世界で最も美しいレース「ミッレ ミリア」|2022年のスタートを現地からレポート

Octane Japan


シーリングを終えた参加車両は、スタート前のランチをとるためにミッレ ミリア・ミュージアムへと向かった。ここで筆者にとって嬉しいハプニングが発生。筆者はヴィットリア広場で一行の出発を見送る側だったのだが、“チーム・ショパール”でフィアット1100をドライブするマーティン・シグリスト(スイスから参加のジャーナリスト)とジャン-リオネル・ディアス(フランスから参加のフォトグラファー)から、ランチ会場まで同乗しないかと誘われたのだ。願ってもないチャンスとばかりにリアシートに乗り込む。小さなフィアット1100に大柄な男性2名が体を押し込んでいる姿は少しユーモラスで、ドライバーのマーティンも「日本のK-Carみたいに可愛らしい車だろう?」と笑う。

車内から見る景色は、外から見るのとはまったく違う。マーティンとジャン-リオネルの厚意に感謝!

ミッレ ミリア・ミュージアムに参加車両が続々と集合する。博物館級の車が、博物館の駐車場を占拠している様子に圧倒される。ここで参加者たちは午後のスタートに向けて英気を養っていた。






スタート地点、ヴェネツィア通りの様子


2022年のミッレ ミリアのエントリーリストには、カーナンバー1~440までが名を連ねている。400台以上の車両が1台ずつ、一定の間隔をおいて出発していくわけだから、最後尾の車両がスタートするまでには何時間もかかることになる。ヴェネツィア通りにあるスタート地点で声援を送る人もいれば、通りにカーナンバー順に並ぶ車両を撮影したり、座ってのんびりスケッチに興じる人もいる。観客それぞれがミッレ ミリアを楽しむ術を心得ているようだ。

カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏も、いざ1600kmの道のりへとスタート(©1000 Miglia)

スタートのステージへ向かう#258 木村 英智・黒澤 哲ペアの1953年オースティン・ヒーレー 100/4。

#430 ケン・オクヤマ・斉藤 大輔ペアは1957年アバルト 750 BERLINETTA ZAGATOで参加。これはスタート前のひとコマ。





4日間の美しくも過酷な旅


今回、筆者が実際に現地で取材をしたのは初日のみで、スタート前後の楽しく明るく鮮やかな様子をこの目で観ることができた。しかし実のところ、ミッレ ミリアの醍醐味はここからだ。楽しく美しいばかりがミッレ ミリアではない。13時30分にスタートした先頭車両が約300kmの行程を経て初日のゴール、チェルビア=ミラノ・マリッティマに到着するのは夜も更けた22時30分。全車両が到着するのは深夜になる。

©1000 Miglia

2日目のスタートは6時10分で、ローマに到着するのは21時だ。

©1000 Miglia

3日目も早朝の6時45分にスタートする。約500kmを北上し、この日のゴールであるパルマには20時45分に到着。

©1000 Miglia

最終日の走行距離は若干短く約150km。6時15分にスタートして、途中でモンツァ・レースサーキットに立ち寄り、トリッキーなタイムオートテストを行ったのち16時30分にブレシアへと帰還する。

©1000 Miglia

©1000 Miglia

もちろん天候はいつも快晴とは限らない。屋根のないバルケッタを含めた参加車両は突然の雨にも負けることなく、およそ1600kmを走破する。走行時は46台の白バイと6台のパトカーが随時エスコート。このラリーで行われるタイムトライアルは実に115回にも及ぶという、美しくも過酷なレースなのだ。

しかし過酷であるがゆえに、ゴールしたときの達成感は言葉にならないほどのものであろうことは想像に難くない。参加者の言葉を借りれば、道中は車が故障しないかハラハラし、早く終わってほしい、と祈るような気分だったはずが、完走した瞬間には翌年のミッレ ミリア出場を待ち望んでいるという。そんな抗いがたい魅力が、ミッレ ミリアにはある。

©1000 Miglia

今回、ゴールシーンをライブストリームで観ていて気付いたことがある。男女ペアでの出場の場合、ゴール時には女性がステアリングを握っているペアが多かったように思う。以前、カール-フリードリッヒ・ショイフレ氏はミッレ ミリアについて「結婚する前に一緒に参加すると、お互いのことがより深く理解できる」といった旨のことを仰っていたが、たしかに1000マイルを旅し、苦楽を共にすれば、パートナーとの絆はより深まるに違いない。互いをリスペクトし、フィナーレは女性に華をもたせて感動を分かち合う。なんと素敵な4日間なのだろうか。筆者もいつか、全行程の全シーンをこの目で観たいものだ。きっとすべてのシーンが最高にドラマティックだろうから。


オクタン日本版編集部

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