1966年マスタングでイギリスからフランスへ|時間に追われないのんびり小旅行

Mark Dixon

『Octane』UK版に連載中の、編集部員や寄稿者による愛車日記「Octane Cars」。今回は、1966年フォードマスタングで、イギリスからフランスへと旅したマーク・ディクソンによるレポートをお届けしよう。



出国審査で車を止められ、係員がハンドルやドアハンドルを専用の綿棒で調べ始めたとき、私は一瞬、ドキッとした。この車は50年間、ロサンゼルスで暮らしてきた。過去に禁止薬物に接触している可能性はゼロとは言い切れない…と。

実は、後でユーロトンネルの係のお姉さんに聞いたところ、薬物ではなく爆発物のチェックだったらしい。でも、夕食時のいい話のネタになった。私と『Octane』のアートエディター、ロブ・ヘフェロンは、私の1966年フォードマスタングに乗り、他の6名のメディア関係者とともにプレスツアーでユーロトンネルを通ってフランスにやって来た。フードブロガーのカップル、オンラインのフェラーリクラブ主催者(彼の愛車は美しく磨かれた328GTSだ)、マクラーレンの広報車両に乗った高級雑誌の出版社、そして『Octane』のコラムニスト、スティーブン・ベイリーとその妻フロ、という多彩な顔ぶれだった。



このプレスツアーの行程は、これでもかというほどのんびりとしたものだった。ユーロトンネルのフレキシプラス・チケットを使えば、次の列車の時間を気にする必要がなくなるため、いつでも好きなときに戻ってくることができる。露骨な宣伝のように思われるかもしれないが、24時間運行している素晴らしいサービスであることは間違いない。

ツアー参加者たちには、チェックイン後にスマートなラウンジで、サンドイッチやケーキ、飲み物などが無料で振る舞われる。ロブと私は、ここで数時間、いや、数日分の食料をここで調達した。56年前の車で遠く離れた場所に行くのだから、「サバイバル食料」を携帯するのは当然だ。

もちろん、それほど遠くへ行くわけではない。北フランスは、『Octane』読者にとってはコーンウォールよりもずっと身近な存在だろう。ホテル ラ・フェルム・デュ・ヴェールは、数百メートル先にある同名のチーズ工房に隣接している。ホテルはその名の通り農場を改装したもので、とても美しく静かで、クレマンス・エス女史という非常にチャーミングな女性が経営している。



イギリスから近いとはいえ、私は当然、思いつく限りすべてのスペアパーツや工具を詰め込んできた。出発の2日前に衝動買いした新品のトロリージャッキもある。これは数カ月前にマスタングを悩ませ、新品のフロントスプリングパーチを装着して治ったと思っていた謎のサスペンション鳴きが再び発生したときに、その真価を発揮してくれた。

翌朝、ホテルでゆっくり朝食をとったあと、ロブと一緒にサスペンション鳴きの原因を突き止めようと前輪をジャッキアップした。ブルドッグ BDXスプレーを吹き付けても、残念ながら一時的な症状緩和にも至らなかった。このままでは、きしむ音を「聞こえなかったことにする」しかない。しかしトロリージャッキを持ってきたおかげで、冷静に対処することができたことは事実だ。

前日の夕食時にベイリー氏から聞いたアドバイスに従って、私たちはモントルイユ・シュル・メールの城塞都市に向かった。田舎道はさすがに空いており、風を感じながら走るのは楽しかった。マスタングの超軽量パワーステアリングと、重いノンアシストドラムブレーキの、二律背反である「お腹をさすりながら頭をなでる」ような奇妙な感覚にも、ロブはすぐに慣れ、マスタングのハンドルを握って運転を楽しんでくれた。



季節外れの好天に恵まれ、モントルイユを歩いて散策した後、再びマスタングに乗り込み、遅い昼食をとるためにル・トゥーケに向かった。バーやレストランが軒並み営業を終了してしまう午後3時以降に、ハンバーがショップを見つけられたのはラッキーだった。世界一高いのではと思うような値段だったが…



その後はカレーに向かってドラマチックで美しい海岸沿いの道を走り、夕方には目的地に到着した。そしてフレキシプラスのラウンジで軽く食事をして電車で周辺を巡ったら、あとは高速道路をひたすら走って帰るだけ。軋みはともかく、マスタングは60年代のアメリカ車らしく、信頼に足る車だった。464マイル走行中、オイルを漏らすこともなく、燃費は7.8km/Lだった。



ラ・フェルム・デュ・ヴェールでの滞在には、チーズ製造酪農の見学も含まれていた。残念なことに、その日はとても暖かく、チーズを持ち帰ることはできなかった。ラ・フェルム・デュ・ヴェールのルームチャージは89ユーロからと比較的リーズナブルなので、また訪れればいい。そのときにはプラグイン式の冷蔵庫を持参するつもりだ。

文・写真:Mark Dixon まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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