100台以上の車に乗った元・交通警察官が、理想のフェラーリにたどり着くまで

メカニカルな部分で車を語るのも非常に楽しいものであるが、車が繋ぐ人と人の友情や、理想の車に巡り合うまでの物語も、車にまつわるストーリーとしては見逃せない。今回は『Octane』UK版編集長が、元警察官が理想のフェラーリを手に入れるまでの思い出をインタビューした。

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長年の夢だったマニュアルのフェラーリF355 GTSを手に入れたのは2010年のことです。私は、スコットランドの警察に30年勤務しました。警察に入ったらすぐに交通課で働きたかったのですが、まずはロサイスの街の警備を10年間務め、1991年にやっと交通課に配属されて20年勤めました。交通課に配属されてからは順調で、研修中にクラス1へ飛び級で合格し、その年のドライバー・オブ・ザ・イヤーに選出されました。

その頃の警察では、ローバーSD1、3リッターのセネター24V、四駆のフォード・グラナダ2.9インジェクションなど、後輪駆動のパワーマシンに乗っていました。2001年にインストラクターとなり、上級クラス、追跡クラス、王室護衛クラスなどで教え、在籍中にロイヤルファミリーのほとんどのメンバーの護衛運転もしましたよ。今もブルーライト社で警備のアルバイトをしていますが、車があまりエキサイティングではないことが少し残念です。

私は、いつかF355のような車に乗れることを夢見ていました。14歳の頃、カーコーディのドライブウェイの坂道で、父が会社のボクスホール・キャバリエを運転させてくれたことがありました。15歳の頃には地元のディーラーで洗車の手伝いを始め、2年後にはそのディーラーでミニを購入したのです。その後、フォード・エスコート RS2000、2.8リッターでインジェクションのフォード・カプリ、ランチア・ベータ・モンテカルロなど、これまでに乗った車は100台以上になると思います。20歳のときに購入したロータス・エスプリS2は、結婚するときにオースチン・モンテゴに交換してもらえた、なんていうこともあります。

しかし、実際に手に入れてみると、F355は私の運命の車ではなかったのです。わずか2年で乗り換えてしまいました。その後は360スパイダー、アストンマーティンV8、そしてまた別のエスプリへと乗り継ぎました。現在では、英国に数台しか残っていないBMW E92(3シリーズ) M3ダカール・エディション、2018年アバルト124スパイダー、BMW i3に乗っています。そうこうしているうちに、車好きのためのグループ、『ドライビング・スコットランド』を結成しました。今では120人のメンバーがいますが、気障な人はおらずエリート意識もない、素晴らしいグループです。

このブルーセラメタリックの308が売りに出されているのを見た瞬間、私は恋に落ちました。そして、すぐにモンディアルを下取りに出したのです。この車が頻繁に登場したTV番組『私立探偵マグナム』は、内容はさておき、私は大好きでした。登場人物やストーリーなどはどうでもよく、出てくる車たちをただ眺めているだけで楽しめたからです。



購入したのは2016年で、最初の1年だけで1000マイル以上走りました。しかし、どうもエンジンの調子がよくないので、微調整するつもりが、部分的にリビルドをすることになり、さらにフルリビルドすることになり、最終的には車内外をフルレストアすることになりました。ただ、私の資金には限りがあるので、何にいくら使ったかを計算するのが本当に怖いです。レストア会社からの請求書は合計67枚届きました。エンジンには15,000ポンドもかかっています。

レストアは、イースト・キルブライドにあるクライズデール・クラシック・カーズ社が担当しました。航空機用の鋼板からグリルをカスタムで製作しながらも、純正のフェラーリバッジはそのまま使用するという、素晴らしい仕事ぶりでした。私の印象ではフロントの雰囲気がいまいちだったので、深めのチンスポイラーとグリルの奥に取り付けるカレロ製のスポットライト2灯を調達し、288GTO風にしました。5月にようやく戻ってきたこの車は、ツインチョークのウェーバー製キャブレター4機を搭載し、見事な走りを見せてくれます。

このプロジェクトで私にとって決定的なものは、当時のスプリットリムのホイールです。ある女性が、ショウで展示していた私の車を気に入ったからという理由で、ホイールを譲ってくれると申し出てくれたのです。308を所有していた彼女のお兄さんが最近亡くなったということでした。私はその申し出をありがたく受け入れ、ホイールを装着したらまず最初に彼女をドライブに誘う、と約束しました。もちろん、その通り実行しましたよ。


Interview: James Elliott