戦車M4シャーマンの走行も! フランス解放博物館で見る、第二次大戦の軍用車両たち

Tomonari SAKURAI

9月17日、18日はヨーロッパ遺産の日。この日はヨーロッパ中で美術館や博物館が無料で開放されるほか、普段は一般が足を踏み入れられないところが公開される。フランスで最も人気が高いのはエリゼ宮。大統領官邸だ。この日は朝4時には列ができ始めるという。そんな日に出かけたのはサトリ市。ヴェルサイユ市の隣にあるこの街はほとんど軍の施設と言っていい。空軍の基地もあり、その周りに特殊部隊の基地もあり、航空機による即応にも対応している軍の街なのだ。

その一角にあるフランス解放博物館は軍の施設内にあり、普段は一般に公開されていないが、この日は一般に公開された。この博物館では、第二次大戦の軍用車両を保管している。ほとんどがアメリカ軍のものだ。ここで整備され、ほとんどが動く状態に保たれている。アメリカ軍の車両が多いこと、そしてフランスを解放したアメリカということで、この日はフランス軍の基地でありながら星条旗が掲げられている。その上、ここのスタッフ達はほとんどアメリカ軍の当時のコスチュームを身にまとっている。

軍用車両が展示されている一室。

アメリカ空挺隊。でも、英語は出来ないって言ってます。

中に入るとどこかで見かけたことのある車両がある。そうだ。パリ横断のピクニック会場となっていたムードンの公園だ。その一角が軍の駐屯地に様変わりしていたところ。あの場にきていた車両はここから参加していたのだ。タミヤのプラモデルを思い出しながらその中を見て回る(中の様子は画像ギャラリーにも多数掲載)。ここを訪れている多くの人が年配の元軍人という方々。ミリタリーマニアもそうだがこの基地の軍関係者の家族という感じだ。

パリ横断にも展示されていた線路を走るジープ。

もう、プラモデルの世界。M13 MGMC 自走対空砲。

M8軽装甲六輪車。退役軍人とそのお孫さん。

そんな中、何やら一角が騒がしくなってきた。「ここから後ろには来ないほうがいいですよ。エンジンをかける時にはかなりの煙が出ますから」どうやらM4シャーマンが外に出て走らせるということらしい。準備が整うといよいよエンジンスタート。スターターモーターが回り始めてすぐにバラバラとエンジンがかかり出した。言われていたようにすごい排煙だ。ただ、まだ全部に火が入っておらず、バラバラと不規則な感じ。しばらくすると規則正しい音になりエンジンは無事に始動した。そして倉庫からゆっくりとその巨体外に出ていく。MPの腕章をつけた兵隊が道をあけシャーマンは外の道まで出てくる。兵達を載せるとその通りをひと走り。ここを訪れていた人たちは子供も大人も大喜びの様子だ。走行が終わると外にそのまま停車させ足場を用意して一般の人も戦車に乗っかることができる。

エンジン始動。排煙が凄い。

排煙はあっという間に広がっていく。車の公害に敏感なパリ市は、どんな顔をするだろう?

倉庫から姿を現す。

MPの指示でバックで路上に侵入。

走行が終わると来場者にM4シャーマンを登らせたり、中を見せたりと大サービスだ。

この博物館には整備するためのスペースがあり、そこには旧車も並べられていた。ルノーの小型装甲車のプロトタイプも展示されていた。そういえば軍の訓練のために使われる一般車両。乗用車などはメーカーから支給されることがあるのを見たことがある。これは事故が前提の訓練や時には射撃の的などに使われるのだがシリアルナンバーがない。新型車を開発し、クラッシュテストなどに作られてテストには使われず余分に残った車両が軍に回ってくるとのことだった。

ルノーが開発したVBL装甲車。装甲ジープというとイメージしやすいか?現在はプジョーのディーゼルエンジンを積んだパナールのものが採用されている。これはルノーのもの。

フランスにはロアール地方のソミュールに有名な戦車博物館があるがパリ近郊、ヴェルサイユのすぐそばにこんな博物館があるのは知らなかったのでちょっと不思議な感じ。パリ横断でアメリカ軍の車両がずらっと並ぶのは、ここがあったからなのだ。いつも何か新しい発見のあるヨーロッパ遺産の日だ。


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成

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