中国EV最大手のBYDが、日本乗用車市場への参入を発表|第一弾はSUV

Octane Japan

二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素化」の流れが加速し、なかでも自動車関連は大きな転換期を迎えている。ただ、いっぽうでその動きには矛盾点も多くて物議を醸しており、さらにそれを支えるインフラといえば……言わずもがな。そういわれて久しい昨今だが、そんななかなか整わない状況を尻目に、数十年も前から着々と進化の歩みを止めることなく突き進んできた企業にとっては、そんな環境が整うのを待つ猶予などなさそうだ。

中国最大手の自動車メーカーであり、2022年上半期新エネルギー販売台数世界一のBYDがついに日本乗用車市場に参入、最新のEV、3モデルを日本で2023年から順次開始すると発表した。販売ならびに関連サービスを提供する100%出資子会社は、今年7月4日に設立した BYD Auto Japanである。



今回発表されたモデルは、ミドルサイズe-SUVのATTO 3(アットスリー)、e-CompactのDOLPHIN、ハイエンドe-SEDANのSEALの3モデル。2023年1月を皮切りに、ATTO 3(アットースリー)から販売を開始する。このモデルは本国でも今年2月に発売されたばかりで、豪州、シンガポールなどに次いでの展開になる。



このATTO 3(アットスリー)のスペックから紹介すると、全長4,455mm、全幅1,875m㎜、全高1,615mm、最高出力150kW、最大トルク310Nmを発揮する電気モーターを搭載。前輪駆動で航続距離は485kmに達するという。

そもそもBYDとは?


BYDは、1995年中国深圳でバッテリーメーカーとして設立後、携帯電話のバッテリーサプライヤーとして業績を拡大、2003年には中国の国営自動車事業に参入し、BYD汽車を設立。2005年には日本法人を設立した。2009年に乗用車を量産、2010年にはEVバスやタクシーを生産。同年、ダイムラーAGとの合弁会社設立し、2015年には、中国メーカーとして初めて日本にEVバスを納入したというヒストリーをもつ。

2015年から2018年まで4年連続でNEV(New Energy Vehicle)販売台数世界1位を誇る。2016年には、アウディのトップデザイナー、ウォルフガング・エッガーがデザイン部門のトップに就任し、2019年にはBYDグローバルデザインセンターがオープンしている。

6大陸、70カ国以上、400超の都市で、EV、PHEVを展開。主にEVトラック、EVフォークリフトなどの商用車を含めた展開をしており、2021年NEVの累積販売台数が200万台を突破した。2021年のグローバルにおけるBYDグループ全体の売り上げは、約4.1兆円。乗用車は2021年、前年比220%増の約60万4000台のNEVを販売。2022年1月~6月には、前年同月比の3倍超の約64万台を販売し、NEV販売台数世界一と文字通り破竹の勢いで成長し、鼻息が荒い。

そして2022年、ついに日本の乗用車市場へ進出。車の長き歴史から見れば数十年だが、その成長の速さはまったく目を見張るものがある。

販売台数が世界一というわりには、日本ではあまり見かけないなと思っている読者もいるかと思うが、商用車としてのEV乗用車、EVバス、EVトラック、EVフォークリフトなど、幅広いeモビリティをすでに提供しており、例えばEVバスは日本国内シェア7割を超える。実際、筆者が住むエリアの路線EVバスはBYDだ。

特にEVバス、EVフォークリフトなどに採用されているのなら、その公共性や安全へのさまざまな配慮はお墨付き、実績は十分だろう。つまり今回の発表は、満を持して自家用車への分野に参入ということになる。

「対面販売でEVを納得していただく」


それでは今後はどのようにしたら、私たちはBYDのEV乗用車と出会えるのか。EVだからオンライン販売も当然と思いきや、販売は代理店を通じて、乗用車の販売とアフターサービスを提供できる対面販売ネットワークを構築するという。実際に見て、触れて、試乗するといったリアルでの体験の上、購入検討をしてもらうことを重視するとのことである。

2025年末までに全国100以上のディーラーと提携し、リアルの場での販売を進めていく。ただし、現時点で提携先となるディーラーは公開されていない。ディーラーの店舗には充電設備を用意し、外出先での充電スポットの不足を懸念する消費者にも対応するという点は心強い。

多くのメーカーがひしめく日本で、このタイミングでの参入。今後のインフラ整備のことも当然念頭に置いているだろうが、BYDが新開発したEV専用「e-プラットフォーム3.0」を採用するなど、製品自体の優位さと自信を垣間見ることができる。



車両価格の高さ、充電設備不足、航続距離の不安、ラインナップの少なさ等が、日本におけるEV普及におけるハードルの高さとして挙げられる。世界中で高い安全性、航続性能を持ったボディ、手が届きやすい価格で展開してきたと自負するBYDは、今後その日本のハードルをひとつひとつ打開していくとのことだ。

まだ日本での価格は発表されてないが、会場では「多くのユーザーにとって手に届きやすい価格で提供したい」というコメントが聞かれた。


「これからの時代は、EVを買うか買わないかという選択をする時代ではありません。EVをいつ買うのかということです」。そう語ったのは、BYDジャパンの劉 学亮代表。

EVの準備は万全。インフラだけが取り残されているとも聞こえるが、果たして走る楽しさを感じることができるのか。EVのロングドライブが今から楽しみである。2022年11月に発売のタイミングに先行してATTO 3の価格を発表。その後、受注を開始する予定だ。


「ATTO 3(SUVモデル)」2023年1月発売予定
全長4,455mm、全幅1,875mm、全高1,615mm、最高出力150kW、最大トルク310Nmを発揮する電気モーターを搭載。前輪駆動で航続距離は485km。

「DOLPHIN(コンパクトモデル)」2023年中頃発売予定
全長4,290mm、全幅1,770mm、全高1,550mm、最高出力 スタンダード70kW、ハイグレード150kW。前輪駆動で航続距離はスタンダード386km、ハイグレード471km。

「SEAL(セダン)」2023年下半期発売予定
全長4,800mm、全幅1,875mm、全高1,460mm、最高出力 スタンダード230kW、ハイグレード160kW(フロント)+230kW(リア)。前輪駆動で航続距離は、スタンダード、ハイグレードともに555km。

オクタン日本版編集部

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