憧れのポルシェ930ターボSを購入、ロードトリップでお手並み拝見

Octane UK

『Octane』UK版スタッフによる愛車日記。今回は子供の頃からの憧れだったポルシェ930をもう一度手に入れたハリーのレポートをお届けしよう。



ポルシェ 930は、子供の頃から私の心を惹きつけてやまなかった。最初にその存在を知ったのは、70年代に我が家を頻繁に訪れていた両親の友人である建築家からだった。あるとき彼は、当時発表されたばかりの911ターボの素晴らしさを父に語り、私はその言葉に心を奪われた。「エグゾーストにタービンをつけただけで、これだけのパワーが “タダ “で得られるんだ!」 そんなことが実際可能だったのだろうか?ポルシェ930のそういったところに、どうしても興味をそそられてしまう。もちろんルックスが良いのは言うまでもない。太いアーチと、鯨の尾のようなテールが非常に魅力的だ。

私が初めて930を所有したのは数年前のこと。1989年式の車だった。テスタロッサやカウンタックQVと比べると、憧れはあっても惚れ惚れするほどの車だったとは言えない。もっとも、日常的な使い勝手という点では、必ずしもコレクターズカーが良いとは限らないのだが。特別な車には、ドライブフィーリングよりも、視覚的、直感的な興奮を求める私にとって、930のターボへの興奮は時間が経つにつれて薄れていった。当時のロードテストによって実証されていたはずの300馬力が、全くもって物足りなく感じられたのだ。

数年後、私は930を売却し、もう買うことはないだろうと考えていた。しかしヘアピン社に鮮やかな赤のゴージャスな930が入庫したのを見つけてしまった。



いくつかユニークな特徴があったため、最初はどこかで改造されたのかと思ったが、ポルシェのSunderwunch部門の製品であることが判明した。カリフォルニアのポルシェ・コレクター、ケリー・モース氏のために作られたと聞いている。彼はIMSA耐久レースでの活躍で知られ、80年代にはシャシー004と007(「モビーディック」)という2台の有名なポルシェ935レーサーを所有していた。またケリーはポルシェファクトリーと良好な関係を築いており、この89年型G50 930ターボSはそのおかげで特別に製作されたものだそうだ。

残念なことに、この車にはそれを裏付けるような経歴ファイルが付属していなかった。しかし、2019年にカリフォルニアのディーラーから購入したドイツのフライジンガーモータースポーツからの請求書に、ケリーのプロトタイプ959や通常の904のものと一緒に詳細が残っていたのである。この930はフライジンガーがフルレストアを行ってから、英国の別の有名なポルシェ・コレクターに売却されたそうだ。そしてその後、ヘアピン社に下取りに出されたのである。

私はこの車のオリジナルのスペックシートを所有しており、そこには17インチのルフホイールのほか、スペシャルダッシュ、トリックロックディファレンシャル、ショートギアレバーなどの特徴が記されているのが非常に興味深い。この930ターボSの特にユニークなところは、K27ターボ、改良型ヘッド、大型インタークーラー、クワッドパイプエグゾーストを備えた3.4リッターのポルシェ・モータースポーツ・エンジンを搭載している点だ。ブーストは1.1bar(通常の930は0.8bar)、出力は400bhpをはるかに超えるという。私が知っているのは、これまで運転したどの930よりも、フェラーリF40に近い“ドッカンターボ”を持っているということだけだ。



ベース車両は、1989年にSW部門が極少数だけ製造したターボSだ。今日ではその記録を入手するのは難しいが、合計33台が製造されたと考えられており、そのうち10台はフランス市場向けにSonautoによって依頼されたものである。モータースポーツ用に開発されたオイルクーラー内蔵のフロントエアダム、ポルシェ959のステアリングホイールとシート、ローダウンサスペンション、外気温計を備えた専用セントラルコンソールなどで見分けがつく。

フライジンガーは、レストア中にエンジンとギアボックスをフルリビルトし、走行距離はわずか1300km。私がこの車を購入する前に、わずか1300kmしか走行していない。この車を理解するためには、1400kmのロードトリップをし、スペインが誇る最高の道路を走るのが一番だ。

車を本当に知るための方法には、ロードトリップに勝るものはないだろう。最初の印象は悪くなかった。911のいつもの良さが前面に出ていて、この車が本来持っている使い勝手の良さが一番に現れている。前席の背もたれのおかげで、収納スペースは予想以上に多い。ひとつ驚いたのは、高速道路での走行時の静粛性だ。エンジン音は後ろに流れていき、重厚なミラーやレインガターは時速80マイルの強風の影響を受けていないように見えた。

しかし、衝撃的だったのは、燃費である。恐ろしいとしか言いようがない。良くても約4.6km/L、ひどいと3.8km/Lという低燃費を記録したのである。後で知ったのだが、930のチューニングエンジンは、ピストンを冷やすためにかなりリッチなセッティングになっていることが多いらしい。まあ、その分パワーはあるのは確かなのだが…。



今はもうすでに英国に戻り、930はJaz Porscheに入庫している。私が手に入れてから初のサービスを受け、高速道路での巡航時に少しでも経済性を高められるかどうか調査しているところだ。でも、ひとつだけ確かなことは、この車はしょっちゅうガレージから出すことはない、ということだ。このような特別な930を所有することができ、とても幸運に思っている。

文:Harry Metcalfe まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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