フェラーリ308で、世界の果てのような場所へ!氷上、ダートもお任せあれ



コロナ禍は相変わらず衰えを見せず、ブライアンのオフィスは夏までの継続閉鎖が決まった。同じ場所を訪れることはしたくなかったブライアン、地図の隅っこにあるアラスカのデッドホースという町に目をつけた。そして、大自然が残るアラスカとあって、準備には余念がなかった。まずは8000ポンド相当の整備を施し、車のハードウェアを完璧な状態にまで仕上げた。次に900マイルの砂利道走行を考慮してオフロードタイヤを調達しなければならなかった。ホイールハウスに適合する唯一の15インチ用オフロードタイヤは、ピレリのラリー用スコーピオンK4の205/65だった。



ブライアンはロッキー山脈を越えて米国北西部の太平洋岸北西部の海岸に沿って曲がりくねったルートをたどり、アラスカへ向かった。さらに北西に向かってカナダのブリティッシュコロンビア州の果てしない森を通り抜けた。8月半ばにはアラスカのフェアバンクスに到着した。



全長450マイルのダルトンハイウェイは石油パイプライン整備用の道路だ。約90%はダートで、主に大型トラックが走行しており路面はかなり荒れていた。ハイウェイの中間地点、コールドフットは永住者2名の小さな町で、唯一の燃料や食料を補給できる場所でもある。フェラーリ308は、一般的な走行であれば満タンで250マイルは走ることができる。しかし、ダルトンハイウェイは一定速では走れない。アスファルトと違って路面の抵抗が大きかったり、減速して走らないと車両にダメージを与える穴があったり、コールドフットまではギリギリと試算。そこでブライアンは、フェラーリのルーフに1ガロンの燃料携行缶を4つストラップで固定した。

ダートドライブの準備は万全なはずだったが、60マイルを走破したところで308のエンジンルームから蒸気が上がった。既に自分で修理する技量は持ち合わせていたブライアンだが、どうしてもダート上ではジャッキアップができなかった。木や石で“土台”を作ることも試したが、車両に安全に潜り込むことはできなかった。そこでダルトンハイウェイでは高額になるレッカー車を手配。しかも車両を運ぶためではなく、レッカー車の荷台で作業をするためだった。無事に作業を終え、困惑したレッカー車の運転手に見送られながらフェラーリは再び走り出した。

ジャッキアップするにはあまりに不安定なダート。

レッカー車に救援を求めるのは一度ではなかった。

翌日、ブライアンはブルックスの山を越えた。数週間に渡って駆け抜けた広大な森の最後は、トナカイと巨大なジャコウウシだけが住む荒涼としたツンドラに変わった。残りの30マイルほどは舗装路で、車内のすべてが振動する400マイルを走破した後だったので驚くほど快適だったという。最終目的地であったデッドホースに到着するも、そこに特筆すべきものはない。デッドホースは観光地ではなく、石油掘削現場に集う季節労働者のための仮設住宅や関連企業がポツポツと点在する、世界の果てのような場所。ただ、最高の旅行とは目的地に辿り着くことではなく、その道のりである場合もある、ブライアンのように。

帰り道、コールドフットで知り合った地元の人間に、金属の板を手渡されたブライアン。これで砂利道やダートロードでもレッカー車を呼ぶことなく、フェラーリ308のジャッキアップができる。今、ブライアンは新たなフェラーリ旅を画策中で、恐らく中南米を目指すという。その際はオルタネーターベルトや燃料携行缶のほか、金属板も持っていく。


編集翻訳:古賀貴司 (自動車王国) Transcreation: Takashi KOGA (carkingdom)
Words: Robb Pritchard Photography: Brian Whalen; Drew Carlson Photography

編集翻訳:古賀貴司 (自動車王国) Transcreation: Takashi KOGA (carkingdom)

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