着々と電動化が進むボルボ|XC90/XC60の現在地

Photography: Ken TAKAYANAGI

ボルボのフラッグシップモデル「XC90」、そして人気の「XC60」がさらなる進化を遂げた。動力性能はキープしながらもきちんと燃費を向上させ、電動化の恩恵も十分に感じられる。さらにパッセンジャーにとっては優しい先進的な機能が追加されるなど、いまこのタイミングで購入検討するのに、まさに「いいとこどり」な印象のボルボXCシリーズ。パッケージとして、ほど良いバランス、そして一定の評価もすでに獲得しているデザインコンシャスなボルボの両ニューモデルを、吉田由美がレポートする。



「ボルボ」といえばスタイリッシュで温かみのある北欧デザインと安全運転装備のトップランナーで知られるエシカルな自動車メーカーですが、現在は電動化へまっしぐら。

他社に先駆けて「2030年までにEV専業メーカーになる」という宣言をし、EVでもトップランナーを目指しています。その動きは素早く、2020年7月からは日本で販売するボルボ車はすべて48Vハイブリッドとプラグインハイブリッド(PHEV)、そしてEVのみ。つまり「素」のエンジン車はすでに販売されていないのです。

そして今年1月にボルボのフラッグシップモデルの「90シリーズ」と人気の「60シリーズ」がアップデート!

今回試乗したのは7シーターのラグジュアリーSUV「XC90」とボルボの売れ筋SUV「XC60」のPHEVモデルで、正式名称は「XC90 リチャージ プラグインハイブリッドT8 AWD インスクリプション」と「XC60 リチャージ プラグインハイブリッドT6 AWD インスクリプション」。

少々車名が長いのですが、こちらを少し解説すると、「リチャージ」はPHEVとEVの両方に使われており、ちなみにEVは「リチャージ」、PHEVには「リチャージ プラグインハイブリッド」、つまり「リチャージ」とはボルボの電動化モデルの呼び名なのです。ちなみにリチャージの意味は、「再充電」。EVもPHEVも何度も充電しますもんね。

そして今回のアップデートのトピックとしては、
1. バッテリー容量倍増!従来モデルより6.2kWh増の18.8kWh「3Layer バッテリー」。EVでの走行距離も倍増の70~90㎞!
2. 2リッター直4エンジンにスーパーチャージャーの代わりにターボチャージャーの「CISG」(Clank Integrated Starter Generator)を導入し、出力を71PS(52kW)に。
3. リアのモーター(ERAD)の出力を+65%高い145ps(107kW)にし、回生ブレーキを効率化。
4. Google搭載車はワンペダルドライブが体験できるおまけつき(XC60のみ)

と、見た目はそれほど変わらないものの、乗り味は劇的に改良されたわけです。



それでは試乗です!

まずは「XC90 リチャージ プラグインハイブリッド T8 インスクリプション」。
やはりこの車の売りは、ラグジュアリー感。堂々とした広さと風貌はボルボのフラッグシップモデルに相応しい佇まい。ボルボ車というと、ハイセンスで「お洒落上級者」というイメージですが、その中でXC90は押し出し感の強いフロントマスク。ボルボの中では珍しく上品なオラオラ感が魅力。



以前、取材したモテモテの某お笑い芸人さんによると、レンジローバーをはじめ数々乗った愛車の中で、この車が最も女性にモテた車だったとか。

でもそれ、私、とてもわかるんです!

私の知り合いの有名ラジオパーソナリティの女性も、本人は車の免許を持っていないけど地方への移住をきっかけに旦那さまとボルボ車の購入を考えていて、最初は違う車種の相談をされていたのに、実際に購入した車は「XC90」。他メーカーとは違うクリーンなインテリアに、女性はイチコロなのです!(笑) そうそう!フロントグリルが、2020年モデルからグリルの縦バーとクロームが少し変更されたそう。



そしてボルボ唯一の7人乗り3列シート。シートは全体的に薄型でスタイリッシュなデザインですが、薄型のシートでも安全性はピカイチ。また、3列目のヘッドレストが大きめなのが目に留まります。



ボルボの安全装備で私がとてもいいな、好きだなと思うところは、エンジンスタートのスイッチを入れたときに他のボルボ車同様、安全装備の一覧が出るところ。

とても「守られてる!」ということを実感できるので。どんなに素晴らしい最先端の安全装備が付いていても、なかなかそれをパッセンジャーが実感することはないので、そんなボルボのアピールは大正解だと思います。



素材にもこだわったシンプルでモダン、そしてエレガントなインテリアと広い室内は、初めてボルボ車に乗った人なら一目で恋に堕ちるレベル。中でもスウェーデンの川に流木をイメージしたというインテリアパネルやシートのナッパレザー、スウェーデンのオレフォス社のクリスタルのシフトノブやダイヤルスイッチの美しさに目を見張ることでしょう。







パワートレーンも大幅に進化しています。エンジンは2リッター直4ガソリンにターボチャージャーが付いた「T8」ですが、こちらも進化しています。317ps/400Nmで、リアモーターとの合計は462ps。

スタートスイッチを回してスタート。もちろんこの時、エンジンではなくモーターで始動するので静か。中央にある縦型の液晶ディスプレイはタッチパネル式で、この中でほとんどの機能の操作が可能です。



ドライブモードは6つあり、「Constant AWD(四輪駆動)」「Pure(ECO運転)」「Hybrid(日常の運転)」「Individual(運転嗜好)」「Power(スポーティな運転)」「Off Road(未舗装路)」。こちら、見るたびに「微妙な言い回しだな」と思いつつ、意味は分かります(笑)

デフォルトは「ハイブリッドモード」で、アクセルを踏むとEVらしく、滑らかに動き出します。モード表示を切り替えると予想通りの変化で、「パワーモード」にすると一気にステアリングからの手ごたえが強く、重く感じられつつ、アクセルレスポンスやギアのシフトタイミングも素早く、加速感が強くなります。また、インパネのメーター表示の右側も同時にパワー表示からタコメーターの表示に変わり、それまでのおとなしいモーター走行からパワフルなドライブフィールに変わります。

全車、前席にシートマッサージ付き。シートの座面にあるスイッチでON。中央のディスプレイにシートの絵が表示され、シートの部位や強さを変えることが出来ます。これは少し見つけづらいのでご注意を。



そして今回の発見!さすがXC90と思ったのは、窓ガラスの開閉速度がスイッチの押し方で2段階あり、軽く押すとゆっくり、強く押すと速く開閉します。



ちなみにこの日の走行距離は103㎞。バッテリー残量は100%からスタートしてゴール時では41%。走行可能距離は810㎞スタートで450㎞となっていました。

ほとんどXC90に不満を持つ人は少ないと思いますが、XC90の弱点を敢えて挙げると、大きさサイズ故の取り回しと燃費だと思いますが、外部充電で70~90㎞のプラスαが加わるのは嬉しいですね。ちなみにお値段は1169万円です☆



文:吉田由美 写真:高柳 健

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事