シューマッハやパトレーゼも駆ったベネトンの名マシン「B193B-04」がオークションに登場

Bonhams

6月24日からイギリスで開催されるGOODWOOD FESTIVAL OF SPEED COLLECTOR'S MOTOR CARS AND AUTOMOBILIAオークションに、F1で史上最長のキャリア(1977年から93年の16年間)を築いたリカルド・パトレーゼと、モータースポーツ史に残る伝説、7度のF1世界チャンピオンドライバー、ミハエル・シューマッハがドライブした非常に貴重な1990年代のF1マシンが登場する。



このマシンは、モータースポーツファンの間でよく知られた二人の偉大なF1ドライバーがハンドルを握っただけでなく、ここ18年間も定期的に実走行できる状態に保たれている。つい数カ月前にもグッドウッド・メンバーズ・ミーティングにてその走りが披露された。

1993年当時、ベネトンF1チームのチームメイトだったミハエル・シューマッハとリカルド・パトレーゼがこのマシンでテストドライブを行った。最も印象的だったのは、その年のイギリスGPの予選だ。伝説的なドイツのスーパースターがこのマシンを使用し、当時優勢だったアラン・プロストとデイモン・ヒルのウィリアムズ・ルノーを抜いて3番手となった。そして最終的には、ウィリアムズ・ルノーFW15Cのアラン・プロストが優勝、ベネトン・フォードB193Bのマイケル・シューマッハが2位、そしてそれに続く3位で、このシャシーB193B-04は表彰台を獲得している。



この年のF1世界選手権では、リカルド・パトレーゼがスペインで4位、フランスではレース中断の末に10位となった。モナコGPでは、モンテカルロの歴史的な街並みを5番手で走行した後、エンジントラブルでリタイアしている。

その後、モントリオールのイル・ド・ノートルダム島で行われたカナダGPでは、リカルド・パトレーゼが序盤の7位から5位に浮上し、9周までそのポジションをキープした。しかし、レース中盤でスピンしてノーズを負傷、修復のためピットに戻った。リカルドはレースに復帰したが、レースの後半に右足が激しく痙攣してしまい、結局再びピットに戻って53周目にリタイアした。

ポール・リカール・サーキットで行われたフランスGPでは、アクシデントやピットストップによって10位となり、世界選手権のポイント圏外に転落してしまった。しかし、このフランスでの結果を除けば、このベネトン・フォードがグランプリを完走したときは、常にポイント獲得圏内という結果を残している。

ベネトン・フォードB193Bは、ロス・ブラウンとローリー・バーンによって設計された。彼らは後にミハエル・シューマッハがベネトン(1994年)、そしてフェラーリでワールドチャンピオンを獲得した際の技術ブレインである。



このマシンは、ベネトン・チームのエンストン工場で製造された最初のカーボンコンポジット製モノコックシャシーを中心に組み立てられた。1993年のF1レギュレーションでは、それまでよりも細いサイズのタイヤが義務づけられたため、ブラウンとバーンは、当初想定していた1992年型の大幅なデザイン変更ではなく、新しいマシンを用意する必要があると考えた。

ロス・ブラウンはこう振り返る。
「新しいテクノロジーをすべて取り入れる必要があることは、最初からわかっていました。これは非常に大きな負担となり、正直なところ、予想以上に苦労しました。しかし、後戻りはできず、ただひたすらやり遂げるしかなかったのです」



このマシンをオークションに出品したのは、熱心なF1ファンで、特にベネトンのエンスージアストだ。オリジナルのコスワース・フォードHB V8エンジンと、ベネトンのギアボックスが搭載されているこのマシンは、トラブルフリーのデモカーとして改造されたため、エンジンは当時のような完全なレースチューンではなく、維持やメンテナンスがしやすいように若干デチューンされた状態になっている。フルレース仕様のF1エンジンは、ハードに走らせれば爆発寸前の手榴弾のようなものであることは言うまでもない。



パッシブ・サスペンションは、メンテナンス性と走行信頼性のために装備されているが、同時期に問題となったベネトンの自動始動制御システムは搭載されていない。HBエンジンは、第一人者であるディック・ラングフォード氏の尊敬するLPE社によって定期的にメンテナンスされている。このシャシー04に搭載された特別なユニットは、1993年の「兵器級」とも言えるようなオリジナルではなく、実績あるMotec電子管理システムを装備している。

グッドウッドやシルバーストン、南アフリカのダーバンでは、フェラーリの1979年世界チャンピオン・ドライバー、ジョディ・シェクターが「トップギア」のTV撮影のために運転し、日本の鈴鹿ではホンダがバックアップするイベントで運転されるなど、数多くのF1デモンストレーションをこのマシンが成功に導いている。グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、リカルド・パトレーゼ自身がこのマシンで再登場し、グッドウッドサーキットを何周もし、あの有名なグッドウッドヒルを何度も登り、現代のどのF1マシンよりも多くグッドウッドを走行しているのだ。



この車には、レースとテストの履歴を含む包括的なドキュメントファイルが付属しており、さらに、レースごとに変化してきたデカールやマイナースポンサーの位置、デザイン、製品や会社のタイトル、貼られた広告デカールやカラーリングスーツなどの細かい情報もそのファイルに保存されている。新しいオーナーは、アルバムに収録されている広告やカラーリングの中から、好きなものを選び、好きなときに変更することができるのだ。

さらにシャシータブとシートモールにはリカルド・パトレーゼのサインが入ってる。パトレーゼ自身のシートベルトは、彼の調整位置の線とイニシャル "RP "が記され、もう一組のオリジナルシートベルトには "RP "とミハエル・シューマッハの "MS"(シルバーストーンでのイギリスGPの予選走行とテスト時に使用)が記されている。さらに、ギアボックスケーシング、ホイール2個、ラジエーター2個、ステアリングラック2個も付属している。





このベネトン・フォードB193B型F1マシンは、現在世界でわずか2台しか走っていない。このマシンは売主曰く、「普通の人」なら整備、操作、走行できるようにセットアップされているそうだが、間違いなくこの車は、シューマッハやパトレーゼといった往年のグランプリの名手が、当時どれほど有能だったかを新しいオーナーに十分に理解してもらうために、ピーキーな本性をすぐに露わにするだろう。



最低落札価格は1億5500万円と予想されているが、往年のF1マシンを操るためには必要なのは、大金だけでないのは間違いない。




オクタン日本版編集部

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