市販化されてほしかった!自動車史に残るミニバンコンセプト、AMC AM バン

(C) 2022 Courtesy of RM Sotheby's

1970年代後半、最も魅力的なアメリカのコンセプトカーのひとつであるAMバンは、社会的、経済的、政治的混乱期において、イノベーターとしてのイメージを高めようとするアメリカン・モーターズ・コーポレーションの大きな挑戦の一部であった。1973年の石油危機をきっかけに、ロイ・チェイピン・ジュニア会長は、アメリカ人がより小型で燃費のよい車を求めるようになり、それにふさわしいスタイル、快適さ、アメニティを備えた車が求められるようになると考え、AMCをその先頭に立たせようとしたのであった。

AMX、ジャベリン、ジープチェロキーなどの人気デザインを手がけたリチャード・ティーグが率いるAMCのデザイン部門は、以降10年間におけるAMCの先進性を示すため、1977年に主要7都市で行われた北米プレスツアー「コンセプト80」で発表する6台のコンセプトカーを開発した。コンパクトなハッチバック、ジープウィリスを思い出させる小型オフロード、バック・ロジャースを連想させる小型の電気自動車、そしてこのAMバンである。



なかでも、出口調査で圧倒的な支持を得たのが、AMバンだ。フレアフェンダー、深いフロントエアダム、大型サイドパイプ、肉厚なタイヤを履いた豪華なワイドホイールなど、近未来のマッスルカー的な雰囲気が漂っている。AMバンはあくまでもデザイン・スタディとして発表されたため、ウッドフレームとグラスファイバーのボディに、ドライブトレイン、ドア(実際に開けることはできない)、そしてスモークウィンドウで覆われたインテリアを備えた、スタイリング・バックであった。



コンセプトは「コンパクトで広々、3人乗りの車」。パワートレインには4輪駆動を採用し、小型ながらパワフルなターボエンジンを搭載する可能性を示唆した。AMバンのコンセプトは市販されることはなかったが、Concept 80での人気は、知らず知らずのうちにミニバンと四輪駆動の大量普及を予感させるものだった。そのため、自動車史に残るユニークな作品となっている。





5月22日~6月1日にかけて開催されるRMサザビーズ主催のオークション、「SAND LOTS」に出品されたAMバンは、1977年にAMCのデザインスタジオを出発して以来、35年間、有名なコンセプトカーコレクションに保存され、オリジナルコンディションを保っている唯一のモデルだ。その魅力的なデザインと歴史的な意義から、近年ではギルモア博物館やケノーシャ郡歴史協会でのAMCの展示など、複数の博物館で展示物の中心的な役割を担っている。今回のオークションは、個人コレクターや博物館にとって、最も有名なアメリカの自動車メーカーの歴史的に重要なコンセプトカーを所有する貴重な機会となっているといえるだろう。





(C) 2022 Courtesy of RM Sotheby's

オクタン日本版編集部

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