イギリスの潜水艦の歴史がわかる|王国海軍潜水艦博物館

ARAMY

車雑誌なのに潜水艦?と思った方もいるだろう。ただ、読者諸兄の多くはメカ的なものなら何にでも少なからず興味があるはずだ。潜水艦は、そういう意味で実に興味深い。たとえば、ロンドンバスのエンジンを搭載した小型のX艇や、車よりもっと前にハイブリッドエンジンを搭載していた潜水艇などがあるのだから。

王国海軍潜水艦博物館は、ポーツマスのそばのゴスポートにある立派な海軍施設に囲まれた場所にある。40年前に設立され、2001年にはホランドワンの施設がオープンするなど、数々の変遷を経てきている。近代的なビジターセンターを擁する、華々しいジョン・フィールドハウスの施設も追加され、今後もさまざまなプロジェクトが計画中だ。

まず、ホランドワンのギャラリーから見てみよう。この未来的な外観の船は、1901年に完成した王国海軍初の潜水艦だ。ガソリンエンジンが装備されているが、潜水時には電動モーターで進行する。そう、なんと既にハイブリッドエンジンだったのだ。

1913年にホランドワンは、ウェールズのサルベージ ヤードに向かう際に沈没した。1981年に発見され引き揚げられたが、長期間に渡る議論の末にこの博物館で展示されることになった。今では、8人の乗組員の作業場所が見えるように各部分が展示されている。これらの潜水艦黎明期には、イギリスでは潜水艦が”紳士らしくない”と考えられており、戦争で潜水艦を使用することをためらっていたと言われている。

ビジターセンターに向かうと、 潜水艦HMS X24が出迎えてくれる。これは、第二次大戦後たった1艇のみ現存する、Xクラスの小型潜水艦だ。51フィートの胴体で、目標物の近くまではフルサイズの潜水艦に牽引される。そして、3〜4名の乗組員がこうした小型潜水艦に乗り、アマトールを配合した2機の2トン分のかごを目標物下部の海底に落とし、その後爆発させる。海上ではガードナー製42馬力のバス用エンジンを使用し、潜水時は電気モーターを使う。これらの潜水艇はD-デイで重要な任務を担当し、侵攻前の各沿岸を調査した。そして、D-デイの戦艦らへの指示の発信地となった。

当時の船旅の恐ろしさを物語る本物の海賊旗。

ここには、他にも興味深い展示がある。さまざまな海賊旗や、フォークランド紛争で使用されたHMSコンカラーの船長室などだ。また、世界で最初に造られたという潜水艦のレプリカもある。亀の甲羅を2つ並べたような形状から、タートルと名付けられていた。アメリカ独立戦争の際、王国海軍の戦艦の船体に爆弾を取り付けるために製造されたが、失敗に終わった。それでも、プロペラを装備したおそらく世界最初の船だ。人間の手でペダルを操作し、垂直にも水平にも移動することができた。

世界初の潜水艦と言われる、タートルのレプリカの切断面からは、手動のプロペラが見える。

もうひとつの展示エリアでは、現代の原子力潜水艦艦隊について学ぶこともできる。そしてメインフロアでは、ポラリスミサイルの下に座り、飲み物やスナックを楽しんでみよう。すぐそばの売店は品揃えが豊富だ。

この博物館の注目の展示は、HMSアライアンスだ。1945年に製造が開始され、その後総数5300艇が配備中に沈没しているという。単独で観覧するのもよいが、元潜水艦乗組員にガイドしてもらうこともできる。彼らは、この281フィートの艇などの配備に就いていた。65人の乗組員のほとんどが、胴体の前方半分で生活していた。ディーゼルと電気のエンジンで悪臭を放つ船尾や、通気孔とミサイル発射口から離れた部分であるからだ。食器棚程度のサイズしかないキッチンで料理人が働き、周囲のすべての棚に食料が積み上げられていた。大量の計器やバルブなどが並ぶ管制室も、とても狭い。実際に座ってみると、海底で水中爆雷の雨が降り、凝縮液が漏れる様子を想像することができる。本館でのフィルム上映は、戦前と冷戦時代の内容で、アライアンスの26年に渡る配備の様子が紹介される。

乗組員たちは皆勇敢であった。この施設を見終えたとき、彼らに敬礼したい気持ちになるのは当然だと思う。

王国海軍潜水艦博物館
住所: Haslar Jetty Road, Gosport PO12 2AS
営業時間:水曜〜日曜、午前10時〜午後4時30分
入場料:一日券 大人24ポンド、子供19ポンド
特別料金や追加情報は下記サイトを参照
nmrn.org.uk/plan-your-visit-royal-navy-submarine-museum
近隣に大型の無料駐車場あり
ポーツマス湾からの水上バスも利用可


Words and pictures: Barry Wiseman まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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