アイルランドの激動の歴史を学びながら、ギネスビールも楽しめる!国立芸術歴史博物館

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ダブリンはツーリストにとって魅惑的な街で、見るべきところが沢山ある。例えば、モリー・マローンの銅像や郵政省の立派な建物だ。1916年にイースター蜂起の指導者達の本部として使用され、その後に起きた災いの傷跡が今も残っている。この建物には不吉な雰囲気が感じられるが、ここでの事件や流血の歴史を考えればそれも分かる気がする。訪れると、この国や人々の過去を学びたくなる。人々の多くはハッピーな心を持ちながらも、同時に過去への苦い思いを抱いているのだ。

まずはハッピーな部分から紹介しよう。ギネス・ストアハウスと「ギネスの世界」展だ。館内を数時間歩き回るうちに、ギネスは黒色ではなく実は非常に濃い赤色であること、そして広告にあるように「体に良い」ことがわかってくる。ギネス社によると、この醸造所だけで1日に300万パイント分が製造されているとのことだ。この幸せなツアーの最後には、7階の「グラビティ・バー」で、ダブリンの街を見下ろしながら壮大な景色を楽しめる。

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広大な石畳の練兵場を含む全18エーカーの敷地である旧コリンズ兵舎には、圧倒的な存在感がある。かつては4000人もの兵士が居住し、世界で最も長く使用された陸軍基地であったと考えられている。ここは1702年から1997年まで使用されたが、その後しばらくの期間を経て改修され、国立芸術歴史博物館として再オープンした。

広く立派な宝の館には、銀食器、家具、武器、コスチューム、馬車、切手やコインの重要なコレクションなど、さまざまなアイテムが展示されている。あるカラフルな展示室では、何千人ものアイルランド人移民が、アメリカの南北戦争の両陣営に参加したことに触れている。アイルランドは、アイルランド人の共感を得られていた南部連合の軍服をも製造し、脅威的な北軍の海上封鎖をかいくぐって送り届けることができたのだった。

他には、フォード製マークVI装甲車など、エンスー必見の展示もある。第二次世界大戦中、アイルランド共和国政府は中立国であったが、軍装備品の必要性が切実であることは認識していた。アイルランド軍のある将校は、既存のトラックのシャシーをベースに装甲車を設計した。一般的なフォードV8エンジンを搭載し、現地で何台も生産された。ただし装甲とはいえ、保護のために普通の鋼板が使われただけで、実際のところはいわゆる「装甲車」ではなかったといえる。二輪駆動であるがゆえに走行は少々不安定だったが、3人乗りの「刺激的な移動手段」ではあった。その後はコンゴで国連平和維持活動において使用され、1970年代に引退した。展示されている実車を見れば、使用していたクルーに同情の気持ちが湧いてくることだろう。なぜならこの車は、自信が湧いてくる様な代物ではまったくないからだ。

フォード製マークVI装甲車。

1940年から1970年の間に113,000輌も製造されたユニバーサル・キャリア、別名ブレンガンキャリアも展示されている。この装軌式汎用輸送車の多くが、戦時中にアイルランド国防軍に従事した。また、ソビエト軍を含む数々の連合軍でも使用された。普及していたフォード製V8エンジンを搭載し、後には迫撃砲を搭載したものや、対戦車砲を牽引するものなども製造された。アイルランド軍が実際に使用した226輌のうち、現存するのは3輌のみとされている。

さらなる展示車両は、1970年代にアイルランド国内警備に使用されていたパナールM3装甲車だ。この装輪式装甲兵員輸送車は、次世代モデルと交代するまでに44台が使用された。そして上を見上げると、アイルランド空軍が地上訓練に使用した、デ・ハビランド・バンパイアT11のジェット機が吊り下げられている。



この博物館の周りには、アイルランドの辛い過去を図解する展示がある。一方で、素晴らしい写真も多く、今日のアイルランドの人々の気持ちが伝わってくる。ショップも充実しており、家族で楽しむことができる。アイルランドの歴史を好きになったら、次なるステップとしてこの国の膨大な数の史跡を巡る、リラックスしたロードトリップを計画してみてはいかがだろうか。


国立芸術歴史博物館
住所:Collins Barracks, Benburb Street, Dublin 7, DO7 XKV4
開館時間:火~土曜は10時~17時、日・月耀は13時~17時。
入場無料、寄付歓迎
有料駐車場:4時間5ユーロ
詳細はwww.museum.ie参照
ギネス・ストアハウス:
住所:St James Gate, Dublin 8, DO8 VF8H.
営業時間:月~木耀は10時~17時、金・土耀は9時30分~18時、日耀は9時30分~17時。
入場料22ユーロ、グラビティ・バーのドリンク付き
詳細はwww.guinness-storehouse.com参照


Words: Barry Wiseman

オクタン日本版編集部

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