ドライビングフィールは?|電気仕掛けのシトロエン2CVに試乗してみた

Darren Arthur

これはシトロエンの2CVだ。といっても、私達が知るあの2CVではない。この愛らしい2CVは、ウィルトシャー州の2CV専門店がカスタムした電気自動車版だ。

この「2cEv」は、「EDEN」でEU認可済みの電動機構を使用している。「EDEN」とは、イギリス国内で2CVの販売を担う、フランスのメアリ-2CVクラブ・カシス社によって数年前にローンチされた、電動のシトロエン・メアリだ(註:シトロエン社の「E-メアリ」とは別のもの)。

602CCの空冷2気筒のエンジンは、セヴコン社Gen4(第4世代)15kWのモーターに換装され、2CVのギアボックスに繋がっている。後部に装備された10.5kWhのLFPバッテリーにより、 55〜60マイルの連続走行と65mphの最高速度が可能になっている。ちなみに、オリジナルの2CVの最高速度は70〜75mphだった。電動をつかさどるハードウェア部分は、重量配分が変更されているが、それは3年間に渡るエンジニアリングの尽力の賜物である。しかも完璧なリバーシブル仕様だ(EV化した後であっても、内燃エンジンにいつでも戻すことができる仕様)。



出力は2CV6の29bhpとほぼ同格だが、2CVショップのダレン・アーサーによると、 ガソリンエンジン版の28lb ft(37.96 Nm)よりも2cEvの方トルクフルだ、とのことだ。たしかに89lb ft(120.67 Nm)もあって強力で、2CV6の560kgから30kgの重量増加にも対応できる。モーターのマッピングによると、全てのトルクが初動時から得られるわけではない。これは、ギアボックスの破損を防ぐ目的もある。

ダレンは、数種類のパッケージを販売予定だ。顧客が所有する車両をコンバージョンする場合は16,400ポンド(約270万円)で納期は約1週間、コンバージョン済みの2cEv車両を購入する場合は29,000ポンド(約470万円)だ。また、DIYキットの発売も検討されている。同社では既に数台を受注済だ。さらに、2cEvでも初めてのグラスファイバー製ボディのバンも完成間近(取材当時)で、これは超低排出ゾーン内の事業者向けだ。



スペシャリストによって組み上げられた2cEvに試乗してみた。ギシギシ音やガタガタ音は聞こえない。2cEvと、1984年 2CV6スペシャル(仏語読みはスペスィヤル)を直接的に比較してみても、ドライビングフィール上の違和感は意外と少なかった。

2cEvではキーを回してスタートする。何度かのクリック音があり電気系統の始動を確認した後、3速か4速に入れてアクセルを踏めば走り出す。ニュートラルに入れながら“レヴ感”を楽しめるのは、EVの特権かもしれない。2気筒エンジンに鞭打って、滑らかなギヤチェンジを楽しみながら音を立てて運転するというよりは、人間的または聴覚的な相互作用で加速する、といった感じだ。また、この車にはエンジンブレーキ的なものがない。電気自動車で通例の回生ブレーキシステムが採用されていないからだ。

2cEvは、2CV由来の魅力的で起きあがりこぼしの様なコーナリングと驚くべきグリップ力を残してはいるが、ウェットなラウンドアバウトでは少しアンダーステア気味だった。それは、このコンバージョンが原因なのか、増えたトルクを活かそうとした私のせいか。たぶんその両方が原因だろう。また、2cEvでは、オリジナルの車のパワーとマッチさせることで、シトロエン社のエンジニアリングが苦慮するであろう強い電力の取り回しの課題を回避している。つまり、電動化のコンバージョンについての不安点もクリアしているといえるだろう。

フル充電後に半年間放置しても80%の電力を保持するというこの2cEvは、家族の休日の移動用、または、2CVの21世紀版の生まれ変わりとしても重宝されるかもしれない。ゼロ・エミッション、小ぶりな車体、愛らしく耐久性のあるルックス、素晴らしい乗り心地、豊富な部品供給など、優れた点が多いからだ。魂が込められた個性的な車を探している若いドライバー達にとっても、2cEvはクラシック回帰志向に応える選択肢のひとつになるかもしれない。


Words: Simon Charlesworth Photography: Darren Arthur
まとめ:オクタン日本版編集部

オクタン日本版編集部

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