ヨーロッパ最大のクラシックカメラの祭典「Foire internationale à la Photo」に潜入!

Tomonari SAKURAI

パリ近郊の街ビエーブル。ここにフランス写真美術館が出来たのは1964年のこと。開設者であるジャンとアンドレ・ファージはこの街に写真のすべてを取り入れたいとフォトフェアも開催した。その最初の会にはマン・レイも作品を販売したらしい。フェアは年々大きくなり今ではフランスはもとよりヨーロッパ最大のフェアとなった。Foire internationale à la Photo。ヨーロッパ中からディーラーが集まりクラシックカメラを販売する。そのためアメリカや日本からも多くの来場者が訪れるまでになった。さすがにコロナの残り香がまだある日本からはほとんど来場者は見かけなかったが。コロナといえば、フランスはワクチンパスポートやマスクの義務はなく、イベントなども制限なく行えるようになった。もうコロナは過去のこと。コロナの話しをする人などいないというほどまで普段の生活に戻っている。

会場では盗難防止のためにカゴに入れられているブースが多い。カゴから救ってやらなければという心理も働く。

カメラだけではない。写真のプリントも販売されている。日本で撮影された写真も多く扱われていた。

お天道様の下で行われる青空市。お目当てのカメラやレンズを探す人。掘り出し物を探す人。カメラだけではない。写真のプリントや作品の販売もある。今回僕が楽しみにしていたのはコロジオン、写真湿板で撮影してもらうこと。以前来たときにポーランドから大判カメラと移動暗室を持ち込んで撮影していたのだ。そのコロジオンを生で見たいのと、撮影してもらいたいというのもあったのだが、そのポーランド人はおらず代わりにストロボや背景も用意した本格的なスタジオを設置したスタンドがあった。フランスのブルゴーニュ地方にスタジオを構えているという。ブルゴーニュ地方といえばニエプスが世界で初めて写真を撮った場所だ。

写真湿板、コロジオンで撮影してくれるスタジオだ。www.enzolucia.com

コロジオンの撮影をする横ではサイアノタイプのデモンストレーションを行っていた。もうそれだけでここに来る価値があるというモノ。クラシックカメラのブースの間にフィルムを売るスタンドがいくつかある。そうだ。クラシックカメラにはフィルムがいる。フィルムはどんどん製造されなくなってしまっている。そんな中で個人やショップでフィルムを何とか製造しているのだ。

サイアノタイプ。写真のネガを使えば写真となるが、元はと言うと採取した植物を保存する薬品を探していて偶然見つかった技法。ということで、植物をモチーフにした作品。サイアノタイプはこのブルーが特徴だ。

ここは、映画用のフィルムを手に入れそれをカットして販売している。カラーでもモノクロでも選ぶことが出来る。www.nationphoto.fr

日本で言うクラシックカメラと違って多くのブースではフィルムの出来る前の19世紀以前のカメラも多く見かける。多く、というよりも1/3はそれらを扱うショップなのだ。つまり、それなりの需要があるという事だ。奥の深さを感じる。

レンズが付いたモノはステレオカメラだ。18世紀からイラストを使って人気だったステレオタイプ。19世紀写真が登場するとそのステレオ写真が人気となったのだ。

コロジオンで撮影してもらったあと、乾燥に1時間ほどかかる。その間会場を眺めて廻る。来たときは、知り合いのショップの連中と「暑くてたまらん!」と言うほど天気は良かったのに、ちょうどコロジオンで撮影したあとあたりから雲行きが怪しくなってきた。あっという間に辺りは暗くなり、遠くで聞こえはじめたゴロゴロという音。その音が次第に近づいてくると一斉に慌ただしくないブースの皆が片付けはじめた。これが青空市の怖いところ。そんなことを言っていると稲光りと雷鳴が同時に起こるほどになり、バケツをひっくり返したような雨となった。コロジオンが乾くのを待つ間にこれほど天候が変化するとは…。乾いたコロジオンを受け取るとタンクバックにしまい込み、バイクでその場を去った。その雨は結局夜まで止まず、久しぶりに下着までびしょびしょになった。

娘とふたりでコロジオンで撮影。乾燥中。


写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

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