次の15万kmへ!|30年間ワンオーナーのホンダNSX リフレッシュ大作戦[前編]

Fuyuki HYODO

同一の基本骨格で15年間生産された初代NSXの残存率は、約80%にのぼるが、リフレッシュプランを施すことのできる場所は唯一、栃木にしかない。走行距離15万km超のNA1型がエンジンから足回りまで徹底的にリフレッシュする様子をリポートしたい。



2代目ホンダNSXが、本年をもって販売終了する。3.5.のV6ツインターボエンジンと高効率モーターを内蔵し、9速のDCTを組み合わせる現行モデルは、新たな時代のスーパースポーツとして誕生したが、2016年8月のデビューから6年で、その歴史に幕を下ろすこととなる。最終バージョンとなる「Type S」は既に予約終了となっており、これから購入することは事実上不可能となった。

初代NSXが販売開始されたのは1990年のことだった。MRレイアウトに軽量なオールアルミボディという、従来のホンダ車とはまったく異質な存在で、国内では和製スーパーカーとして、北米ではAcuraブランドのフラッグシップとして好評を博した。2005年までの15年間にわたって、フルモデルチェンジをおこなうことなく販売が続けられた。

田窪さんの愛車は前期モデル。オールアルミのモノコックボディは、高剛性化と200kgの軽量化につながった。塗装はもともとブラックだが、数年前に再塗装済み。

本誌の寄稿者でもある田窪寿保氏は、このNSXを新車で購入した1人である。全く乗らない時期も数年あったものの、購入からの31年間でコツコツと積み上げた、15万km超の歩みを共にしてきた。そんな相棒を、さらにこれから15万km乗り続けるために、リフレッシュを試みることになった。



納車当時の田窪青年と、ホンダベルノ新・東京港店。当時は納車式が行われ、花束が贈呈されたという。

マフラーを交換した以外はフルノーマルの状態で、これまで大きな事故や故障はなく、定期的にディーラーでの整備が施されている。直前に東京から奈良まで往復1300kmのドライブを楽しんだばかりとあって、パワートレインや足回りなど走行性に大きな問題点はなさそうに感じる。ボディの小傷や樹脂部分の劣化は多少みられるものの、外観の状態も比較的良好だ。ただ、内装は経年を感じる状態で、特にシートの損耗やへたりは気になるところだ。

ハンドルやシフトレバーを除けば、フロントパネルの状態は31年経過した車両に見えないものの、湿気や紫外線で劣化は進んでいる。

最大の懸案が、痛みがはっきり目立つ運転席のシート。

田窪さんが一貫して整備を依頼しているホンダカーズ東京中央 港店の佐々木悠さん(左)。NSXのパフォーマンスディーラーに指定されている。

部品探しに数カ月、入庫は1年待ち


NSXのリフレッシュは、全国のホンダカーズが窓口となる。まず田窪さんがNSXを購入し、日常の整備を依頼しているホンダカーズ東京中央 港店を通して、リフレッシュの打診をおこなった。販売会社が車両点検やチェックシートの記入などをし、それを元にリフレッシュセンターのスタッフが出向いて車両の事前診断を実施したあと、見積もりが提案され、ようやく作業内容が決定する。

田窪さんの場合は足まわりと内装のほか、アンチロックブレーキ、パワーステアリング、ミッション、エアコンのプランを希望していたが、リフレッシュセンターから追加で、開口部まわりのゴム類一式と灯火装置、エンジンとウインドウガラスの交換などが提案された。経年劣化が避けられないブッシュなどのゴム部品や樹脂部品の交換、鉄で作られて錆が発生している部品の交換、オイルのにじみが見られるエンジン回りの点検など、いずれも納得感のある内容だ。

しかし顧客が望んだ内容の整備を、すぐに実施することはできない。30年前の車ゆえに、まず部品を手配するだけで数カ月の時間がかかってしまう。社内に保管されているパーツの数や種類は限られており、サプライヤーに製作を依頼しようにも、金型や治具が残っていないことがある。

そもそも、新車時とまったく同様のパーツを用意できない部分もある。ガラスはオリジナルのブルーガラスが既に製造されていないため、高熱線を吸収するUVカットガラスへの交換となる。いわゆる運転焼けを防止するとともに、紫外線による内装の劣化を防ぐ優れものだ。塗料も純正では水性だったが、作業性や設備の都合から、ウレタン塗料が使用されている。

たとえ材料が順調に揃っても、少人数の熟練工が手作業でおこなうため、1度に多くの台数を捌くことができない。年間に作業できる台数は12~13台程度。入庫待ちは平均約1年で、施工にはそこから3~6カ月程度の時間がかかる。

オクタン日本版編集部

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