人々に愛されたダイアナ妃らしい選択|フォード・エスコートを自ら駆ったプリンセス

Silverstone Auctions

8月27日に開催されるシルバーストン・オークションの「The Classic Sale at Silverstone 2022」に出品されている1985年フォード・エスコート RS ターボ S1。黒い外装色のRS ターボというだけでもめずらしい存在だが、その特別さは色だけではない。これは故ダイアナ妃がハンドルを握った車そのものなのだ。



もともと、ダイアナ妃にとって2台目となるフォード・エスコートの候補車は赤いカブリオレだったが、ロンドン警視庁の王室警護部SO14 によって不適当であると見なされたと言われている。手動のキャンバスルーフでは、急遽プライバシーを確保するときには役に立たず、堅牢ではないため安全性の面でも難があるためだ。

より目立たない車の購入を勧められたダイアナ妃は、新しいエスコート・ターボ RSを選択した。当時販売されていたRSターボはオールホワイトだったが、フォードのPR部門はダイアナ妃のためにブラックカラーのRSターボを提案。この車は、最初で唯一の黒いRSターボのシリーズ1であると考えられている。特殊車両エンジニアリング部門で塗装が施され、警護担当者のための補助バックミラーやグローブボックス内に無線が取り付けられた。無線のケーブルは今も車内に残っているという。



1985年8月23日に登録されたこのRS ターボ・シリーズ1は、その有名すぎるオーナーとともにその後数年にわたり、ロンドン各地で撮影されている。一例を挙げると、ウィリアム王子が後部座席に座り、母親のダイアナ妃がハンドルを握って微笑んでいる様子を写した報道写真がある。

シティガールのダイアナ妃は、自分で車を運転することを好んだという。ロールス・ロイスの特装車両に乗ったり、警察車両に先導されることなく、自分の車のハンドルを握っている時間だけが心安らぐ瞬間だったのかもしれない。



この車両は1988年5月に、オドメーター約6,800マイルの状態でフォード社に返却され、同社の政府販売部門のマネージャーであるジェフ・キングに社内で売却された。その後、1993年9月にKiss FMによる販促賞品として提供され、エセックスのミス・ジョーンズが勝ち取った。そして2008年に、イギリス国内有数のフォード RS コレクションの管理者の目に留まったという。これらの履歴はヒストリー・ファイルでも確認することができ、現在の走行距離は24,961マイルである。



このRSターボは、将来の女王が運転することを意図して作られたものではなかっただろう。ましてや未来のイギリス国王となるべき人物が後部座席に座るとは想像もしていなかったに違いない。王室メンバーの車選びの中で最も大胆な選択であるとも言われているという。しかし、国民が身近に感じられるスポーツカーのフォード・エスコートRSターボと、「People’s Princess」として人々に愛されたダイアナ妃には、共通項があるように思えてならない。

オクタン日本版編集部

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