トライアンフの新型タイガーはまるで高性能SUVそのものだ

キャストホイールを装着し、オンロードでの快適性を優先した「タイガー1200GT」シリーズ。前後スポークホイールを装着しオフロードでの走破性を高めた「タイガー1200Rally」シリーズもラインナップ。(写真:高柳健)

120周年を迎えてなお、最先端を走るトライアンフの今とは


今年、ブランド創立120周年を迎えるトライアンフ。20世紀にイギリスの繁栄を支えた製造業を代表するこのブランドは、しかし歴史にあぐらをかくことなく、進化を続けてきた。現在はロードレース世界選手権(MotoGP)において、共通エンジンで行われるMoto2クラス全チームの全レーシングマシンにエンジン供給を行うパートナーブランドになっている。さらにはイギリス政府の研究資金助成機関「イノベートUK」から資金提供を受け、フォーミュラーEにバッテリーを提供するウイリアムス・アドバンスド・エンジニアリング社、モーターやインバーターを開発するインテグラル・パワートレイン社、そして世界有数の研究機関をもつウォーリック大学とともに英国の官民が一体となって開発を進めるスポーツ電動バイク開発プロジェクト「トライアンフ TE-1プロジェクト」を進めている。

255kgという車体重量は決して軽くはないが、車体を押し引きしたり走らせたりすると、車体は驚くほど軽い。マスの集中化によって、重量バランスの最適化が図られている証拠だ。

また2021年7月には、オフロードの競技車両開発とともに世界選手権への参戦を発表。オンロードバイクとオフロードバイクが、そのカタチやパフォーマンスが分かれて以降、オフロードとは距離を置いてきたトライアンフが、オフロードバイク競技の世界に戻ってくるというニュースは驚きをもって伝えられた。

これらのニュースでも分かるとおり、トライアンフはいま、バイク界でもっとも先進的で、野心的なブランドなのである。

7インチのカラーTFTディスプレイを標準装備。専用アプリを介してスマートフォンとディスプレイを接続可能。さまざまな機能を、バイクを介してライダーが共有できる。

左右に大きく張り出したラジエーターシュラウドや燃料タンクは、1200GTエクスプローラーの外観的特徴だが、ライダーが触れるタンクのヒザ周りやシート周りは細く、ライダーを威嚇したりはしない。

前後サスペンションは出力特性が異なるライディングモードに合わせてセッティングを変更するとともに、走行中も路面状況に合わせてセッティングを変化させ続けている。

速く、安全で、楽しいライディングを実現する「タイガー1200」


そのトライアンフの、最新のアドベンチャーバイクがこの「トライアンフ・タイガー1200」シリーズ。今回、東京の街中に連れ出したのは、オンロードでのパフォーマンスを高めた「タイガー1200GTエクスプローラー」だ。

バイクの世界はいま、最先端テクノロジーによって進化したマシンで溢れている。なかでもアドベンチャー・カテゴリーに属するモデルには、先進的な技術が真っ先に搭載される。あらゆる路面状況で、速く、安全で、楽しいライディングを実現し、それでいて長距離走行での快適性を確保するためには、エンジンも車体も、複数のバイクのキャラクターをもつ必要がある。それを実現するのは、先進のテクノロジーだからだ。また近年では、自動車では広く普及してきたADAS(Advanced Driving Assistance System/先進運転支援システム)をバイク用にアレンジしたARAS(Advanced Riding Assistance System)も開発され、各メーカーがアドベンチャーモデルに搭載を始めている。バイクという不安定な乗り物と、それを操るライダーをいかに支援するか。思想もシステムも、徹底的に練り上げられたそれらの新システムは、多様なシチュエーションで走るアドベンチャーモデルとの親和性も高い。

ヘルメット:BELL MX-9 Mips FastHouse
ゴーグル:DFG Speed Goggle× Race Lens
問い合わせ先:ダートフリーク https://www.dirtfreak.co.jp/moto/


PAUL&SHARKはイタリアのスポーツブランド。独自の技術で風雨をシャットアウトするアウターシェルを持つヨットマンパーカーは、シンプルでスタイリッシュなラインが特徴。

長いサスペンションを活かして、加減速で車体をしっかり前後に動かすと、車体は驚くほど軽く向きを変え、加速する。電子制御技術満載ながら、バイクを操る感覚はまったく薄まっていない。

テクノロジーはいまやファッションの重要要素となっている


テクノロジーは、ファッションの世界においても重要な要素となっている。近年、いくつかのラグジュアリーブランドがアウトドア&スポーツブランドとのコラボアイテムを次々に発表していることも、テクノロジーがファッション界に侵食している証拠だ。ファッションブランドはこれまでも、高性能素材を取り入れてブランドバリューを高める努力を行っていたが、よりシンプルに、よりダイレクトに、そしてより強く、自らのブランドのファンはもちろん、ファッションから遠く離れた場所にいる企業やコミュニティにも向けて、自分たちがテクノロジーとともにあることをアピールしたのである。なにせ厳しい状況下で使用することを前提としたアウトドアおよびスポーツブランドのアイテムたちは、素材においても、各アイテムの構造においても、なんならそのアイテムを造るブランドの哲学や製造工程においても革新的である。そんなブランドとタッグを組むことは、彼らが切り拓く革新性を手に入れることに等しいからだ。

テクノロジーが時代を変えてきたのは、いつものことだ。しかしいま求められているテクノロジーは、環境に対してもよりシビアで、コミュニティに対してよりフレンドリーで、そして社会に対してサステナブルでなくてはならない。そして、そういった新しいテクノロジーに対して、若いZ世代も敏感だ。高い環境に対する意識を満たし、自分たちの未来に欠かせないものとして、テクノロジーを捉えているのだ。

より長い旅を意識した設計となるエクスプローラーモデルは30リットルの燃料タンクを採用。しかし車体周りのシェイプアップやさまざまなデザイン手法によりそれほど大きく感じない。

タイガー1200シリーズはシャフトドライブを採用。チェーンに比べて重くなるというデメリットはあるが、泥や砂などが駆動系に噛み混むリスクもなく、メンテナンス性も良好。独自のマウント方法で特有の癖も解消されている。

トライアンフ独自の3気筒不等間隔爆発エンジン/Tプレーンエンジンを開発したことにより、低回転域の操作性の向上とともに、オフロードでの走破性向上も実現している。

先進のテクノロジーが若い世代をも魅了する


ミレニアム世代のトライアンフにとって「タイガー1200」シリーズは、アドベンチャーカテゴリーに切り込んだ野心的モデルファミリーであり、「タイガー1200GTエクスプローラー」こそはトライアンフの最先端技術を結集したモデルである。2022年モデルとして発表した「タイガー1200」シリーズは、エンジンやフレームを一新。走行中の路面状況を判断して、最適なセッティングを常に提供し続ける電子制御サスペンションほか、先進の電子制御技術にくわえ、エクスプローラーモデルにはレーダーセンサーによって後方死角にいる後続車の存在を知らせるブラインド・スポット・レーダーといったARASも組み込みんだ。

なによりトライアンフ伝統の並列3気筒エンジンの最大の特徴である、3つのピストンが等間隔で爆破することによる低振動および滑らかな出力特性を捨て、Tプレーンと呼ぶ不等間隔爆発の並列3気筒エンジンを開発、オフロードにおける走破性を高めることに重きを置く決断をした。伝統という殻を破ってまでも、である。



トライアンフ独自の3気筒不等間隔爆発エンジン/Tプレーンエンジンを開発したことにより、低回転域の操作性の向上とともに、オフロードでの走破性向上も実現している。


「タイガー1200」シリーズを操ることはつまり、スタイリッシュだ


しかし東京の街中を走らせた「タイガー1200GTエクスプローラー」は、そんな歴史的ブランドの気合いや、新しいコトやモノがもつ気難しさを一切感じさせない。交通量の多い平日の官庁街や、複雑に入り組んだ繁華街や、継ぎ目が多く路面が荒れている首都高速という、コンディションが異なる場所を走っても、その印象は変わらない。

そのテクノロジーとエンジニアリングによって構築された、そこはかとない懐の深さからくるライダーの心の余裕は、同じく多彩なコンディションを走りきるSUVを走らせたり、モードから秘境地まであらゆる場所で快適で個性的なスタイルを造り上げるスポーツブランドのアイテムを羽織ったりしたときと同じ感覚だ。

テクノロジーはライダーの心を豊かにする。PAUL&SHARKのヨットマンパーカーを羽織り、タイガー1200GTエクスプローラーで都内を流し、そんなことを感じたのだった。


文:河野正士 写真:高柳健


TIGER 1200 GT EXPLORER
SPECIFICATIONS

サイズ:全長×全幅×全高=──×849×1436mm
シート高:850-870mm
ホイールベース:1560mm
乾燥重量:255kg
タンク容量:30L
排気量:1160cc
タイプ:水冷4ストローク並列3気筒DOHC12バルブ
最高出力:150PS(110.4kW) / 9,000rpm
最大トルク:130Nm /7,000rpm
駆動方式:シャフトドライブ
トランスミッション:6段MT
価格:254万9000円(税込)
URL:https://www.triumphmotorcycles.jp/bikes/adventure/tiger-1200-gt/tiger-1200-gt-explorer-2022

トライアンフ
https://www.triumphmotorcycles.jp/

文:河野正士 写真:高柳健

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