生誕50周年プロジェクト|幻のカウンタックLP500 「復刻」ストーリー

Shinichi EKKO

2021年のヴィラデステにおいて、カウンタックLP500の復刻モデルがサプライズで登場したのは記憶に新しい。メーカー自らが「レストア」ではなく「復刻」に挑んだ意義を、その過程を交えて探る。



サンタアガタのランボルギーニはVia Modenaという当地のメインストリートに面しているが、そこから数ブロック離れたところに秘密の?ファシリティがある。そこではランボルギーニのヘリテージたちのレストレーションが行われ、美しい姿のミウラやカウンタックが鎮座している。ここはランボルギーニのクラシック部門ポロストリコの作業場なのだ。そして、その奥にはさらに厳しいセキュリティシステムに守られたチェントロ・スティーレ(デザインセンター)別室がある。そこで筆者を迎えてくれたのはチーフデザイナー、ミティア・ボルカルトだ。「カウンタックLP500は大活躍さ。昨日、パリ(レトロモビル)から戻ってきたよ。でもここにも一台あるからね。このプロジェクトはポロストリコと我々チェントロ・スティーレの素晴らしいコンビネーションで誕生したんだ」と原寸大のモックアップを愛おしそうに撫でるミティア。そう、今回はこの世界が注目したLP500と、この大プロジェクトを仕上げたポロストリコに焦点を当ててみよう。

強いカウンタック愛を持ったミティアがいたからこそ完成したLP500の復刻モデル。このルーバーの微妙な形状にも彼は大いにこだわった。

このLP500は昨年サプライズとして公開された復刻モデルであり、前述ポロストリコによるプロデュースのもとに1台だけが製作された。クラシック部門が復元(レストア)を行うのは当たり前だが、現存しない車をゼロから作るというのは極めて稀である。しかし、これは単に一台の車に関わることではなく、ブランドの歴史を再構築するというたいへん深い意義を持った取り組みだ。カウンタックはランボルギーニの重要なDNAであり、ポロストリコもこの偉業によって大いに名をあげたと思う。

ランボルギーニ・ポロストリコが果たす責務とは


ここでランボルギーニ・ポロストリコの活動についても少し触れておこう。ポロストリコは2015年に設立され、以下、4つの柱の元に活動を続けている。

1 アーカイブに基づく各車両のデータ供給。
2 車両のオリジナリティを調査し、真正性証明を行うサービス。
3 レストレーションの請負。
4 クラシック・モデル用パーツの再生産。

比較的若い会社であるランボルギーニだが、波乱のヒストリーの中で失われていた資料も多かった。しかしポロストリコの尽力により車の戸籍ともいえるビルトシートをはじめとするドキュメント・ファイルの充実ぶりには目を見張るものがある。

1に関して、この手の少量生産モデルは車両ごとに顧客の要望を受けて製造されていたから、一台一台の仕様が異なっている。その個体がどんなスペックで作られたかが記録されたビルトシートの存在はとても重要であり、これがあって初めて何がオリジナルであるかが判明する。これらを含む設立以来、随所に散らばっていたデータが集約され、デジタル化が進んでいるという。

2のCertification of Authenticity Service(真正性証明サービス)は、最も需要のあるサービスだ。前項のビルトシートをベースに実際の車両を徹底的にチェック。オリジナルと異なるスペックがあればそれらは細かく指摘される。チェックの後、ポロストリコの基準に合致するとポロストリコがその過程を詳しくまとめた(8個のチャプターからなる)サーティフィケーション・ブックの発行が行われる。その中にはポロストリコのトップであるジュリア―ノ・カッサタロのサイン入り証明書が含まれており、現在のところ120台ほどの車両が認定をうけているという。この作業のためには車両をサンタアガタのランボルギーニ本社内にあるポロストリコまでシッピングする必要があり、証明にはおよそ1カ月かかる。ちなみにそのコストは7,000~10,000ユーロと設定されており、モデルによってその金額は異なる。



3のレストレーションに関しては、新車時の工場出荷状態に戻すことを基本コンセプトとしてポロストリコがプロデュースを行う。外装色やインテリアカラー、トリムなども基本的に生産当時の状態へすることが推奨されており、オーバーレストレーションは好ましくない、というのが彼らの考えだ。この作業はポロストリコと当地で古くからランボルギーニの製造やメインテナンスに関わってきたサプライヤー達によって行われる。もちろんそのコストは決して安くはなく、ランボルギーニの現行モデルが購入できるほどの価格を用意する必要がある。

少量生産でハンドメイドのクラシック・ランボルギーニは一台一台がユニークな存在だ。その車両をしっかりと維持したいというオーナーの想いに応えるためにも、ポロストリコは、細部まで拘りつくす。

最後に4のパーツであるが、毎年200種以上のリプロダクションパーツが新たに加わるというように積極的だ。それらは現行モデル用と同じくランボルギーニのオフィシャルパーツとして世界中から発注することが可能となっている。

ちなみにポロストリコが手掛けるのは基本的に2001年、つまりディアブロまでの各モデルとなる。しかし、生産台数の極めて少ないモデルに関しては別途の対応になるという。

オクタン日本版編集部

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