトを見るとこれ以外に2つのモデルが存在する。SL55 4MATIC+とSL63 4MATIC+だ。どちらもエンジンは4リッターV8ツインターボで、前者が476hp、後者が585hpを発揮する。AMGが手がけるV8だけにこちらが本命とも思われる。SL43がこれだけいいのだから、早くテストドライブしてみたい期待の一台だ。



それはともかく、実際の走りは4気筒といえども侮れないのは言わずもがな。出だしから中間加速、アクセルに対するレスポンスやエンジンサウンドまでかなり周到に車好きを納得させる仕上がりとなっている。このスペックからは想像できない重厚感だ。第二世代になったマイルドハイブリッド機構はナチュラルで、いいタイミングでエンジンをサポートしている。

特に好印象だったのはドライブモードを“Sport+”にしたときで、“Comfort”では感じた多少のターボラグが見事に消されている。なので、感覚としてはまさに大排気量車を動かしている様子。エグゾーストサウンドシステムを“パワフル”にすれば助手席からはこれが2リッターエンジンであることは認知できないくらい。AMG恐るべし。伝統あるSLモデルを受け持ったことで生じた彼らの熱量を強く感じた。




文:九島辰也 写真:三浦孝明
Words: Tatsuya KUSHIMA Photography: Takaaki MIURA

文:九島辰也

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