“火星からもオーダーが殺到する”!? |大きなミッションを担ったマセラティ・グレカーレ

Shinichi EKKO

マセラティ・グレカーレのローンチはオンラインにて行われたが、今までのトライデント・イメージを覆す“ショー”であったことに驚いた。ブランドアンバサダーであるマチルダ・デ・アンジェリスとアレッサンドロ・ボルギというメジャーな俳優達が繰りなすショートドラマと共にお披露目されたのだから…。それは“グレカーレのある生活は特別なものですよね”というライフスタイル提案そのものであり、“108年の歴史”であるとか“F1での活躍”というマセラティのDNAのアピールといったヘリテイジはとりあえず脇に置かれていた。

グレカーレはそのくらいの取り組みをさせるほど大きなミッションを担ったマセラティのニューモデルなのである。

グレカーレのミッションはプレミアムSUV激戦区への参入であり、今までにないビッグセールスが期待されている。現行ギブリに取って代わるマセラティのエントリーモデルとしての使命が与えられているということもあり、その価格も800万円台からのスタートが想定されている。兄貴分のレヴァンテよりも少々コンパクトながらもキャビンサイズは充分だし、ラグジュアリーなインテリアも念入りに作り込まれている。パワフルなフィーリングを持つマイルドハイブリッドがチューニングの違いにより2モデル用意され、MC20に向けてゼロから新規開発されたV6ネットゥーノエンジンもウェットサンプ化されて搭載されるというように、マセラティは全く出し惜しみしていない。さらに来年にはそれに加えて400Vシステムと105KWhのバッテリー搭載のBEV仕様ローンチまでもが既に案内されている。



セールスの拡大に向けてグレカーレは生産性も充分に考慮されている。アルファロメオ・ジュリア、ステルヴィオに用いられているジョルジョ・プラットフォームは多額の投資の元に誕生した素性の優れたFRシャシーであるが、このシャシーの”聖地”たるカッシーナ工場周辺でグレカーレはアッセンブリーの全てが完結する。エンジン製造はカッシーナからは僅かの距離にあるテルモリ工場が受け持つから製造の流れは至極効率的だ。フラッグシップ・エンジンであるネットゥーノエンジンも、現在のモデナ工場だけでなく当ファクトリーにおいても製造されることが予想される。


ワールドプレミアはオンラインで終了したが、マセラティはその当日ミラノ中心部において“MISSION FROM MARS NIGHT"と称すリアルイベントを開催した。これは関係者や一部のメディカルに向けて案内されたもので、その中身はサプライズとされた。



指定された細い路地の一角に到着するとそこは既に火星の世界?であった。言われなければ通り過ぎてしまうような小さなエントランスの前に立った筆者は早速、トライデントのコスチュームを纏った火星人に拉致され、火星(会場)へと案内された。

会場では火星人達がグレカーレを囲み、不思議なパフォーマンスを繰り広げている!そしてアンヴェイルされたのが、マセラティのフォーリセリエ・プログラム(オーダーメイドによるカスタマイズ・プログラム)によって完成した「グレカーレ ミッション フロム マース」であった。

プロジェクト・リーダーのヴィットリオ・ガバ。

「独特な質感を持つギャラテック・オレンジ、繊細な加工が施されたホイールに注目してください。このモデルはさらにスケールアップしていくフォーリセリエ・プログラムの可能性を感じて頂く重要なプロジェクトなのです」とフォーリセリエのマネージャーであるヴィトリオ・ガバ。ちなみにこのプロジェクトのお題の意味は“火星からもオーダーが殺到するグレカーレに、火星人も満足させるカスタマイズを行う”ということらしい。



さて、グレカーレのスタイリングはどう評価できるであろうか?筆者の感想はかなりポジティヴだ。シャシーを部分的に共有するステルヴィオとも並べて眺めてみたが、グレカーレはマセラティらしい控え目でありながらもエレガントな輝きを魅せてくれた。主張し過ぎないキャラクターラインとクーペのようななめらかなプロポーションは悪くない。

「まさにマセラティらしいアイコニックなスタイリングが完成したと思います。マセラティはエンジニアリング開発部門と私達デザイン開発部門がお互いをリスペクトしながら高い次元のコラボレーションを行っています。グレカーレはマセラティとしてあるべきデザインを追求した完璧である“100%なマセラティ”なのです。」と、マセラティデザインのトップであるクラウス・ブッセは自信満々に語ってくれた。アッパーボディの練りに練った彫刻的なサーフェスと空力などエンジニアリング的な機能を表現するボディ下部のコンビネーション、低く位置するマセラティの特徴的なフロントグリルはMC20で明らかにされた新世代マセラティのスタイリングDNAをうまく引き継いでいる。

マセラティデザインのトップ、クラウス・ブッセ。

火星人達がグレカーレを愛でる姿を横に、グレカーレの質感溢れたボディサーフェスを眺めた結論はこうだ。“そう、これは地球人として見ても悪くない。”


文:越湖信一 写真:越湖信一、マセラティ Words: Shinichi EKKO Photography: Shinichi EKKO, Maserati

文:越湖信一 写真:越湖信一、マセラティ

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事